第7話 ヤンデレ彼女とご飯を食べたい

「……友一君、この後も大丈夫ですか? この後一緒にご飯、食べに行きませんか?」


「わん! いいよ、ご飯食べに行こ!」

「ふふふ、嬉しいです」

 首輪をつけた僕の体に、ぴとっと体を寄せる。



 あの後、しばらく「きいきい」「わんわん!」を繰り返して遊んだ。

 何だか少し泉美が怖かったけど、楽しそうだし楽しかったのでOKです!


 そんなこんなで時間が経って、お外はもう暗くなって、お腹の虫も騒ぎ出す時間。

 親に連絡して、夜ご飯を泉美と一緒に食べに行こう!



「それで、泉美はご飯何食べたい? やっぱり大盛があるところ?」


「もう、恥ずかしいです……」

 ほっぺを赤らめた泉美が恥ずかしそうにそう呟く。

 でも僕は、さっき泉美のお腹がグー、と可愛くなったところを見逃さなかったぞ!


「……あの、私行きたいお店があるんですけど、そこ行きませんか? 私一人では入りにくいお店だったので……」

 上目遣いで微笑みながら、そう聞いてくる泉美。


 答えはもちろん、YESです!


「泉美が行きたい、って言うならそこに行こう! どんなお店?」


「ありがとうございます……その、丼物のお店で、高校生ならご飯の大盛が無料になる感じの、そんな、ステキなお店です!」


「ふふふ、やっぱり大盛じゃん」


「え、いや、その……///」

「ふふふっ、お腹は正直だね。それじゃあ、そのお店行こっか!」


「……はい、行きましょう///」

 照れて真っ赤になった泉美とくっつきながら、お店までの道を急いだ。



「……それでさ、そのリードはいつ離してくれるの?」


「……お店につくまではダメです。離しませんから」


「……僕どこにも逃げないよ?」

「……他の人に目移りしない様に持っておきます」


「ふふふ、僕は泉美しか見ないよ?」

「もう……でも、心配ですから……きいきい」

「わんわん!」



 ☆


 泉美にリードを引かれながら、歩くこと数分。

 着いたのは川田食堂。

 小さくて、懐かしい雰囲気があるお店。


「いらっしゃいませー」というお店のおばちゃんの元気な声に迎えられ、適当な席に座る。流石にリードは離してもらえた。


「泉美はこのお店来るの初めて?」


「はい……そのあんまり外食する機会がないので……これて嬉しいです」

 はにかみながら答える泉美。

 可愛いし、僕もこういう所あんまり行かないから楽しみ。

 英ちゃんとご飯食べに行くときは大体チェーン店だし。


 年季の入ったメニュー表をぺらっとめくる。


 食堂、ってあるから定食みたいなのが多いのかな、って思ってたけど、泉美の言っていたように丼のメニューがずらりと並んでいた。


 かつ丼、海鮮丼、親子丼、牛丼、うな丼……美味しそうなメニューがいっぱい並んでいる。

 あ、ポキ丼って言うのもある、何だろうこれ?


「友一君、何食べるか決まりましたカ?」


「あ、ごめん、ちょっと待ってね。泉美は決まった?」


「はい、天丼にします……あ、そのせかしているわけではないので、ゆっくり決めてくださいね!」

 わちゃわちゃとごめんなさいする泉美。


「ありがとう、どれも美味しそうだから迷っちゃって……よし、決めた。僕はかつ丼にするよ」


「かつ丼も美味しそうです! 良かったらシェア、しませんか?」


「ふふふ、いいよ。それじゃあ、注文するね、すみませーん……あ、そうだ、泉美は大盛?」


「はい……あ、でも友一君がしないなら、その……大丈夫です」

 恥ずかしそうに顔を伏せながら、お腹を押さえて泉美が言う。


「……大盛恥ずかしいの?」


「はい、その……私だけ大盛はちょっと……」

「ふふふ、わかった。じゃあ、僕も大盛にする。すみません、天丼とかつ丼の大盛でお願いします!」

 僕の注文に、「はいよー!」って言う声がお店に響いた。



「……その、良かったんですか? 私に合わせて大盛にしてくれて……」


「大丈夫だよ、僕も高校生だし、それにいっぱい食べる君が好きだし」


「……さらっと、そう言う事言わないでください。ありがとう、ございます」


 ☆


『うわあ! 美味しそう!』

 料理がテーブルに運ばれてくると、思わず二人そろって、声を上げた。


 こうこうと立ち上がる湯気の向こうに、キラキラ光るご飯と具材。

 これはすごく美味しそう!


 ……そして丼は特大だ!


『いただきます!』

 一口目にカラッと揚がったカツにかぶりつく。

 サクサクで、それでいて少し出汁を吸ってしっとりしていて、お肉も柔らかくて……美味しい!


「うーん、美味しい!」

 目の前の泉美は天丼を頬張って、幸せそうな笑みを浮かべている。


 その笑顔を見ると、改めて色々実感して。


「……どうしました、友一君?」


「……いや、何でもない。美味しいねって」


「ふふふ、そうですね! お箸止まらないです!」

 そう言って、ご飯を掻き込む泉美を眺めた。






 ……わかってはいたけども、特大の丼はものすごい量で。



 かつ丼は美味しいし、ご飯ともすごくマッチしてパクパク食べられる。

 泉美とちょくちょくシェアして味変もばっちり。


 ……でも、僕の胃袋は限界を迎えつつある。


 美味しいんだけど、かつ丼のカツは脂もすごくて重たいです……


「……」

 すでに天丼をペロッと完食した泉美は、楽しそうに、どこかもの欲しそうに僕の方を見ている。


「……食べたいの?」


「……えっ!? いや、その、そういうわけでは……」

 そう言いつつも、泉美の目は僕のかつ丼の方にくぎ付けで。

 天丼の油でテカった唇に、チロチロと食材を求める舌がチラチラ動いていて。


「……食べたいんでしょ?」

「……はい、食べたいです……」

 恥ずかしそうに、でも嬉しそうに答える泉美。

 ふふふ、正直にいっぱい食べる君が好き。


「それじゃあ、このかつ丼の残り全部あげる」

「え、こんなに……良いんですか!?」


「うん、僕もう食べれないし……それに泉美すごく嬉しそうだし」

 キラキラした目で、僕の残りのかつ丼を見る泉美を見ていると、どんなものでもあげたくなる。すっごく可愛い。


「えへへ、だって、その……えへへ。それじゃあ、遠慮せずに、いっただっきまーす!!!」

 お箸で豪快にご飯ととんかつをすくって、口に運ぶ。


 もきゅっと一口噛んで、顔がさらにパッと輝く。

「うーん、やっぱり美味しいです!」

 ほっぺたを抑えながらキラキラ笑顔でそう言う泉美。


 この笑顔を見ていると、本当に今幸せだな、って実感する。


 泉美と一緒になれてよかった。

 この笑顔、ずっと見ていたいな。






《あとがき》

 最近外食出来てないからまた行きたいですね。

 感想や評価などいただけると嬉しいです。

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