第6話 ヤンデレ彼女は首輪をつけたい
公園―というよりはベンチが置いてあるだけのスペース。
まあ、都会とは言えないけど、結構この町も発展してきたから、ビル街の公園なら、これくらいのスペースなのかな?
「それじゃあ、プレゼント交換しましょう。どっちから渡しますか?」
それなりにキレイなベンチに座りながら、コテンと首を傾けながら、泉美が聞いてくる。
ここは男だから、僕から渡すことにしよう。
「じゃあ、僕が渡すね」
「……そのプレゼント、って貰い方とかありますか? そのあんまり貰ったことないから、私わかんなくて……」
「大丈夫、受け取り方なんてないよ。嬉しい気持ち、伝えればいいだけだから」
わちゃわちゃ申し訳なさそうにする泉美の頭を、安心してという風にポンポン撫でる。
こういう焦った時の動きもすごく可愛い。
「ん、頭撫でるのずるいです……ん、わかりました。それじゃあ、友一君のプレゼント、くださいです!」
楽しそうに、手をピュッと僕の方に出してくれる泉美になんだか僕まで嬉しくなる。
ポケットに入れておいた、さっきのキーホルダーを取り出す。
「はい、泉美。プレゼントだよ、受け取ってください!」
「ありがとうございます! なんだかはりはりでゴツゴツしてて……なんですか、これ?」
「ふふふ、それは開けてみてのお楽しみ! ほら、開けてみて!」
「えー、何かな、何かな……うわぁ、ハリネズミのキーホルダー! すごく可愛いです、私の好きな動物覚えていてくれたんですか!」
「うん、だって僕に最初に教えてくれた本だもん」
「……/// 本当に嬉しいです! 友一君ありがとうございます、一生大切にします!!!」
「ふふふ、大げさだよ、泉美」
「でも、だって……嬉しいん、ですもん……ぬへへ///]
キラキラした笑顔で、ものすごく嬉しそうにキャンキャン跳ねながら、大事そうにギュッとキーホルダーを抱きしめて喜んでくれる泉美。
本当にこんなに喜んでくれるなら良かった、プレゼントした甲斐があったね!
「えへへ、友一君のプレゼント……えへへ///」
「ふふふ、そんなに喜んでくれて良かった」
「えへへ……こほん、今度は私のプレゼントですね……はい、これが私のプレゼントです、受け取ってください!」
嬉しそうな顔の泉美が、ゴソゴソと鞄をさぐって、僕と同じようなプレゼント袋を渡してくれる。
僕のより大きくて、少しゴツゴツした袋。
「えー、何かな、何かな……開けていい?」
「はい、開けてください! 楽しみ楽しみですよ!」
「ふふふ、楽しみ、楽しみー♪」
テンションの高い泉美の言葉に誘われて、僕もワクワクしながらぺりぺりと袋の包装を開く。
ぺりぺりと袋をはがした先にあったのは……え、ナニコレ?
えっと……え、これ首輪? え?
……ちょっと、予想外過ぎるものが出てきた……聞いてみよう。
「……泉美、なにこれ?」
「はい! 首輪と犬用のリードです!」
自信満々の、嬉しそうな顔で答える泉美。
「……そんな、ステゴのアドマイヤリードみたいに言われても」
「ヴィクトリアマイルですか?」
「うん、ルメール」
「デンコウアンジュのやつですね……て、そんな話は置いといて。これが私のプレゼントです! 友一君にこれ、着けてもらいたいんです!」
パンと手を叩いて、相変わらずキラキラの目で答える泉美。
……えっと、プレゼントは嬉しいんだけど、これ、つけるの……?
「ねえ、泉美、これワンちゃんがつけるやつじゃないの?」
「違いますよ、さっきは犬用って言いましたけど、ちゃんと人間用の首輪です、おしゃれ首輪です! ちょっと、貸してもらっていいですか?」
首輪を手渡すと、泉美は自分の首に着けて、じゃーんとポーズをとる。
「じゃーん、どうですか! 可愛くないですか?」
目の横で、ピースを一つ。
その後もピシ、パシ、っといつもの泉美では想像できないくらいのテンションでいろんなポーズをとる泉美。可愛い、可愛すぎる。
凄く可愛いので、写真をパシャパシャとる……なんだか、首輪がすごく可愛くおしゃれに見えてきた!
そして、泉美が可愛すぎる、やばいやばい、好き!!!
「……えへへ、そんなに写真撮られると恥ずかしいです……今の私、そんなに可愛いですか?」
恥ずかしそうに、それでいてちょっと嬉しそうに。
「うん、めっちゃ可愛いよ! もうちょっと写真撮らして!」
「えへへ……それじゃあ、こんなポーズとか……わんわん、なんちゃって……ぬへへ」
手をふにゃっとまげて、わんわんと犬のポーズをする泉美。
……あー、これはもうやばいです、可愛すぎます、やばすぎます!!!
何その可愛いポーズ天使ですか、もうカメラを押すボタンが止まらない。
パシャパシャパシャパシャ、いろんな角度で写真を撮る。
「にへへ、そんなに喜んでもらえるなら……ぬへへ、嬉しいな、にへへ……///」
笑顔で可愛すぎるポーズを取る泉美を、しばらくパシャパシャ写真を撮り続ける。
あー、もう泉美本当に可愛いな! 本当に大好き!!!
「今度はこんな……にゃー」
「あー、ダメダメ、サービスが過ぎるよ、泉美ちゃん!!! 他の人に絶対に見せちゃダメだよ、そんな顔」
「……見せないよ、友一君だけの特別サービス」
「あーーーーーー!!! 好き! 大好き!!!」
「ぬへへ……///」
☆
可愛すぎる泉美の写真を撮り続けて、数百枚以上。
可愛い泉美の写真でホクホクになったスマホを握りしめる。
ああ、すごくあったかい……好き。
「えへへ、友一君、楽しんでもらえましたか?」
「うん、すごい楽しかった! 泉美本当に可愛くて、やっぱり好き!!!」
「にへへ……嬉しいな///」
照れて真っ赤になった顔を合わせて、二人でにへへと笑う。
本当に、勇気出して良かったな、って改めて思う。
本当に可愛くて、愛おしくて、誰にも渡したくなくて。
「……という事で、友一君もこの首輪つけてください!」
「……そういえば、これ僕へのプレゼントだったね。泉美に似合いすぎて忘れてた」
「ふふふ、なんだか照れます……でも、友一君へのプレゼントなので友一君にして欲しいです。じっとしていてください、私がつけてあげます」
うーん、と手を伸ばして、僕の首に首輪をつけようとしてくれる泉美。
「……かがんだ方がいい?」
「大丈夫です、これくらい出来ます……ふふふ、なんだかネクタイを結んであげてるみたいで楽しいです……ふふふっ、首の具合はどうですか、友一君?」
「ふふふ、もうちょっと緩めてほしいかな、泉美」
「えへへ、わかりました、……ふふふっ、なんだか新婚さん見たいです……少し歪んでますよ、友一さん……なんちゃって、にへへ」
「新婚さんは照れるな……ねえ、また僕のネクタイも結んでよ」
「……そういう事はもうちょっとちゃんとしたところで言ってほしいです……」
「え、そう言う事?」
「……もう、わかってるくせに! ほら、つけれましたよ……!」
ぽん、と離れた泉美が差し出した鏡で僕の首輪姿を見る。
上手くはまってはいるけれど……ちょっと分かんない。
「ねえ、泉美、これ似合ってる?」
「え、はい、その……かっこ、いいです……似合ってます///」
首輪についたリードをくいくい引っ張りながら、恥ずかしそうに答える泉美。
……かっこいい、っていて貰えて嬉しいし、泉美可愛いし、ちょっとからかっちゃお!
「ねえねえ、泉美、僕かっこいい? カッコイイ?」
「かっこいいです、似合ってます! 友一君、その……すごくかっこいいです!」
「ねえ、カッコイイ? カッコイイ? 僕カッコイイ?」
「……もう、いじめないでください、何度も言ってます、かっこいいって……キイキイ」
ちょっとからかっていると、泉美がリードを引いて、前に少しつんのめる。
アハハ、少しからかい過ぎたかも。
「ごめん、ちょっとからかい過ぎた」
「……きいきい、です」
謝る僕にピタッと、体を寄せて、さらにリードを引いてくる。
「……どうしたの?」
「……きいきい」
僕が聞いても、息の荒い赤い顔でリードを引っ張るだけで。
ピトッと頭を引っ付けて、ハァハァと息をしながらリードをくいくいするだけで。
「……泉美?」
「……鳴いてくれないんですか?」
「……え?」
「……首輪してるのに鳴いてくれないんですか? 私がきいきい引いてるのに鳴いてくれないんですか?」
少し興奮した赤い頭を引っ付けたまま、荒い息でそう言って。
「……えっと、わんわん」
「ふふふ……きいきい」
「わんわん」
「きいきい」
「わんわん!」
「うふふ……きいきい」
「わんわん!!!」
「……ふふふ、良い子ですね……友一君はずっと、私と一緒ですよ」
真っ赤な、恍惚の表情を浮かべた泉美がリードを引きながら僕の頭を撫でてくれる。
優しくて、あったかい手。
僕も「わんわん!」と元気に答える。
「ふふふ、本当に友一君は良い子です……うふふ」
そう言って、恍惚な表情で艶やかに笑った。
《あとがき》
昔、彼女に首輪と猫耳つけた写真を送ってきた友人がいましたが、彼は今元気にしているでしょうか?
10時ごろに投稿と言っていましたが、1時間ほど遅れてしまいました、申し訳ございません。寝てました。
感想などいただけると、ベルベル喜びます。
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