第47話 目だたなかったエースたち

 アナハイムは直史がおかしなことをしでかしたため、直史が絶対のエースだと思われている。

 そしてそれは間違いではないのだが、実は他にもスーパーエースクラスのピッチャーがいる。

 スターンバックとヴィエラの二人がそうであり、特にスターンバックは例年であれば、サイ・ヤング賞の候補になっていてもおかしくない。


 アメリカのカレッジからドラフト指名を受け、ルーキーリーグからのマイナーをほぼ最速で駆け上がる。

 メジャー昇格してから今年が五年目で、来年には順当にFA権を取得する予定だ。

 おそらくその時には、かなりの大型契約が結ばれるであろうと言われていた。

 そして今年はさらに、それを補強する成績を残している。

 29先発23勝4敗。

 ここまでしっかりと勝敗がつくのは、リリーフ陣がしっかりしているおかげである。

 ただMLBにおいれは勝敗などは、ある程度チーム力の援護によるという考え方もある。

 それも防御率は2.02 WHIPは0.93 奪三振率9.88 BB/9 2.11

 このあたりの数字を見ても、総合的にとても優秀なピッチャーだということが分かる。

 今年の年俸にしても調停を受けていて、900万ドルであったが、来年は倍になっていてもおかしくない。


 ナ・リーグであればサイ・ヤング賞を取れただろう。

 そんなことも言われるが、当のスターンバックとしては、直史に引きずられた成績だという印象が強い。

 また直史が坂本と話し合ってあの成績を出しているのを見て、坂本に対する認識を改めたのも原因であろう。

 サウスポーから投げるボールはMAXは99マイルと高速化著しいMLBにおいては、それほど突出した数字とは言えない。

 だがカッターを数種類使い分け、それにカーブを混ぜる。

 このスタイルが非常に今のMLBと相性が良かった。


 カッターも大きなものはスライダーとして三振を奪えた。

 普段は高速カッターで、打ち損じを狙う。

 これに昨今復権を果たしているカーブ。

 直史のカーブを見て、意識したのが良かったのかと思う。


 


 このスターンバックが、トロントとの第二戦に先発した。

 直史と違って、レギュラーシーズンに二度対戦している。

 それも八月以降の、特に強くなったトロント相手にだ。

 一度目の対決では七回を無失点、二度目は六回を一失点。

 ほぼ完全に抑えていると言ってもいいだろう。


 佐藤直史の登場は、色々な意味でMLBにとっては衝撃であった。

 もちろん前年の大介も衝撃であったが、方向性が全く違う。

 なんだかんだ言って大介はスピードとそこから生まれるパワーは、新しいMLBの最先端と似通ったものであったからだ。

 ライナーを打ってホームランにするのも、スイングスピードなどから理屈は分かる。

 バレルの角度をより、先鋭的にしたようなものなのだ。


 ただ直史は合理的に効率的に上手くなろうというMLBのトレーニングを、完全に否定した存在だ。

 トレーニングにも反復を伴うものがないではないが、それでも直史の繰り返される投球は、ウエイトなどでパワーを増やす、分かりやすいフィジカル頼りのパワーピッチングとは全く違うのだ。

 かつては言われた、打たせて取るということ。

 ツーシームやカットボールが、フライボール革命のアッパースイングにより、以前ほどには効果的ではなくなっていた。

 その時代に直史は、半世紀前からやってきたようなグラウンドボールピッチャー。

 そしてあらゆる変化球を駆使していく、まさに技巧派のピッチング。

 小手先のテクニックなど、圧倒的な正統派のパワーの前には無意味。

 その方向性に進んでいたMLBのピッチングを、完全に一人で止めてしまった感さえある。


 実際のところ、いくらでも前兆はあったのだ。

 直史は高校時代から国際試合に出ていて、直前ではメトロズをエキシビションマッチでパーフェクトに抑えている。

 日米のチャンピオンチーム同士の対決だと思われていたが、実際には直史とメトロズ打線の対決であった。

 それでもまだ、ワールドシリーズ後の抜け殻状態だったと、強弁することは出来た。

 MLBに渡ってくると聞いて、その影響がどうなるか、正確に把握していた者はいなかった。


 大介やセイバーでさえ、ここまで見事に日本時代を再現するとは、思っていなかったのだ。

 先発ピッチャーであってもMLBは、移動が過酷になる。

 直史が負けるとしたら夏場の、暑さで体力が削られる季節で、調整に失敗したときだと思ったのだ。

 それでも圧倒的な成績は残すとは思っていたし、負けてはいけない試合では絶対に勝つと思っていた。

 だが違うのだ。

 大学で事実上の給料をもらうような形で、野球をやっていた。

 ただそれ以前から既に、直史はほとんど負けないピッチャーになっていた。

 大介は五年と言ったが、おそらくそう言うまでもなく、直史の選手生命は短い。

 

 短い輝きを見て、多くの人間が影響を受ける。

 イリヤが見たかったのは、その輝くような日々だったのだろう。

 彼女には既に、このイメージが見えていたのだろうか。

 怪物ぞろいのプロ野球の、さらにその上澄みのメジャーリーガー。

 それすらをも圧倒するという、直史のピッチングを。




 今日のスターンバックは、微妙な感覚である。

 ポストシーズンを経験していないわけではないので、全く心構えが出来ていないということもない。

 ただし以前はまだ、主力として期待されているというほどでもなかった。

 レギュラーシーズンとは異なる、本気で一点も取られたくないという空気。

 それはもう直史が昨日見せてくれた。

 ただそれでもシーズン中に見せた、本当の本気の試合とは、隔絶した内容だとは思ったが。


 日本人選手は短期決戦に強いという話を、補強するような活躍は去年の大介であった。

 ただ直史の場合は、レギュラーシーズンの間ずっと化け物であった。

 半年間も乱れることなく、一定の水準を保つ。

 それは技術とか経験とかではなく、人間が人間であるなら、不可能なことだと思っていたのだ。

 しかし実際に、30勝0敗をやってしまった。

 人間の限界はまだ、もっと先にあるのだろ証明してしまった。


 厄介なことである。

 あれだけ派手なことをするなら、自分もある程度はやってみないと、格好が付かないではないか。

 スーパースターの存在は、多くの人々の目を引き付けた。

 だが下手をすれば他の選手全てが、単なる引き立て役になってしまう。

 少なくとも今年、ア・リーグノ西地区は地獄であった。

 おそらくは去年のナ・リーグ東地区以上に。

 大介は別に、全ての打席でホームランを打つわけではないし、そこまでを期待されてはいない。

 だが直史は、全部の試合を勝ってしまった。

 年に一度あるかどうかという記録を、何度も達成してしまう。

 明らかにパフォーマンスが、他の選手とは桁違いなのだ。


 それでもまだ、一人では優勝出来ないのが野球。

 獲得出来ないのがチャンピオンリングなのだ。

 優れた映画であっても、主演の演技だけでどうにかできるわけではない。

 素晴らしい演出、美術、また共演者があってこそ、それは作品として成立するのだ。

 直史をワールドシリーズに連れて行く。

 それを第一の目的として、スターンバックは投げている。




 昨日85球を投げた直史は、当たり前だが今日は完全休養である。

 本人の意識としては、30球ぐらいなら普通に投げられる気はする。

 なんといっても昨日は、本気で力を入れて投げた球は、5球もなかったと思うからだ。

 肩と肘を、ピッチャーはよく故障する。

 あとは股関節あたりもか。

 指先一本壊れても駄目になるピッチャーは、かなり専門性が高い。

 MLBで普通に野手にピッチャーをやらせるのは、勝負が決まってからである。


 この試合の終盤、点差が少なくて一イニングだけとかであればどうだろうか。

 これまでなら、問題なく投げられると思っていた直史であるが、治療を受けた後である。

 ワールドシリーズまでに全力で一度投げて調整したいが、それをクローザー的な役割でやるのは無理がある。

 かといって負け試合の敗戦処理で投げるのも無理だ。それは首脳陣が許可しない。


 トロントはおそらく直史以外のピッチャーから、なんとか点を取ろうという考えなのだろう。

 だが今日のスターンバックはいい。

 三振とゴロバランスがよく、ランナーが出てからも上手く、三振を狙うかゴロを打たせるか、選択の割合が丁度いい感じだ。

 もちろんこれは坂本の意見も入っているのだろうが。


 七回までを投げて100球手前で降板。

 スコアは3-1とまだ安全圏に達したとは言えない。

 アナハイムはここから、リリーフ陣を投入する。

 アナハイムの勝ちパターンのリリーフ陣は、開幕時点ではセットアッパーのルークとクローザーのピアースは決まっていた。

 途中から先発のマクヘイルをセットアッパーに転向させて、実績を上げさせている。

 ルークは安定して一年を投げてきたが、夏場にはやや乱れることが多かった。

 安定感では転向以後のマクヘイルの方が上だ。

 そしてピアースは0勝1敗52セーブというたいした数字を残しているように見えるが、ブロウンセーブ自体はそこそこある。

 その後の勝ちパターンでないリリーフ陣が、しっかりと抑えて試合をしめているだけだ。


 アナハイムとメトロズのリリーフ陣は、上杉がいる今は、この勝ちパターンではないリリーフ陣の強さの方が目立っているかもしれない。

 メトロズほどの圧倒的な打線の援護があるわけでもないのに、アナハイムはとにかく勝ちまくった。

 直史、スターンバック、ヴィエラの三人で70勝以上を上げている。

 これはリリーフ陣が勝てる時に、しっかりとリードを保っていたということである。

 もちろん全てに成功しているわけではない。当たり前だ。

 だが二点差というのは、アナハイムのリリーフ陣を見れば、ファンからするとかなりの安心感がある。


 八回をマクヘイル、九回をピアース。

 それぞれ無失点で切り抜けて、二試合目も勝利。

 アナハイムは二勝先行し、リーグチャンピオンシップへと王手をかける。




 ベンチから直史に見つめられるだけで、トロントの選手たちは萎縮してしまった。

 もちろんメジャーリーガーたちは、そんなことは認めないだろう。

 だがフィジカルエリートたちが揃うアメリカのスポーツ界。

 その中では比較的小柄で、間違いなく細っこい直史が、大男どもを翻弄している。

 まるで魔術師だ。

 直史としては全く柔道を知らなかったアメリカ人レスラーに、技で対抗しているような気分であるのだが。


 野球というスポーツのルールとテクニックを、把握していない。

 直史は出来ることの範囲で、やれることをやっているだけだ。

 アウトローに遅い逃げていくボールを投げた後、インハイに食い込んでくる速い変化球を投げる。

 これだけで大概のバッターは打てない。

 あるいはど真ん中から、ゾーンのギリギリまで逃げていくボール。

 そんなボールの後に、厳しいコースにストレートを投げられれば、体が反応してくれない。


 落差のあるスローカーブと、同じく落差はあるがスピードもあるパワーカーブ。

 角度が同じであるのに、スピードだけが違うと、まともに当てることも難しい。

 そして打たせて取るのを、基本としているのだ。


 アナハイム三人目の男ヴィエラは、思考としては直史に近い。

 今年34歳のベテランであり、過去にはサイ・ヤング賞の投票でかなりの上位に何度も入っている。

 99マイルの速球と、ほぼ同じ速度のカットボールにツーシームというムービング。

 そしてやはりカーブという、遅い球を持っている。


 年齢的にもう伸び代はないが、それだけに技術や駆け引きは円熟味を増している。

 坂本などはこのヴィエラのキャリアから、多くのことを学んだものだ。

 直史が一人でイニング数を稼いでくれたおかげで、今年のヴィエラは完全にローテを負担なく投げることが出来た。

 勝ち星、防御率、WHIP、投球イニング、奪三振率、BB/9あたりは全てスターンバックよりも下。

 だがクオリティスタートの確率はヴィエラの方が上。

 そして先発で投げて五失点以上奪われた試合は、スターンバックが三試合あるのに対し、ヴィエラは一試合だけ。

 つまり安定感では、ヴィエラの方が上なのだ。


 ポストシーズンの短期決戦では、安定感よりも最大出力が重視される場合がある。

 ただしヴィエラほど高い位置で安定していれば、首脳陣としては安心して見ていられるというものだ。

 ヴィエラはまだこの先、ワールドシリーズへの道が見えている。

 彼もまたキャリアは長いが、チャンピオンリングは持っていない。

 直史がいて、打線にベテランと若手がいる。

 今年は最大のチャンスだと思うのだ。


 もっとも自分たちのことばかりではなく、他のチームも見ているヴィエラは、ワールドシリーズまで進んで、ようやくそこで道半ばということに気付いている。

 リーグも地区も違ったため、対戦はしていないメトロズ。

 あの馬鹿げた攻撃力を持つチームを、どうやって封じるのか。

 去年のエキシビションを見るに、おそらく直史ならば封じることは出来るのだろう。

 そしてせめて一点ぐらいにまで封じてくれれば、アナハイムの攻撃力なら、メトロズの投手陣から三点ぐらいは取れておかしくない。


 直史が二試合勝って、そしてあとはどこでどうやって勝つのか。

 情けないことかもしれないが、直史が勝ってくれるのは前提となっている。

 日程的に中三日で投げれば、直史が三試合先発出来なくはない。

 だがさすがに二試合先発の、一試合リリーフぐらいが限界だと思うのだ。

 あるいは二試合先発で、二試合リリーフ。


 同じピッチャーの目から見ても、直史の性能は訳が分からない。

 あの配球を選択し、そしてどうして何も動ぜず投げられるのか。

 そのあたりの精神性が、直史の異常なところである。

 もちろん各種コントロールも異常なのだが。




 アナハイムからトロントに移動するのに一日。

 そして翌日に第三戦が行われる。

 三勝すればポストシーズン、リーグチャンピオンシップに進出。

 ア・リーグの決勝で対戦するのは、順当ならばラッキーズであろう。


 ラッキーズとは今季七試合対戦している。そして5勝2敗だ。

 直史が二度投げていて、当たり前のように両方を勝っている。

 残りの五試合はさほどピッチャーの強力なところではなかったが、それでも勝ちこしている。

 スターンバックとヴィエラが投げるなら、おそらく五分五分の成績は残せるだろう。

 そして直史が二勝すれば、少なくとも4-3でワールドシリーズに進出出来る。


 いくらなんでも、絶対に直史が勝てるという前提で星を計算するのは、もちろんいいことではない。

 ただそれはあくまでも、直史の残した成績が、絶対的なエース、というレベルであればの話だ。

 無敗などころではなく、31先発で30勝。

 それも勝てなかった試合は味方が一点も取ってくれなかった試合で、後続が打たれて負けたもののみ。

 失点は自責点が一点に、合わせても二点だけ。

 無失点完封を80%以上の確率で達成している。


 何より去年、既にメトロズに勝っている。

 日米チャンピオン同士のエキシビションで、確かにメトロズ側はシーズンが終わって気は緩んでいたはずだ。

 だがそれをパーフェクトに抑えて、しかも大介も抑ええてしまったのだ。

 ポスティング公示されて獲得に動いたのは、ラッキーズやトローリーズのような両リーグのトップレベルの資金力を持ったチームもいた。

 しかし単純な年俸ではなく、他の条件まで付けた上で、アナハイムがあっさりと契約してしまったのだ。


 それでも本当に、MLBで通用するのかという懸念はあった。

 日本人ピッチャーはMLBでも活躍する傾向にあるが、ボールの違いなどで全く通用しない選手もそれなりにいる。

 直史のフィジカル的な面から、シーズンを通じて投げぬくのは無理だろう、とも言われたりした。

 だが過酷なはずのMLBの日程を、最も多くの数完投し完封した。

 特に完封記録は、MLBのレコードを軽く更新した。


 奪三振率もリーグ全体から見てもかなり高く、何よりほとんど四球を出さない。

 神に愛された右腕だのと呼ばれるピッチャーは時々いるし、豪腕というなら上杉がそうであったろう。

 だが直史の緻密なピッチングは、そういったものの全てとかけ離れたものである。

 たくさん投げて、投げればほぼ間違いなく勝つ。

 どこのチームであっても、こんなピッチャーはほしいだろう。




 第三戦、ヴィエラの先発で始まる。

 トロントのホームに変わっているので、先行はアナハイムだ。

 トロントは長くカナダのチームとして、ワールドチャンピオンになることがなかった。

 だがそれも21世紀になってからは達成し、今年も地区二位という成績を残した。

 ア・リーグの東地区は激戦区で、四位のボストンでさえも、今年の前半が終わる頃までは、勝率は軽く五割をキープしていた。

 そこから怪我人が続出したため今年のシーズンは諦め、上杉も放出したわけだが。


 それがメトロズに行ってしまうのだから、どれだけメトロズは日本人選手とのパイプが太いのか。

 もっともこれはボストンとメトロズの間で、大きなトレードを行ったからだ。

 メトロズはプロスペクトを放出しているため、主力選手がFAを獲得したり、契約の切れる二年後には、かなりチーム力が落ちるのではないかと言われている。

 ただ問題は二年後ではなく、今年のことだ。


 ヴィエラはまだ契約が残っていて、来年もまだアナハイムは強いはずだ。

 ターナーは覚醒したし、スターンバックも来年がFA年であるため、今年以上の成績を上げてくるだろう。

 だがそれでも来年も、ここまで調子よくポストシーズンを迎えられるとは限らない。

 アナハイムも資金力は豊富なチームではあるが、オーナーの意向が選手の獲得に反映されているのが難点だ。

 それでいつも、ピッチャーの戦力が不充分なままになる。

 ルークやピアースを、他球団でいまいちな成績を残したときに、安く契約できたのは大きかった。

 そして今年は、負けない先発が三人いる。


 トロントの打力は確かに、シーズン途中から高まっていった。

 それは確かに素晴らしいことなのかもしれないが、勢いだけが先行していたとも言える。

 第一戦で完全に直史に封じられ、第二戦でもスターンバックを打てない。

 これが相手も単なるパワーピッチャーであれば、確かにもっと善戦できたのかもしれない。

(案外このカードのMVPは坂本かもしれないな)

 ヴィエラは坂本の、トロントに対する方針を思い出す。


 アナハイムは優勝を目指せるチームだ。

 対してトロントは、行けるところまで行くしかないチームでしかない。

 だから余力を残すために、打たせて取る。

 幸いスターンバックもヴィエラも、そういうピッチングが苦手なわけではない。

 現在のピッチャーは必ず、ある程度はその技術で、球数を抑える必要があるからだ。


 それでも地元の人気に推されたのか、トロントの打線は攻撃的であった。

 ヴィエラが投球術を駆使するのに対して、パワーでそれを突破しようとする。

 だがそこにおちょくったような坂本のリードが入る。

 ヴィエラは笑みをかみ殺して、そのリード通りに投げるのだ。


 六回までを投げてヴィエラは一失点で降板。

 そこからマクヘイル、ルーク、ピアースとアナハイム流の勝利の方程式が開始される。

 マクヘイルは無失点で切り抜け、ルークは一点を取られて、ピアースはまたも無失点で試合終了。

 最終的なスコアは4-2でアナハイムの勝利。

 全体では三試合で、11-3というロースコアなカードとなった。

 

 トロントの敗因はなんだったのだろうか。

 それはやはり、アナハイムの投手陣を甘く見ていたことだろう。

 特にアナハイムは、勝つときのピッチャーの成績は、素晴らしく安定している。

 いやそもそも、直史は打てないと諦めたとき、そこで既に負けていたのかもしれない。


 アナハイムは三連勝で、リーグチャンピオンシップへの進出を決めた。

 対戦相手はまだ決まっていない。

 どちらにしろ勝率で、まずはホームでの対戦とは決まっている。

 アナハイムの選手団は、ホームへ戻って敵を迎え撃つ。

 次は七戦で四戦先勝。

 短期決戦ではあるが、レギュラーシーズンよりはよほど楽だな、感じる直史であった。

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