第5話 ヤンデレ彼女と手をつなぎたい

「えへへ、チャージ完了です……それじゃあ、友一君、お買い物行きましょう」


 しばらくしてから、僕のお腹から離れた泉美が、えへへと微笑んで、こっちを見るので、僕もうん、と頷く。


「えへへ、それじゃあ……こうやっていいですか?」

 そう言って、僕の腕をギュッととる。

 ふわっと柔らかい感触が伝わってくる。


 ……でも、腕を組むのも良いけど、僕は別の事がいいな。


「ねえねえ、泉美。僕手をつなぎたいんだけど、ダメ?」

「え、その……でも、こっちの方が、友一君、いっぱい感じられるので、私はこのまま行きたい、です」


「うん、そうだけど、僕彼女と手をつないでデートっての憧れてたんだ。その、ダメ、かな?」

「いや、その、本当はダメじゃないですけど、今は、ダメです……その、友一君と一緒にいると、緊張して嬉しくて、手がびちょびちょになっちゃうので……だから、今はダメです」

 恥ずかしそうに、手でバッテンを作る。


「そんなに手汗すごいの?」

「手汗って言わないでください、恥ずかしいです……その、本当に今もびちょびちょでぐっしょり濡れてるんです……だから、ダメです」


「びちょびちょか……僕は何も問題ないけど。むしろそっちの方がいいかも」

「……もう、友一君は本当に変態さんです。でも、今日は友一君感じたいので、このままギュッとしていきます」

 そう言った泉美の柔らかい感触が、さらに伝わってきて。


「わかった、でもまた手つなぎデートしようね?」


「はい、その……もうちょっと涼しくなったら、です」


「ふふ、それ、いつになるかな?」


「クリスマスとか……えへへ」

「クリスマスか……ふふふっ、楽しみ」

「えへへ、楽しみにしといてください……ふふふっ」

 腕を組んだまま、僕たちは学校を出て、初めてのデートへ向かった。



 ☆


「へー、こんなところあるんだ」


「はい、結構穴場だけど、いいところですよ。ちっちゃいように見えて、奥行き結構あります」

 泉美と腕を組んで、なんだかビル街の細い道を歩いていると、小さくて、どこか懐かしさを感じるような黄色い屋根の雑貨屋さんに案内された。


 僕、結構この町住んでるけど、この店知らなかったな。

 ていうか裏路地にあまり入ったことなかった気がする。


「それじゃあ、ここでプレゼント決めましょう。ここには何でもあるから、心配はしなくて大丈夫なはずです」


「わかった、お互いにプレゼントしたいもの選ぼうね。それじゃあ、ちょっとの間、別行動ってことで!」

「はい、それじゃあ、もうちょっとチャージしてから行きます!」

「そうしましょうか!」


 しばらく、ギュッとした後、別行動で、その雑貨屋さんに入る。


 泉美の言っていた通りに、雑貨屋さんは見た目以上にかなり広くて、結構いろいろなものが置いてある感じのTHE雑貨屋って感じのお店だった。


 イルカのマグカップとか、シャチのマグカップとか……このお店、マグカップの品ぞろえがやけに豊富だね。


 でも、泉美には、学校にも持っていけるようなものをプレゼントしたいし……うーん、どうしようか?


 色々商品を吟味していると、反対側でプレゼントを選んでいる泉美と目が合う。

 笑顔で手を振りあって、サプライズで渡せるように、コソコソ探すのを再開する。


 ……確か、泉美はハリネズミが好き、って言ってた気がする。

 図書委員会になって、初めて薦めてくれた本も、確か主人公のハリネズミ君が財宝を探して大冒険する本格冒険小説だった覚えがあるし。


 だから、そうだな……よし、ハリネズミのキーホルダーを買おう。

 このお店の品ぞろえなら多分売っているだろうし、それにしよう。


 そう思って、キーホルダーの売っている場所に向かう。


 犬や猫みたいなメジャーなキャラがやっぱり多かったけど、ちょっと小さなスペースに、可愛いハリネズミのキーホルダーがあった。


 可愛くデフォルメされた、はりはりで可愛いハリネズミのキーホルダー。

 よし、これなら泉美も喜んでくれるだろう。


 キーホルダーを持って、レジの方へ向かう。


 プレゼント舗装込みで1400円と、結構いい値段がしたけど、でもこれくらいプレゼントと考えたら安いものだね! 

 ふふっ、どんな感じで喜んでくれるかな、今から楽しみ!



 ホクホクした気持ちで、外で泉美を待っていると「お待たせしました!」と可愛く元気よく、泉美が大きな袋を持って出てきた。


「えへへ、友一君、待ちましたか?」

「ううん、全然待ってないよ。それじゃあ、交換しよっか。どこで交換する?」


「えっと、その、この近くにちっちゃな公園があるので、そこで交換しましょう! そこなら安心です」

「ふふ、安心って何が? よし、そこ行こっか」

 再び腕を取って、泉美の案内で、その公園とやらに向かう。


「にへへ、楽しみにしておいてくださいね……えへへ」

 ニヤニヤ笑いながら僕の方を見上げてくる泉美に、僕も「楽しみにしててね」と笑顔を送った。





《あとがき》

 モズスーパーフレアのロケットスタートが好きでした。

 ハナを切って、ものすごい高速ラップを刻んで、内をついて粘るあなたのレースが好きでした。


 今年の高松宮記念はレシステンシアがハナを切って少し寂しくなりましたが、タイムを見てあなたがいるようで少し嬉しくなりました。(まだ高松宮記念の話してる人)


 今日も少し長くなったので、2本に分割します。

 次の話は10時ごろになるかと思います。


 感想などいただけると、でんでら喜びます。







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