第4話

「先輩!せんぱーい!」


ホテルを飛び出した俺は、上級者コースを歩いていた。


中級車コースとかにはいないだろうから。


でも、見つからない。


このコースも吹雪で、寒くてしかたがなかった。指がかじかんでる。


俺は達人コースに向かった。


「先輩!いますか⁉」

「霧島、くん……?」


どこかで先輩の声がかすかに聞こえた。


なんとなく走ってみる。


すると、誰かが雪に埋もれていた。


「先輩!待っててください!助けますから!」


俺は先輩のまわりの雪を急いでほった。


手がかじかんでいて、自分の手がシャベルにでもなったみたいだ。


そして、あるていど掘ったら、先輩をひきあげた。


「先輩!無事ですか⁉」

「霧島くん……寒い、熱い、苦しい……」


俺はもしかしてと思って、先輩のおでこに手をあててみた。


あたたかい。けど、これは熱いんだろう。


「ひんやり、きもちい……」


先輩がつぶやいた。


もしかして、俺の手が冷たすぎるから?


俺も先輩のおでこがあたたかくて、きもちい。


「先輩、このままでいいですか?」


先輩はうなずく。


俺は先輩を抱っこした。


おんぶのほうがいいんだろうが、こうしないと手をだせない。でも、手は無理だ。おでこをくっつけた。


「⁉」

「すみません、これで…」


先輩は真っ赤になった。


でも、これは熱のせいだろうと流しておいた。


「はあ、はあ……」


俺も苦しい。けど、先輩のおでこがあたたかいから、なんとかいける。


あるいていると、なにかを見つけた。


あれは……スキーの足のと、棒。


「先輩、最後の手段です」


俺は装備を装着する。


「つかまっててくださいね」


先輩は俺にぎゅうっとしがみつく。


「よーし」


シューっと滑り抜けた。


上級者コースを。そのままの勢いで俺は右にまがると、俺は宙に浮かんだ。


崖だからだ。先輩はさらに俺にしがみついた。


崖をいきおいでとんだ。


そのまま中級車コースに着地、中級者コースでも曲がり、崖をジャンプ。そして、初心者コースを滑り、ロッジについた。


「霧島くんすごい!でも怖かった」


先輩は、気が付くと元気になっていた。


「ごめんなさい、先輩。あとこのことは内緒で」

「うん!わかってるよ!」


先輩はうなずくと、ロッジに戻った。


「ありがとうね、霧島くん」


先輩はロッジに進みながら一言。


「はい」


俺は、短く返事をした。

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