第122話 ミラクル or パーフェクト

 ミネソタがアナハイムにやってきて、リーグチャンピオンシップが始まる。

 エンターテイメントではロスアンゼルスの大都市圏でありながらも、観光業が盛んだ。

 もっともMLBのシーズンで訪れるチームの人間が、そんな観光などをしているはずもない。

 この街にはこんなに人がいたんだな、と直史が思ったのは、去年のポストシーズン。

 長らくアナハイムは試行錯誤しながら、チームの構成を変えてきていた。

 ピッチャー一枚でどう変わるのだ、という不安はあったはずだ。

 だがそのピッチャーがレジェンドどころか、ミソロジーに出るような、そんなピッチャーであったら。


 長らくなかったワールドシリーズをプレゼントしてくれたのは、間違いなくそのエースだ。

 さらにワールドチャンピオンにまでなったのだ。

 もっとも本人は、北米大陸のローカルチャンピオンだと思っているだろうが。 

 日本人としての意識が強い直史はおそらく、国外だからこそ負けたくないと思っている。

 そして同時に思うのは、日本人選手になら負けてもいいということだろうか。

 だがそれにしても、大介には負けてはいけないと、感情ではなく信条で思っているだろう。

 大介は忖度を受けたくない人間なのだから。


 これまで試合での直接対決では、ほぼ直史が勝利してきたと言っていいい。

 だが勝つための強さを手に入れるためには、大介が練習相手として必要であった。

 高校時代の二年と五ヶ月、大介の存在が直史を高めていったと言っていい。

 同じようなことは、岩崎にも言えるだろう。


 直史は田舎の旧家の長男で、意識的に保守的な傾向がある。

 だがそんな直史であるが、高校時代は一番自由であった。

 自由であり、革新的であり、個性的であった。

 その時の余力で、大学生活四年間は過ごせたと思う。

 一度だけ本気で練習などをしたのは、休息をアップした時期のみ。

 それ以外は全て、調整でこなしていったと言っていい。


 直史のスタイルは基本的に、高校時代で完成していたのだ。

 あとはその練度を、どこまで上げるかが問題だったぐらいで。

 アナハイムの人口の、半分ほどは注目しているだろうか。

 遠くロスアンゼルスや、もっと遠くのカリフォルニア、あるいはさらに遠い場所から、直史を見にきた人間はいるかもしれない。

 第一戦のマウンドに立った直史は、ミネソタのオーダーを見る。

 この時点で既に、ニューヨークではメトロズの試合が終わっている。

 そしてトローリーズが、奇策とも言うべき手を、つまり試合を落としてもいい、ピッチャーを先発に立ててきたことを知っている。


 もしもアナハイムがミネソタに苦戦するとしたら、これをやられた時だろうな、と直史は樋口と共に考えていた。

 だがミネソタは正面対決を選んだ。

 左のハーパーが先発スタメン。

 球速もあるがスライダー、カーブ、チェンジアップを使って投げてくる、三振を奪うタイプのピッチャーだ。

(とりあえず、初回は三人で終わらせる)

 ミネソタが変な勢いをつけないように、直史と樋口の意見は一致している。

 一番危険なのが、三番のブリアン。

 だが一番のアレン、二番パットンと、長打が打てる選手が揃っているのだ。


 攻撃的な打線に対して、直史はカーブから入る。

 カウントを取ってくれるかどうか、微妙な感じのカーブは、一番打者は見逃してくることが多い。

 逆にこれを振ってくれると、審判はそこから全て、ストライク判定したりしてくれる。

 アレンは見逃して、審判の手が上がる。

 今日はこれは、基本的にストライクになるのだろう。




 直史に追い込まれてから、アレンは手を出した。

 初球とは速度の違うカーブを、ピッチャー前への小フライ。

 直史が処理してまずはワンナウト。

 そして二番のパットンも、二番打者としてはかなり振りまわすタイプなのだが、ゾーン際のボールを見てきた。

(また待球策か?)

 もはや慣れたものなので、直史は特に面倒とも思わなかった。


 遅いシンカーを泳がせてショートフライ。

 そういう組み立てをしているから仕方がないのだが、ゴロでのアウトが取れていない。

 そして三番のブリアンの第一打席。

 十字を切って、バッターボックスに入ってくるルーティン。

 ブリアンもまた、初球は見てくるのだろうか。


(だよな)

 樋口から出たサインは、直史の予想通りのものであった。

 ここまで二人、安易に打ってきてはいない。

 短期決戦とはいえ、四試合に先に勝つ必要がある。

 カーブで入るというこれまでのパターンを崩し、初球からスルーを投げる。

 ブリアンのバットはわずかに動くが、スイングまではしない。

 低めに入ったボールは、ストライクとコールされた。

 これもボールとコールされても仕方のないコースだが、フレーミングが上手かった。


 そして二球目に投げたのはスライダー。

 フロントドアの変化球は、変化してなおブリアンの内角に入る。

 スラッターとも言える速度も変化量も微妙なボールに、ブリアンはわずかに腰が引ける。

 ミットに収まったボールはストライクとコールされるが、驚いたような顔になるブリアンも、不思議ではないところだ。


 今のもボール球だ。

 だが判断が正確でも、判定を下すのは審判だ。


 ツーストライクと追い込まれたブリアンだが、その表情に焦りは見えない。

 今の見逃しは二つとも、自分でボール球と判断したものだ。

 ヒットならともかく、カットは出来ると思っていた。

 ここから際どいボールを投げられるのなら、それはカットしていけばいい。

 そう思って三球目を待っていれば、インハイのブラッシュボール。

 当たるようなコースではなかったものの、のけぞらせることには成功した。


 ブリアンはその目によって、おおよそのコースも球種も見抜いてしまう。

 だが審判が判断するのは、バッターの反応によってではない。

 直史がフォアボールを出さないのは、よく知られている。

 今年など32試合に登板して、一度もフォアボールを出していないのだ。


 最後のボールはアウトローギリギリのストレート。

(いや、外れる)

 わずかなスライド変化を、ブリアンは見抜いていた。

 少しだけゾーンから外れたボール。

 しかし審判のコールはストライクであった。




 今のは外れていた。

 ブリアンは分かっているが、審判は間違えるものである。

 それに本当にギリギリであったし、今度もまたギリギリを狙ってくるとは分かっていたはずだ。

 だからカットするべきだったのではないか。

(ストライクを一球も投げていない?)

 それに気付いたとき、ブリアンは慄然とした。

 今の打席で、自分がしたこと。

 それはブラッシュボールに対して、腰を引いただけではないか。

 一度もバットをスイングすらしていない。


 ベンチに戻っていく直史の、背中を注視する。

 ミラクルともパーフェクトとも言われるピッチャー。

 その三振の奪い方は、実にエレガントである。

 剛速球で三球三振というのも、それは迫力があるものだろう。

 だがストライクに一球も投げず、それなのに一球も振らせずに三振とは。


 三振はあらゆるアウトの中で、最も確実性の高いアウトだと言われる。

 そんな三振の中でも、バッターに一度もスイングさせない三振ならば、最も確実性の高い三振ではないのか。

 もちろんこれはピッチャーのコントロール、キャッチャーのフレーミング、また審判の傾向の分析など、頭を使わなくてはいけないものだ。

 ベンチで自分のグラブを持ったブリアンは、守備に就くときに考える。

 最後のボールは、ストライクゾーンから外れていた。

 本当に外れていたのだろうか?


 直前にインハイのボールを避けていたため、外のゾーンを自分は狭く感じていたかもしれない。

 あのボールはやはり、本当にストライクであったのではないか?

 考えはするが、検証できるのは次に、自分の打席が回ってきた時だ。

 チームメイトに注意を促すのは、むしろ逆効果だと考える。

 1インチ単位でボールをコマンドに投げ込めれば、メジャーのピッチャーとしても優秀だろう。

 だが直史のコントロールは、さらに細分化されていると思える。


 振らせなければ抑えられる。

 それは当たり前のことだ。

 だがストライクゾーンの球を、振らせずにいられるのか。

 そんなはずはないからボール球を投げ、それを審判に誤審させた。

(前のバッターからの、布石があったのか?)

 ネクストバッターサークルにいた時、ブリアンは集中していた。

 味方の二番、パットンに投げられたボールは、あえて見ていなかった。

 だがアナハイムのバッテリーが、対戦するバッターだけではなく、一試合を通じてピッチングを組み立てているならどうか。


 ブリアンは背筋がぞっとした。

 この一回の表から、九回の表まで、全て最初から考えているというのか。

 まるでチェスの最善手を知っているかのように。

 もちろんそんなはずはない。

 直史と樋口は局面を考えて、先の先まで分かれた筋を読んでいる。

 相手がいるのだ。チェスとも将棋とも違う。

 もっともチェスに関しては、既にコンピューターが全ての可能性を弾き出してしまったようだが。


 ピッチングは野球の一部分であるが、その要素は大きい。

 データさえあれば、どんなバッターでも攻略できるのか。

 もちろんそんなものは、その時にならなければ分からない。

 局面においてコンビネーションは変えていく。

 セオリーなどを貫いているだけなら、かならずそれを読まれて打たれるのだ。


 ブリアンに対しては、ボール球一球を使っただけ、まだ注意していた方なのだ。

 それをミネソタが知るのは、だいぶ後のことになる。




 アレクが出塁しない時は、だいたい樋口も出塁欲が湧かない。

 得点のチャンスがあまりないと考えるからだ。

 それでも打つのではなく、ボールを選ぶことぐらいはする。

 ターナーもシュタイナーも一発があるので、前にランナーとしていておく理由にはなるのだ。


 左のハーパーのスライダーも、アレクは手を伸ばしてカットしていった。

 だがそのファールフライを追いかけた、サードのスライディングキャッチでアウトになる。

 樋口としてはこの最初の打席で、相手の今日の調子を確かめなければいけない。

 アナハイムは初回に得点すると、極端に勝率が高くなる。

 しかし直史であるならば、初回に限定する必要はない。

 

 粘ったが最後には、カットをし損ねて内野ゴロ。

 下手に内野安打になりそうなボールでもなく、樋口は普通にアウトになった。

 ポストシーズンになると選手もハッスルするようになるものだが、樋口はそんなことはしない。

 自分が欠けることによって、どれだけチーム力が落ちるかを、把握しているからだ。

 そしてバッターボックスには、三番のターナー。

 この状況からならば、狙うのはホームランだけだ。


 ストレートとスライダーのコンビネーションで、ターナーも追い込まれる。

 だがそこからハーパーは、配球のミスをした。

 タイミングを崩させるために投げた、大きな弧を描くカーブ。

 ターナーは体が前に突っ込むこともなく、しっかりとボールを待てている。


 遅いボールを打つ練習は、直史に付き合って散々にやっている。

 そして踏ん張った状態から、右足を蹴って左足へ体重を移動。

 左足を踏ん張ることによって、バットが前に出てくる。

 遅いカーブを、強く叩いた。

 そのボールはスタンドまで飛んでいって、先制のソロホームランとなったのだった。




 直史の投げる試合で、一点を取ること。

 それはアナハイムの選手にとっては、即ち勝利につながるものだと思われている。

 ただ今季のレギュラーシーズン、唯一点を取られたのは、ブリアンのホームランだ。

 バッテリーは安易に、これで勝ったなどとは思わない。


 五点あれば油断出来る。

 それは満塁ホームランを打たれても、追いつかれない点数だ。

 間違いなく勝てる点差とは、それでも言えない。

 ましてや試合は、始まったばかりなのだ。


 二回の表の、ミネソタの攻撃。

 こちらも四番に五番、そしてDHの六番までは、強打者が揃っている。

 しかし直史が打たせたのは、全てが内野ゴロ。

 二遊間が強いと、しっかりこれをアウトにしてくれる。


 三振を奪ったのが、ミネソタ最強の強打者であるブリアンのみという不思議。

 だがバッテリーにとっては、別に不思議ではない。

 意識的に確実にアウトにしようとしているのが、ブリアンだけということだ。

 他のバッターは事前のデータ通りに、上手く打たせて取ることが出来ている。

 そうやって三回までの攻防が終了した。

 四回の表は、ブリアンの第二打席が回ってくる。


 直史と樋口は、ホームランを打てる高打率打者であるブリアンを、当然ながら警戒している。

 なんなら危険な場面では、敬遠してしまってもいいと思っているのだ。

 だがそれ以外の場面、たとえばここで、またツーアウトで回ってきた打席。

 二人はブリアンと勝負する。

 この試合に勝つためだけではなく、この後の試合にも勝利するために。

 他のバッターには、別にヒットを打たれてもいい。

 しかし中軸のブリアンを完全に抑えれば、ミネソタの勢いは止まる。


 逆にミネソタにとってみれば、直史を打てればアナハイムに勝てる。

 少なくとも他のピッチャーは、直史よりも下なのだ。

 試合には負けたとしても、どうにか一点でも取れれば。

 そう、一点を取ってしまえば、この試合は勝ったのと同じ価値を持つ。


 だからこそ直史と樋口は、ミネソタ打線に打たせない。

 特にブリアンには、出塁すら許さない。




 ツーアウトで回ってきた第二打席。

 直史が初球に投げたのは、超スローボール。

 今年直史が投げた中で、最も球速の出ていないボール。

 ブリアンはこれを見逃してしまった。


 神様が教えてくれる、とインタビューに答えていたブリアン。

 本人の主観としては、それで間違いないのだろう。

 だが実際にはそれは直感などですらなく、ちゃんとした分析が背景にあってのものだ。

 二球目、外角へのツーシーム。

 ここでようやくブリアンはバットを振って、ボールを打つ。

 だがゾーンに近づいたように見えながらも、まだボール球であったこのコース、打球はファールグラウンドに飛んでいく。

 ここもまた二球で、ツーストライクに追い込まれたのだ。


 スローボールの後に、外角へのムービング系。

 ならば次はインハイ、というのがセオリーだろう。

 だが直史と樋口は、サイン交換に迷いがない。

 投げたのは、あまり減速しないチェンジアップ。

 ブリアンがその動体視力でボールの動きを見ていても、分かるはずのない変化球。

 スルーチェンジは、バットが動き出したところから落ちていった。


 バットがボールを追いかけて、どうにか掬い上げようとする。

 だがどうにか当たった打球は、そこからぼてぼてのピッチャーゴロとなる。

 直史が処理して、これで二打席凡退。

 全くいいところはなく、そして球数も増えない。


 ブリアンのインタビューや、実際のバッティングの動画を見ていれば、彼のバッティングと言うのは基本的に、大介のそれと同じ能力だと分かる。

 リリースの瞬間まで視界に捉えていて、リリースの角度やスピードから、球種を見極めるというものだ。

 だが初球のスローボールは、全く予想だにしていなかった。

 そしてチェンジアップにしても、スルーチェンジは他のチェンジアップとは性質が違うのだ。


 チェンジアップは腕を強く振りながらも、パワーをボールに伝えないことで、スピードを出さずにタイミングを狂わせ、さらには落ちていくボールだ。

 スルーチェンジは他のボールに比べると、球速はそこそこ出ている。

 だが第一打席で、ブリアンはスルーを見ている。

 ボールの縫い目を反対にしただけのスルーチェンジは、落ちながら伸びるボールが、落ちながらより減速する。

 スルーの残像が頭の中に残っていては、絶対に打てないボールなのだ。

 ただそれも、慣れてしまえばカットすることぐらいは出来るか。


 このボールの効果に気付いたのは、高校二年生の夏のことだ。

 安打製造機と呼ばれていた織田を、あえてこれで打ち取った。

 それからずっと、このボールはストレートやスルーと組み合わせて使うことで、強烈な威力を発している。

 ブリアンも以前に、このチェンジアップは見ているはずなのだが。


 ともあれこれで、二打席目も封じた。

 ランナーはまだ一人も出ていない。

 やろうと思っているわけではないが、出来たらいいなとバッテリーは思っている。

 強打のミネソタ相手に、パーフェクトゲームを。

 さすがに打たせて取っているので、一個ぐらいはエラーが出るだろうな、とは思っているのだが。


 六回の裏には、アナハイムが追加点を入れた。

 これで二点差となり、ピッチングの幅は広くなってくる。

 七回の表、ミネソタの攻撃は一番のアレンから。

 つまりここまで、パーフェクトは継続中なのである。




 直史は去年、ポストシーズンで二度のパーフェクトを達成している。

 上杉でさえ坂本の機転のために、成しえなかったパーフェクト。

 それをラッキーズと、メトロズを相手に。

 

 だからここでやっても、おかしくはないと思える。

 少しでもMLBに深く関わっている人間なら、いやいやおかしいだろと、頭を振ってしまうはずだが。

 しかしその期待は膨らんでいく。

 先頭バッターのアレンをファーストゴロ、そして二番のパットンをファーストのファールフライアウト。

 三打席目のブリアン。

 これを抑えてしまえば、おそらくもう四打席目は回ってこない。


 ミネソタベンチも思い出しているだろうか。

 直史は今年二回、ミネソタ相手のレギュラーシーズンで投げている。

 一度目は確かに、ブリアンにホームランを打たれた。

 しかし二度目の試合では、ヒット二本のマダックス。

 三打席目のブリアンは、バッターボックスの前で長く自分の胸に手を当てる。

 それから十字を切って、バッターボックスに入った。


 三番打者のブリアンに四打席目が回ってくるのは、最低でも三本のヒットがいる。

 いやヒット以外の出塁でもいいのだが、直史はフォアボールを出さない。

 そんな直史の例外であったのが、ポストシーズンの試合だ。

 ただしこの試合、直史は完全にブリアン以外のバッターを、飲んでしまっている。

 この空気を打破するには、ブリアンが必死にならなければいけない。


 神頼みでどうにかなるのか。

 バッターボックスの中のブリアンの表情は険しい。

(お前のバッティングのいいところも悪いところも、神様任せということだな)

 もちろんそこに実際は、充分な練習はあるのだろう。

 だが精神的に今のブリアンは、いつものような平静な状態ではない。


 打ちたいという気持ちが強くなりすぎている。

 打つという気迫が、確かに伝わってくる。

 それだからこそ相手にするのは、難しくない。

 パワーカーブを初球に投げた。


 力んだブリアンは、そのボールが投げられることを、気付いていたはずだ。

 だがそれを打ったとしても、ホームランになるか、あるいはヒットになるか、そこまでを考えていなかったのか。

 打ったボールはこの試合にしては珍しくも、内野の頭を越えていった。

 そして浅めに守っていたセンターアレクのグラブの中に、あっさりと収まったのであった。




 八回に、直史の投げたストレートが打たれて、内野の頭を越えたヒットになってしまった。

 だがそこからゴロを打たせて、ダブルプレイにするのがアナハイムの黄金バッテリーである。

 九回の表、最後のバッターは九番ラストバッター。

 空振り三振して、リーグチャンピオンシップ第一戦は終わったのであった。


 九回27人に投げて、三振の数はわずかに五個。

 外野まで飛んだボールは、ファールを含めても四回しかなかった。

 球数は96球で、当たり前のようにマダックス。

 粘ってくるはずのポストシーズン、強打のはずのミネソタから、ほとんどパーフェクトにも近いワンヒットで、直史は試合を終えた。

 注目すべきはピッチャーの記録だけではない。

 アナハイムは五点を取って、ハーパーを早々に交代させていた。

 そういったところもミネソタ打線を、勝てないと思わせた原因かもしれない。

 最終的には7-0のスコア。

 完全にアナハイムが圧倒していたのであった。

 果たしてこの試合のダメージが、翌日のミネソタにどれだけ残っているか。

 出来ればスウィープしてしまいたいな、と考える直史は欲張りであった。



×××



 ※ この試合を観戦した大介の感想がNL編にあります。

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