第10話 ヤンデレ彼女と朝の時間
「ぷくーだ……ぷくーだです」
「ごめんって、泉美。夢だと思ってエッチな事しちゃったのは悪かったから、そろそろぷくぷくやめてほしいな」
ソファに座ってふぐみたいに顔をぷくぷく膨らませた泉美に、手をすり合わせながら謝る。
「ぷくーだ……そりゃ、私がお布団の中入ってたのも少し悪いですけど、でももっとやり方あるっていうか……ぷくーだ」
けど、泉美に許してくれるような色は全然見えずに、ぷくぷく顔のまま、そっぽを向いている。
うーん、困ったな、どうしよう?
……こういう時は、直接聞いてみるに限るよね!
「ねえねえ、泉美、どうしたら許してくれる?」
「ぷくーだ……ギュッ、としてくれたら許してあげます。さっきみたいじゃなくて、もっと優しく……ぷくーだ」
頬を赤らませて、少し恥ずかしそうに言う泉美。
……ふふふ、それなら了解です!
「泉美、こっち向いて」
「……ん」
「よーし、泉美、バッチ来い!」
恥ずかしそうにこっちを向いた泉美の体をギュッと、今度は優しく抱き留める。
やっぱりほわほわであったかくて、ふにょふにょで。
「ふふふっ、ありがとうございます……大好きですよ、友一君」
「んー♪」と楽しそうに鳴いた泉美が耳元でそう囁いてくる。
力が抜けて、ぞわぞわってなって……すごく気持ちいい!
よーし、それなら僕もやり返「ちょっと、友一に泉美ちゃん。朝からラブラブなのは良いけど、私たちがいるの忘れないでね」
耳元に囁こうとした瞬間に、呆れたような冷たい声が聞こえてきた。
見上げると、呆れたような、恥ずかしそうな赤い顔をしたお母さんがおたまを片手に僕らの方を見つめている……そういえばここ、リビングだ、お父さんも新聞読みながらチラ見してきてる。
親に見られて、ものすごく恥ずかしくなったので離れよう……と思ったけど、お腹に顔を埋めた泉美がぐりぐりして離してくれなさそう。
まあ、こっちの方が嬉しいしいいか!
「……まあ、イチャイチャはいつまでしてくれても構わんけど。そろそろ朝ごはん出来るから、それまでには離れなさいね」
ハァ、と息をついて、去っていくお母さん。
「んー、友一君……ふふふっ……」
ペコっと頭をくっつける泉美を、しっかり抱きしめる。
☆
「……それで、二人はいつ付き合ったの? どっちから告白したの? うちの友一に、そんな仕草なかったけど」
朝ごはんの味噌汁を啜りながら、お母さんが聞いてくる。
お父さんが「まあまあ、お母さん」と止めにかかってたけど、気にせずドドンと聞いてきた。
……隣で朝ご飯を食べていなかったのか、美味しそうに卵焼きを食べている泉美と顔を見合わせる。
「どうぞ、どうぞ」という感じであごをくいくいして、再び食事に戻る。
「……付き合ったのは昨日だよ。告白したのは、僕から。そのずっと好きだったんだよ、僕は……ね、泉美」
「うん、友一君」
少し緊張しながら言う僕に泉美がはにかんでくれる。可愛い、パクっとしたい。
「へー、それじゃあ、昨日は泉美ちゃんと遊んでたんだ? じゃあなんで嘘ついたの?」
「……え?」
淡々とそんなことを言うお母さんに少し驚く。
あれ、嘘なんかついてたっけ?
「ほら、昨日は英明君と一緒に遊んだって言ってたじゃない。なんで嘘ついたのかなー、って」
ズズズと味噌汁を吸いながら、お母さんが答え辛い質問をしてくる。
え、その、だっていじられるのめんどくさくて、でも、横に泉美がいる状況ではなんていうか、そう言うの言い辛くて……いや、でも本当だし……
「……えっと、その、いじられるの嫌だったから、ちょっと隠したっていうか、なんていうか……ごめんなさい」
しどろもどろになりながら、うまく言葉を出せずに、答える。
「むー……」
隣の泉美は、むくれた顔で僕のわき腹を掴んでいる。
ごめんよ、でも本当にいじられたくないだけだから……ごめんなさい。
僕の言葉に「ふーん」と興味なさそうに呟くお母さん。
何だその反応。
ちょっと文句を言ってやろうかと思ったとき、お母さんの体がグイっと近づいてきた。
「ふーん、そうか。まあいいや……それより、泉美ちゃん、これからよろしくね。いつでも遊びに来ていいよ」
「本当の家族と思っていいよ、泉美ちゃん」
そして、しゃべってなかったお父さんまで泉美を、ものすごく楽しそうな声で歓迎する。
……お父さんの言葉は時と場合によってはセクハラになるけど、でも、泉美の心には結構響いたみたいで。
「……はい、ありがとうございます……お義父さん、お義母さん」
そう言ってニコッと微笑む。
その笑顔にお父さんもお母さんも鼻の下をこすった。
☆
『いってきまーす!』
ニコニコ笑顔の両親に見守られ、僕らは一緒に家を出る。
「泉美、それじゃあ行こっか」
「……」
「……泉美?」
さっきまでニコニコしていたのに、急にまたむくれだす泉美。
え、なに?
「……友一君、嘘ついたんですね。私と一緒に遊んでないって嘘ついたんですね……私の事、やっぱり恥ずかしいって思ってるんですか? 邪魔だって思ってるんですか?」
怒ったような、でも悲しそうなそんな声で、不安そうにも見える顔で。
だから安心してもらうために、ちゃんと思いを聞いてもらうために、泉美の肩を取って、目を見て話す。
「そんなわけないじゃん、泉美。本当にいじられるのが嫌だっただけ。泉美の事恥ずかしいなんて思ってないよ」
「……本当ですか?」
「ほんと、ほんと。全然思ってない……そうだ、今日クラスのみんなに報告しよ? 付き合ってます、って」
「……それは、その……ちょっと恥ずかしいです」
そう言いながらも、どこか楽しそうにニコッと笑う泉美。
みんなに言って、ちゃんと関係認めてもらおう。
ニコッと笑っていた泉美だけど、急にキリッとした顔に切り替わる。
「……でも、嘘ついたのは傷つきました! バツとして、私と腕を組んで学校へ行ってもらいます! 今日は手をつないであげようかと思いましたが今日も腕を組んでもらいます!」
そうピシッと言って、ギュッと僕の腕に自分の腕を絡めてくる。
腕に伝わる、気持ちいいふわふわの弾力。
「えへへ、罰ゲームです……にへへ、どうですか?」
「うわー、きついなー、つらいなー」
「ふふふ、それなら、もっとしてあげます! えいえい!」
僕の言葉に笑いながらさらに押し付けてくる泉美に、僕も体を寄せた。
《あとがき》
アカイイト頑張った! マリリンとともにまたエリ女で見たいよ!
アリーヴォも応援してたんで最後めっちゃ興奮しました(なお馬券)
感想などいただけると嬉しいです。
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