ヒーローに迫る病み
武海 進
ヒーローに迫る病み
彼はいつだって皆んなの為にヒーローとして悪の秘密結社と戦ってきた。
それを私は幼馴染としていつだって応援してきた。
私はそんな彼が誇らしかったのだけど悔しくもあったんだ。
だって最近は皆んなのことばかりでちっとも私を見てくれないから。
だから表面上では彼を応援しつつも、なんとか彼を私だけのものに出来ないかとずっと考えていたところに絶好のチャンスが訪れた。
怪人との戦いで傷ついた彼を海外出張で親のいない家に匿うことになったの。
だから私は以前から考えていた計画を実行することにした。
怪我をして食事をまともに一人で食べられない彼の為に、私が食事を用意して食べさせてあげるんだけど、その中に悪の秘密結社が接触してきた時に貰った毒薬を少しだけ混ぜているの。
死にはしないけど傷の治りを妨げて、体力の回復も遅らせる効果があるらしくて彼は寝たきりのままずっと私に看病されことになるってわけ。
最初は彼も傷が治らないのを疑問に思わなかったんだけど最近はだんだん私を疑い始めた。
でも大丈夫。
どっちにしろ彼は動くことが出来ないし、今日ついに悪の秘密結社が世界を滅ぼす為に世界中に怪人を解き放ったから。
これでやっと皆んな、いえ、邪魔者達がいなくなって彼は私だけのものになる。
外から聞こえる悲鳴や爆音に彼は一生懸命に体を動かそうとするけど動けない。
だって今日の食事に入れた毒薬、いつもより多いんだから当たり前。
もう、アナタは皆んなの為に戦わなくていいの。
この家で、この部屋でずっと、ずっとずっとずっとずっと私といるの。
「もう誰かのために戦わなくて良くなったね。これでやっとアナタは私だけのヒーローになってくれた」
ヒーローに迫る病み 武海 進 @shin_takeumi
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