第8話 ヤンデレ彼女と両親と
「やっぱりこのお店は美味しかったです。友一君、一緒に来てくれてありがとうございました!」
お腹をさすりながら、こっちを向いて満面の笑みを見せる。
僕の食べきれなかったかつ丼を、泉美はパクパク美味しそうに、ペロッと美味しそうに完食した。
値段も安かったし、泉美が喜んでくれるならまた行きたいね。
「ふふふ、泉美いっぱい食べてたもんね。僕のかつ丼も結構食べてたし、本当によく食べるね」
しかも、お腹はさすってるけど、まだまだ全然食べれそうな雰囲気がある。
僕の言葉にお腹をさすっていた泉美の手がピタッと止まる。
「……その、友一君は、やっぱり、いっぱい食べる女の子って、その……嫌いですか?」
そして、心配そうに、悲しそうな目で見上げてくる。
……嫌いなわけないじゃん!
「ふふふ、そんなわけないよ。いっぱい食べる君が好き~♪」
「え、えっと……りょ、両手におかわり~♪」
「んふふっ、いっぱい食べる君が好きだよ♪」
『カロリミットファンケル!』
パンと、両手をお空にハイタッチ。
久しぶりにこのCM歌ったよ。それにしても……
「ふふふ、泉美、両手におかわりってなにそれ」
「え、だってうろ覚えで……ていうか友一君ばっかり簡単なパートでずるかったです!」
ぷくぷくほっぺを膨らませる泉美。可愛い。
「ハハハ、ごめん、ごめん。でも僕は、いっぱい食べる泉美の事好きだよ」
「もう……でも、嫌いじゃないなら良かったです。また、美味しいもの、食べに行きましょう!」
ピシッと手を挙げてテンション高く話す泉美。すごく楽しそう。
「いいよ、でもあんまり僕は大盛食べられないよ」
「ふふふ、その時は、私が食べてあげますから」
「ハハハ、頼もしいな。ほんと、泉美は食いしん坊さんだね」
「むー、それ、褒めてるんですか?」
「褒めてるよ。可愛いなって」
「えへへ……ふふふーん♪」
ニコニコ笑顔で腕に絡みついてくる泉美をギュッと抱きしめ、歩き始める。
「ねえ泉美、この後はどうする?」
「うーん、そうですね……もう今日は夜遅いですし、名残惜しいけど帰りましょう」
「そっか……それじゃあ、送っていくよ。泉美の家どっち?」
「えへへ、あっちです……その友一君のこと、お母さんとお父さんに紹介していいですか? 絶対、お父さんも、お母さんも喜びますし」
「ふふふ、いいよ。ぜひ会いたいな」
「えへへ、良かったです! それじゃあ、行きましょう!」
腕を取りながら、道案内する泉美に体を任せ、挨拶をしに行くことになった。
親への挨拶……友達同士だと緊張しないけど、泉美のってなるとすごく緊張する!
「大丈夫ですよ、友一君。私のお母さんもお父さんも歓迎してくれますから」
僕の動揺を察したのか、泉美が励ましとともに、ぴとっと頭を寄せる。
その温かさに、体の緊張が少しほぐれた。
☆
「ただいまー、遅くなってごめん」
「本当に遅いわね、あんた。今何時だと思ってるの?」
「まあ、まあ、母さん。高校生だから許してあげなさい」
泉美を家に送ってご両親に挨拶して、大歓迎を受けた後に家に帰ると、母親からの呆れたような声とそれをたしなめるお父さんの声が聞こえてきた。
まあ、こんな遅い時間まで帰ってこなかったら、連絡を入れていたとは言え心配するか。
あ、ちなみに泉美の両親にはそれはそれは手厚い歓迎を受けたよ。
内心怒られないか少しビクビクしていたようなところはあったけど、本当に大歓迎って感じで、色々聞かれて、本当の子供みたいに扱ってくれて。
詳しい話は、またの機会になるけど、そっちの親ともすごく良好な関係を築けそうで良かった。これで、泉美と……ふふふっ。
「なーに、にやけてんのよ、友一。ほら、ちゃっちゃとお風呂入ってきなさい、お風呂冷めたらもったいないから」
再び呆れたような声を出すお母さんに、「はーい!」と元気よく返事する。
よーし、あったまって、明日も泉美と頑張るぞ!
「あ、そうだ、友一。今日も英ちゃんと遊んだのか?」
そう思ってルンルンでお風呂に行こうと思っていた時に、お父さんにそう聞かれた。
……うーん、どうしよう。
……言って、お母さんとかに呼び止められて時間食うのも嫌だし、ここは誤魔化そうかな、また言えばいいや。
「え……あ、うん。そうだよ、今日も英ちゃんと」
だからちょっと、嘘をついた。
友達と遊んだって嘘をついた。
「ハハハ、本当に仲いいな、お前と英ちゃんは……友一、仲の良い友人ってのは大人になったら存外貴重になる。だから、大切にするんだぞ」
「……うん、そうだね」
笑いながらとっても大事なことを言うお父さんに、僕は神妙に頷いた。
嘘だとは……いや、英ちゃんとは実際に仲いいからいいや。
……取りあえず、お風呂に入って汗を流そう!
やっぱりルンルンでお風呂に向かった。
「……にしても英明君と友一、全然顔のタイプ違うのに、ずっと仲いいわね」
「ハハハ、そう言うのは仲の良し悪しにはあまり関係ないからな」
「確かに私とあなたも美女と野獣だものね」
「……僕の事そんな風に思ってたの、恵?」
「ふふふ、冗談よ、あなた……あなたは世界一、かっこいいですよ」
☆
むにゃむにゃ眠たい夢の中。
でも、起きなきゃいけない時間は近づいていて、太陽の眩しい光で目が覚める。
……もう朝か。もうちょっと、寝たいんだけどな。
そう思って、手を伸ばすと、いつもは感じない温かい体温と柔らかい感触が手に伝わってくる……なんだ、これ?
「おはようございます、友一君……ふふふっ、相変わらず変態さんです」
目を開けると、隣で寝ている泉美がニコッと微笑んだ。
《あとがき》
昔、友達の親に頭蹴られました、痛かったです。
感想などいただけると嬉しいです。
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