ガルスの秘密

 男との生活も数日間たって慣れてきたころ。


「そういやお前の名前、なんてったっけ?」


 男にそう言われてから僕たちがなんの自己紹介もせずに一緒に暮らしていたことに気が付いた。

 はじめはすぐに見放されてしまうだろうと考えてお互いの名など明かしあっても別れるときに自分が寂しくなってしまうだけだろうと思い聞かなかったのだが、しばらく一緒に暮らすことになった中だ。お互いの名くらい知っておかないとこれから不便だろう。


「おい!聞いてるのか?」


「うん。名はガルスというよろしく。」


「ガルスか。良い名だ。俺はダークだ。」


 この日からダークとの本当の共同生活が始まった。

 強力な魔力が集まる、魔物の巣の魔の森の中央にこんな人が住んでいたとはとても信じられないけれど僕はこの人に拾ってもらって幸運だった。

 見つけてもらっていなかったら今頃は魔物の糞となって土の栄養源となっていたところだろう。


 ダークは森の番人としてバランスの良い生体系を築くべく魔物の間引きをすることを日々の仕事としている。僕もこの日から魔物の間引き作業を手伝うことになり、毎日狩りを行う日々を送っていた。


 そんなある日ダークから呼び出された。


「どうかした?ダーク」


「そろそろお前のことについて話を聞きたいと思ってな。」


 ガルスの体が一気に緊張で固まったのが見て取れた。

 ガルスの秘密について実は俺は何となく予想はついている。

 だがガルスのの口からそのことを聞いたほうが良いと俺は思うんだ。



 近いうちに聞かれると思って覚悟はしていたがいざ聞かれると緊張する。


 これを話せば捨てられてしまうかもしれない、そう思うとなかなか口が開かなかった。ダークはこの沈黙を黙って待っていてくれていた。

 この人なら信じても良いのかもしれない。そう思えた。


「僕は生まれてきてはいけない人間だったんだ。ダークも知ってると思うけどこの世に猫の獣人などいない。僕は変身族なんだ。僕の一族は猫に変身することで国王に仕えてきた。そんな一族に僕みたいな存在はいてはならないんだ。僕は呪われた子だから。」


 俺は驚いた。こいつは一族にかけられた呪いに気が付いて恣意的に獣人に変身したのではないということに。

 ではどうして猫に変身できなかったのだろうか。俺は強く興味をひかれた。

 それから俺はかつての変身族の姿を聞かせた。


   

  ‘‘ 一族は獣人に変身して国を守り国王の座についていた。

   これをよく思わなかった一部の人族は変身族に獣人に変身できないように

   呪いをかけた。                           

   それから一族の国王としての一族の立場は奪われた。          ‘‘


 僕は驚いた。僕たち一族は呪いをかけられていたのか。

みんなは被害者だ。そう思った瞬間僕はみんなを呪いから解放してあげたいと強く考えるようになった。

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