第30話 2000年
当たり前だが2000年はいまから22年前、「十年一昔」であるなら二昔以上前の話なのだが、虫けらの脳はもう老化しているので、ほんのついこの間のような気がしてしまう。なのでもはや「思い出」の範疇には入らない。懐かしさを感じない、ただの「記憶」だ。
この年のテレビアニメの新作は70本ほど。前年より3割減といったところか。とは言え、衛星放送でいろんなアニメが楽しめる環境が整いつつあったこの時代に、新番組の本数減少が特筆すべきことであるとも思えない。実際、翌年からはそんなことなど知らない風にテレビアニメの本数は増えて行く。話題作をピックアップするだけでも一苦労するまでに。
そんな訳で次回からは毎年の記憶ではなく、数年まとめて書いて行く。それでも自分が観た作品だけ取り上げるしかなくなるだろう。ただの記憶は思い出補正がないので、あまり強烈な印象がないのだ。もちろんそうは言っても、数年に一度は物凄い印象を残す作品が現われるのだけれど。
さて2000年、WOWOWはまだ元気だ。「風まかせ月影蘭」「OH!スーパーミルクチャン」「銀装騎攻オーディアン」「BOYS BE…」「妖しのセレス」「ゲートキーパーズ」「STRANGE DAWN」「HAND MAID メイ」「VANDREAD」「グラビテーション」「闇の末裔」「星界の戦旗」「BRIGADOON まりんとメラン」「
衛星放送でアニメが楽しめる環境が整いつつあった、とは書いたものの、2000年当時に衛星放送アンテナが設置できるのは、それなりに裕福な家庭だったように思う。アンテナを設置しても視聴はタダではないし、いまみたいに光回線を引けばネットもテレビも全部観られるなんて時代ではないから、視聴者数だってそんなに稼げなかったはずだ。番組を制作する絶対数が少ないから、という要素はあるにせよ、このWOWOWの予算の潤沢さはどこから来たのだろうな。その辺の事情はまったく知らない。
なお上記のアニメ作品で観たことがあるのはNieA_7だけだと思う。淡々としたアニメだった。セカイ系かどうか考察できるほど熱心に観た記憶はないのだが、この時代らしい空気感の作品だったように思う。
他にキッズステーションで「人造人間キカイダー THE ANIMATION」が放送されたのもこの年。これは特撮のアニメ化ではなく、石ノ森章太郎氏の原作漫画をアニメ化したもの。非常に悲しい物語となっている。かなり後になってネットで観たように思うのだが、詳細な記憶は残っていない。
地上波では「犬夜叉」が始まっている。テレビ東京版の「遊☆戯☆王デュエルモンスターズ」や、「とっとこハム太郎」「サクラ大戦」「幻想魔伝 最遊記」「ラブひな」「ブギーポップは笑わない Boogiepop Phantom」「タイムボカン2000 怪盗きらめきマン」「勝負師伝説 哲也」「GEAR戦士電童」などが放映された年だが、どれもチラチラ観ていただけだな。腰を据えてしっかり観た作品はない。
あと、まったく観ていないのだが、観られる環境だったら観たかったなあ、と後で思ったのがNHKのBSで放送された「機巧奇傳ヒヲウ戦記」だ。かなり後にこの後番組「学園戦記ムリョウ」(2001年)にハマったので、前作も観たいのに機会がいままでない。まあ、こういうのも巡り合わせなのかも知れない。
この年OVAは「フリクリ」「真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ」「勇者王ガオガイガーFINAL」「メーテルレジェンド」などがあり、ちょっと元気だったようなのだが、個人的には「からくりの君」を推しておきたい。映像化に恵まれない(と虫けらが思っている)藤田和日郎氏のアニメ化作品の中で、これはかなりよくできていたと記憶している。絵はしっかり動き、物語も変に端折っていない。確かテレビで放送されたことがあったはず。
2000年のアニメ映画は「ドラえもん のび太の太陽王伝説」「それいけ!アンパンマン 人魚姫のなみだ」「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル」「名探偵コナン 瞳の中の暗殺者」「劇場版ポケットモンスター 結晶塔の帝王 ENTEI」といったシリーズ作の中に、「ONE PIECE」が加わった。
他に、少しマニアックになるのかも知れないが「人狼 JIN-ROH」「BLOOD THE LAST VAMPIRE」もこの年である。BLOODは後の「BLOOD+」(2005年)や「BLOOD-C」(2011年)のベースとなる作品だが、これ自体には物語らしい物語がない実験的なアニメだ。観ても面白いと思うようなモノではない。面白くないのではなく、最初からエンターテインメント作品として作られていない。こんな雰囲気のアニメが作れますよ、というプロモーションビデオみたいな感じである。人狼は個人的にかなり好きな映画。暗い物語が苦手な人には向いていないが。
しかし、この年のアニメ映画を1本選ぶとすれば、虫けら的には「バンパイアハンターD」だろう。これは劇場まで足を運んだ。美麗な男たちが戦いを繰り広げる、と言うと現代ではどうしても腐女子受けを狙っているかのように捉えられるだろうが、実際にこの映画を観てそんな印象はまず抱かないと思う。いやあ凄い。よくこの絵をあれほど激しく動かせたものだと、まずはそこに驚嘆する。物語も菊地秀行氏の原作のエッセンスを上手く取り入れ、これといった破綻も見せずに綺麗にまとまっている。まあ劇場用作品なので、音量をかなり上げないとセリフが聞き取りにくいとかいう問題はあるようだが、そういったマイナスを考慮しても、ただただ凄い映画だという感想しかない。廉価版のBlu-rayが出たら欲しいところなのだが、DVDしかない模様。
アニメ以外の映画には、「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」「バトル・ロワイヤル」「グラディエーター」「チャーリーズ・エンジェル」「ファイナル・デスティネーション」などがあった。
そして2000年の特撮。従来からのシリーズ物はスーパー戦隊シリーズの「未来戦隊タイムレンジャー」だけになってしまった。だがそこに真新しい仮面ライダーが並び立つ。「仮面ライダークウガ」である。
実のところ、虫けらはクウガは観ていない。この時代、土曜日曜といった世間の休んでいる日はたいてい職場にいたので、日曜朝の特撮に目を通す余裕などなかった。なのにクウガの存在は知っていた。ネットのあちこちで「クウガすげえ」みたいな書き込みを見かけたからだ。しかし特撮から距離を置いてもうかなり経つ。何とかビデオに撮ってまで観ようという意識にはどうしてもならなかった。
もっともそれはクウガに限ったことではない。虫けらがある程度ちゃんと観た平成ライダーは「仮面ライダー555」(2003年)だけだ。あ、「仮面ライダーアマゾンズ」(2016年)を入れてもいいのならこの2本だな。ビデオ合成と言えばいいのか、あの綺麗すぎる画面に慣れるのがなかなか難しかった。虫けらはフィルム世代である。どちらが良い悪いではなく、頭の中に刷り込まれた情報量を比べると圧倒的にフィルムの映像の方が多いのだ。こればっかりはどうしようもなかった。
しかしそんな虫けらの葛藤などまったく関係なく、クウガは人気作となり、「仮面ライダーアギト」へとつながる。このアギトも人気を博し、平成の仮面ライダーはシリーズとして動き出した。あとはウルトラマンの再開を待つばかり。
この年の特撮はあと1本、深夜枠で月1放送という変わり種「鉄甲機ミカヅキ」もあった。これ観たかったのだが、当時は月1回の放送というのを知らなかったため、新聞のテレビ欄を探してみてもミカヅキの名前が見当たらない、でも忘れた頃に放送している、が繰り返された。なので録画もできなかったことしか記憶がない。
そんなこんなで20世紀は終わり、夢の未来、21世紀がやってきた。かつての鉄腕アトムは21世紀の物語だったし、ドラえもんは21世紀の猫型ロボットだったのだが、それももう今は昔。新世紀がやって来ても虫けらの生活は変わらなかった。ピカピカの全身タイツを身にまとった未来人はどこにも居ない。携帯電話はスマホになったが、やってることは相も変わらずインターネットである。本質的には変化していない。
しかしそれでもアニメや特撮を取り巻く環境は変わった。現代ではアニメはウェブ配信されるのが当然、テレビでアニメを観ることにこだわる人ももう少ないだろう。とは言え、そこまで一足飛びに変化した訳ではない。次回からはそんな徐々に変化する時代の作品を取り上げて行く。
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