第11話 ヤンデレ彼女と学校と

「友一君、離れませんからね。よそ見したら許しませんからね?」


「ふふふっ、わかってる。僕も離さないから」

「にへへ……えへへ……」


 泉美とそのまま腕を組んで、道行く人に見せつけながら、学校に向かって数分。


 学校内でも、教室に入ってからも、ずっとギュッとしてて。


 当然、クラスの友達とかに散々からかわれて、囲まれて、教卓の前で質問攻めにされて。


「えー、友一、いつから付き合ってたの?」


「池江君に松山さん、二人はどんな出会いだったの? あ、図書委員会か!」


「告白の言葉は! どんな感じで告白したの?」


「友に先越されたか! でも、幸せそうで良かった!」


 ……色々な言葉が、色々な人から飛んできて、その色に紛れそうになるけど。


「……友一君」

 教卓の下で見えない様に握ったその手だけは絶対に離してはいけないと思った。



 ☆


「友一君……ん!」

 囲まれていた朝の時間は先生の襲来により、終わりをつげた。


 そのままの流れの1時間目の授業は、少し退屈だってけど、でもなんか色々考えてたら、簡単に乗り越えられた。


 そうして1時間目が終わって、泉美のところに行こうかな、って思ってたら、泉美の方から僕の方へやってきてくれた。


 しかも、グッと両手を大きく広げて。


 ……ふふふっ、何やりたいかわかった。可愛い。


「エネルギーチャージ? いいよ、おいで!」

「ふへへ。それじゃあ、失礼して!」

 手を広げた僕に嬉しそうにギュッと飛び込んでくる泉美。


 教室の中は少し暖かいので、ブレザーを脱いだセーターのあみあみから色々な感触が伝わってくる……やっぱり泉美、すごい大きい。


「む、友一君、今変な事考えてたでしょ?」

 僕の視線に気づいたのか、少しむっとした表情で泉美が口を開く。


 ……でも、僕だって男だし、しょうがないと思わない?


「へへへ、ごめん泉美……ギューッ!」

「にへへ……かるびー!」

 謝罪代わりにもっと力を込めてギュッとする。

 体を預けた泉美は楽しそうに鳴いた。

 えへへ、このまま……



「……あのさぁ、お二人さん。ラブラブなのはすごくいいことですけど、少し場所考えた方がいいですぜい? こんな教室のど真ん中はダメやよい?」


 ……視界の外から聞こえてきた聞き覚えのある声に世界から飛び出して顔を上げる。

 顔を上げた先には、呆れた顔をして英ちゃんが、腕を広げて笑っていた。


 英ちゃん―王鞍英明おうくらひであき

 皇さんとともにking&princessなんて呼ばれている学校の男アイドルみたいなイケメン君で、10股してるとも、20股してるとも言われている。


 でも、小学校からの英ちゃんの友達である僕は知っている。


 英ちゃんはそんな不埒な奴じゃないって。

 英ちゃんは女の事は仲良くするけど、そんなたくさんの女の子と付き合えるような人じゃない。まっすぐで、実は一途な男の子だ……今の恋愛事情は知らないけど。


 ……って、今は英ちゃんの話じゃなくて、僕たちの話か。


「大丈夫だよ、英ちゃん。ここは教室の端っこだから! 真ん中じゃないから!」

「……そんな一休さん理論で来られても。そう言う事じゃないんだよな」

 そう言って困ったように、でも楽しそうに笑う英ちゃんに、僕も笑い返す。

 昔からこんな感じの関係、安心する。



「……まあ、ついに友一に彼女ができたことは、永遠の親友の俺からしたら、本当に嬉しいんだけどな。それで、松山さん、友一のどこが好きになったの?」


「……ぴえっ」

 笑いながら、くいっと僕たちの方へ顔を寄せる英ちゃん。

 近くで見ると、本当にキセキくらいに顔が整ってて、まつ毛長くて、肌もキレイで……本当にイケメン。


 小学校の頃からいろんな人に言われ続けてるけど、本当になんで今まで僕とちゃんと友達やってくれているのか分かんないくらいのイケメン君だ。


 そんな英ちゃんのかっこよさにあてられたのか、泉美は顔を少し赤くしてクラクラクラクラ……むー……


「こら、英ちゃん、危ないでしょ! 急に近づいて……僕の泉美が驚いてクラクラになったじゃない!」

 嫉妬半分、冗談半分で泉美の顔を抱きかかえる。

 もう、英ちゃんはこういうのがあるからちょっと怖い!



 僕の動きをみた英ちゃんは少し寂しそうにつぶやく。

「そんな俺をバケモノみたいに……二人とも、俺の事どう思っているわけ?」


「「イケメン!」さんです!」


「……ハハハ、どうもありがとう」

 2人そろった「イケメン!」の声に少しほっぺを赤くして、答える。

 その顔も整ってるからやっぱりずるいと思う。


 親友にちょっと嫉妬の炎を燃やしていると、制服の袖を、こっちもほっぺを赤く舌泉美に、くいくい引っ張られる。


「あの、その……でも、私は王鞍さんより、友一君の方がイケメン、だと思います……」

 蚊の泣くような、小さな声で恥ずかしそうに。


 でも、そんな彼女のラブコールを僕が聞き逃すはずがなく。


「え、本当、泉美?」

「はい、本当です」


「えへへ、ありがとう……僕も泉美が世界で一番可愛いと思うよ」

「にへへ……友一君……」

 真っ赤な顔で、嬉しそうに、ぴとっとくっついて。


「……はいはい、ごちそうさまでした。まあ、二人ともいつまでもお幸せにな!」

 親友からのメッセージも貰ったところで、僕は泉美の髪に何かついているのを見つけた。


「ちょっと待って、泉美。頭何かついてる」

「え、本当ですか?」


「うん、ちょっと動かないでね」

「ん……」

 目を瞑る泉美の頭からその何かを取り出す。

 ふさふさの、もこもこで……


「ふふふ、これ鳥の羽のかけらだ。なんでこんなのついてるの?」

「え、鳥ですか……ナンデでしょうか?」





《あとがき》

 今日エナドリ飲んだら体調悪くなりました、ダメですね。

 今日はあと1本、投稿するんじゃないかな、って思います。

 感想や評価などいただけると、とても喜びます! 嬉しいです!

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