出会い
聞いたことのない男の人の声で目を覚ました。はじめ男は僕が目を覚ましたことに気づいておらず独り言を言いながら何かを作っているようだった。
「あの・・・」
「おぉ!目を覚ましたかい。」
僕が話しかけると心底びっくりした様子で男は近づいてきた。
ここはどこだろう。護衛のみんなはどこにいるのだろう。いろんな疑問が頭を駆け巡る。僕は今の疑問をすべてこの男にぶつけた。そして、ここは魔の森の中央にある泉のそばにある小屋であること。僕以外の人は一人もいなかったこと。などがわかった。
「お前さんは護衛に裏切られたのじゃよ。」
俺の話を聞いてもどうもパッとしない様子だったので目の前の少年にそう伝えた。目覚めたばかりの小さな子にこんなことをいうのは酷であるとはわかっているがこの子には伝えたほうが良いと判断した。この子は少々人を信用しすぎるところがあるらしい。先ほどの質問から護衛を何一つとして疑っていないことがわかった。この世界では裏切りなど日常茶飯事なのだ。今回自らのしたことがどれほど危険なことなのかをしっかりと伝えなければならない。
一瞬思考が停止した。道中あんなにも優しくしてくれた、魔獣からも助けてくれた、どうしてそんな人が僕を裏切ったということを信じなければならないのか。
僕もそのことを疑っていなかったわけではない。
仲間だと思わないように努めてきた。
でも、あれほどの優しさを持つ人が裏切るなんて思えなくなって一日が終わるころには信頼できる仲間だと思ってしまっていた。
一族を穢してしまう僕の・・・
護衛は消えてしまったとして寝ていただけのはずの僕がどうして男が心配するほどの時間、意識がなかったのだろう。
「目を覚めにくくする魔法だろうな。」
僕の疑問が知らないうちに口から出ていたみたいだ。
「どうして?」
「おそらくお前さんを魔獣の餌にしたかったのじゃろう。見張りなしで夜に寝ること自体が自殺行為だが1週間寝させておけば必ず魔獣に食わせることができるという思案だったのだろう。ま、俺が助けてしまったけどな。」
突然、いやな催眠魔法が使われた反応を感じとった俺は魔力反応のあった場所にすぐさま向かった。そこでは魔法を使ったであろう二人組がお酒を飲んでいた。始め俺は彼らは魔獣退治のために魔法を使ったのかと考えたがあたりにそれらしきものはない。ふとテントに生体反応を知覚し意識をそちらに向けると先ほど感じ取った魔力反応も同時に感じられた。とするとこの二人がテントの中の者に何らかの理由で催眠魔法をかけたことになる。どんな理由であれど人に催眠魔法をかける行為は許されぬことだ。二人を早急に懲らしめたい気持ちは山々なのだが俺は人前にでることができない。テントの中の者の魔法だけといてこの場を去ろう。そう考え二人が去ってからテントを覗くと小さな男児がいた。とりあえず魔法をといてやったのだか目を覚ます気配はない。このままここに置いていけば直に魔獣の餌となるだろう。そういうわけで我が家に持って帰ってきてしまった。
僕は男から僕をどのように見つけたのかを事細かに説明してくれた。
男は僕のことを心配してくれるが今回のことは僕の責任だ。
僕は死ななきゃいけない人間なのだろうけれど恐い
どうにか人目のつかないところでひそかに生活しなければ・・・
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