少年の正体

 男は僕に衣食住を与えてくれている。僕はいつ追い出されてしまうのだろうか。そうなったらどうしていくのが正解なのだろう。僕にはわからない。



 少年は目覚めてからずっと何か考え事をしている。俺にも気を許していないようだ。

「あの!」突然緊張した面持ちで少年が声をかけてきた。

 俺が振り返ると

「この度は危ないところを助けていただきありがとうございました。今はあいにくお礼の品をお渡しできるものはございませんが用意ができしだいお渡しに参ります。」と言い出した。

「えっと・・・」

「すみません!でも僕なにももってない・・・」

「いや、何かお前は勘違いをしている。まずお礼の品とはなんだ。俺はそのようなものをもらうためにお前を助けたわけではない。あとなぜここを出ていく前提で話を進めているのだ。帰る場所があるというのであれば送り届けてやるがお前はわけありだろう。」

「え?」

「猫の獣人など今の世にはいないはずだ。」



 まずい。僕が穢れた子だとばれてしまった。

 でもこんな僕を置いてくれると言っている。

 もしかしてどこかに売り飛ばす気なのではないだろうか。



「そんなに警戒するではない。俺が面倒を見てやると言っているのだ。」

 少年はまだ状況が呑み込めていない様子だ。

 まぁ無理もない。猫の獣人というと猫族の今は知られぬ過去の姿だからな。

 一族の一員と認めてもらえなくなったというところだろう。

 まだ親元を離れるには早すぎる年齢だろう少年を危険な森の中に親の精神がわからない。俺が保護しなければ明日を無事迎えることも難しいだろう。

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