第2話

「はい、まずは、この棒あるでしょ?これをうまくつかいながら、こうやって、滑る!」


シューっと少し滑ってから、先輩は戻ってきた。


いや、なにあの擬音だらけの滑り方!?


「やってみて!止まるときは、横に半回転するの。スピードをおとしてから」

「はい……?」


俺は何事もチャレンジというし、やってみた。


シューっと、風が気持ちよく滑る。だけど、止まるときにバランスを崩してしまい、転んだ。


すぐに先輩が駆けつける。


「わわっ、霧島くん大丈夫?」

「はい、大丈夫です…」


ウソ。本当は冷たいし痛かった。


でもお人よし先輩にそんなこと言ったら、中断されてしまうだろう。


「それならよかった……うーん、もっとこうするの!」


ほっとした様子の先輩は、俺の後ろにまわって俺の体に手を添え、動かす。


俺の体は先輩によって回転する。


先輩の手が俺の服に触れてて、気が気じゃないんだが。


「はい!じゃあ、やってみて!」

「え⁉は、はい!」


ぼーっとしていた俺は、ぎこちない動作で滑り始める。


シューっと滑る。ここまではさっきと同じ。ここで、止まれるか!


お?これ止まれたんじゃね?


「おおっ!すごい!とまれたよ!霧島くん素質あるんじゃない⁉」


先輩と「「イェーイ」」とハイタッチする。


先輩の特訓効果、絶大。


「ありがとうございます!俺はもっと練習してるんで、先輩は俺にかまわず遊んでて大丈夫ですよ!」


俺の言葉に一瞬心配そうな顔をしたあと、先輩はうなずいた。


「わかった。ありがとう!行ってくるね!霧島くん、気をつけて!」

「はい!先輩も気をつけてください!」


先輩は慣れてる動作でとことこと歩いていく。


そんなお人形みたいな動きも、かわいかった。


―――その時、俺は思いつきもしなかった。まさか、ここで先輩をはなしてしまったから、あんなことになるなんて。



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