第23話 1993年

 9月に藤子・F・不二雄氏が亡くなるこの年、氏の作品の新作アニメは「ポコニャン」だけであった。とは言っても「ドラえもん」も「キテレツ大百科」も続いているのに、寂しいというのもおかしかろう。


 ただこの年の新作テレビアニメは40本を割り込んでいる。3年後にはグンと増えるのだが、そんなことは予想だにしていなかったこの頃の虫けらは、勝手に時代の終わりを感じていたように思う。


 この年に放送開始となり、現代まで続いている作品が1本ある。NHKの「忍たま乱太郎」だ。もちろん当時から存在は知っていたが、虫けらは観ていない。いまだに観ていない。まあこればかりは趣味なので仕方ないのだが。


 他にこの年のアニメで話題となったのは、漫画原作なら「SLAM DUNK」「ジャングルの王者 ターちゃん」「GSゴーストスイーパー美神」「剣勇伝説YAIBA」「蒼き伝説 シュート!」など。小説原作で「無責任艦長タイラー」もあった。


 名作劇場は「若草物語 ナンとジョー先生」。「楽しいウイロータウン」も児童文学原作である。


 巨大ロボットアニメのシリーズは、勇者シリーズの「勇者特急マイトガイン」、エルドランシリーズの「熱血最強ゴウザウラー」、そしてガンダムシリーズの「機動戦士Vガンダム」が放送されている。どれも観ていない。当時迷走中の虫けらは、「ガンダムとかもうええわ」みたいな心情だった模様。


 この年のテレビアニメを代表する作品としては、これも一応巨大ロボットアニメと言っていいのだろう、「疾風!アイアンリーガー」を挙げておきたい。熱い。暑苦しいほど熱い。プレッシャーを感じるまでの熱気を求めているのなら、オススメの作品である。ただ、個人的にOP主題歌の歌詞「限りない過ちを打ち砕く」の部分が大嫌いだ。「終わりない」「尽きない」ならわかるが、「限りない」ってこういう場合使うのか。別に言葉の使い方として間違っていると言いたい訳ではない。そこまで日本語に詳しくはないのだが、感覚的にどうしても許せないのである。面白いアニメなのは間違いない。


 1993年の劇場用アニメ映画は、ドラえもん映画「ドラえもん のび太とブリキの迷宮」、アンパンマン映画「それいけ!アンパンマン 恐竜ノッシーの大冒険」、クレヨンしんちゃん映画の第1作「クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王」、ベストセラー小説の映画化「Coo 遠い海から来たクー」、そしてことあるごとに「これパトレイバーじゃなくても良かったよね」と言われ続けている「機動警察パトレイバー2 the Movie」などが公開された。パトレイバー2は映画としては疑いようもなく傑作なのだがな。


 1993年に公開されたアニメ以外の映画は「仮面ライダーZO」「ゴジラVSメカゴジラ」「ソナチネ」「ゲンセンカン主人」「ジュラシック・パーク」「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」「アダムス・ファミリー2」「シンドラーのリスト」などがある。


 この年のOVAは、漫画原作としては「人魚の傷」「ぼくの地球を守って」「ああっ女神さまっ」「銃夢」「ジョジョの奇妙な冒険」「ザ・コクピット」「代紋TAKE2」「難波金融伝・ミナミの帝王」「ブラック・ジャック」「特捜戦車隊ドミニオン」「砂の薔薇 雪の黙示禄」などがあった。


 オリジナル作品は、シリーズの三悪人が勢揃いの「タイムボカン王道復古」、テレビシリーズの名ばかりの続編「超時空世紀オーガス02」「超音戦士ボーグマン2 -新世紀2058-」など。他にも何本かオリジナル作品はあるのだが、この時期の作品が話題になった記憶はない。OVAに限らず、オリジナル作品が話題になるのは、たいていブームの最初の方だけだ。物珍しさもあれば、企画する側も力が入っている。ブームの後半になると、どうしても二番煎じとルーティンワークが目立ってしまって客は離れて行く。余程とんでもないオリジナリティが発揮できれば別なのだが。


 1993年の特撮は、不思議コメディシリーズ最終作「有言実行三姉妹 シュシュトリアン」、メタルヒーローシリーズは「特捜ロボ ジャンパーソン」、スーパー戦隊シリーズの「五星戦隊ダイレンジャー」、そして久しぶりの円谷プロ作品「電光超人グリッドマン」が始まっている。


 当時の虫けらは特撮から離れて久しく、もう月刊OUTも読んでいなかった。会社勤めをしていたこともあり、とてもテレビなど積極的に観る気分にならなかったし、実際観ていなかったはずだ。なのにグリッドマンの存在は知っていた。相応の衝撃がこの時代の特撮界隈にあったのは間違いなかろう。後に「SSSS.GRIDMAN」(2018年)のアニメが作られたのは、円谷プロにウルトラマンのアニメ化の企画を持って行ったものの難色を示され「ウルトラマン以外なら」と言われたのが切っ掛けであるらしいが、おそらくそれだけではあるまい。


 それなりに話題作があり、次世代への萌芽も見受けられる1993年だが、虫けら個人の印象としては言葉は悪いが「谷間の年」である。好意的に捉えるなら、この後大きくジャンプをするために深くかがんだ年であるとも言える。この傾向は翌1994年まで続く。

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