第24話 1994年

 アニメ界隈で大きな話題になった印象はないのだが、ゲーム界隈ではどうだったのだろう。この年、格闘ゲームを原作とする「ストリートファイターⅡ MOVIE」と「餓狼伝説 -THE MOTION PICTURE-」が劇場公開されている。虫けらは格闘ゲームを基本やったことがないので思い入れも興味もまったくないのだが、それでもタイトルを知っているところを見ると凄いゲームだったのだろう。両作品とも「ハイスコアガール」に出てきたはずだ。


 この年の劇場用アニメ映画は、ドラえもん映画の「ドラえもん のび太と夢幻三銃士」、アンパンマン映画は「それいけ!アンパンマン リリカル☆マジカル魔法の学校」、クレヨンしんちゃんが「クレヨンしんちゃん ブリブリ王国の秘宝」、ジブリ作品は「平成狸合戦ぽんぽこ」、あとディズニーの「ライオンキング」などが公開されている。


 アニメ以外の劇場映画は、「仮面ライダーJ」「ゴジラVSスペースゴジラ」「ゼイラム2」「四十七人の刺客」「忠臣蔵外伝 四谷怪談」「スターゲイト」「ショーシャンクの空に」「クロウ/飛翔伝説」「スタートレック ジェネレーションズ」、そしてジャン=クロード・ヴァン・ダム氏主演の「ストリートファイター」などがある。実写映画の方もストリートファイターⅡが原作となっている。


 仮面ライダーJは巨大化ライダーだ。それ以外が話題にならない作品とも言える。未見ではあるが、面白いという話は聞いたことがない。雨宮慶太監督の作品なので、おそらくクセは強いだろうと思うのだが。仮面ライダー作品として成功したとは言い難いかも知れないものの、ここから「仮面ライダークウガ」(2000年)の登場まであと6年、カウントダウンは始まっている。


 1994年の特撮はメタルヒーローシリーズが「ブルースワット」、スーパー戦隊シリーズが「忍者戦隊カクレンジャー」だった。円谷プロ作品は、レギュラーシリーズはなかったものの、特別番組として3月に「ウルトラセブン 太陽エネルギー作戦」、そして10月に「ウルトラセブン 地球星人の大地」が放送されている。こちらもウルトラシリーズの再開までもうすぐだ。


 1994年のOVAは相変わらず「GATCHAMAN」「新・キューティーハニー」などリメイク物、「装甲騎兵ボトムズ 赫奕かくやくたる異端」「宇宙の騎士テッカマンブレードII」「疾風!アイアンリーガー 銀光の旗の下に」といったテレビ番組の続編、「マクロスプラス」「ダーティペア FLASH」など有名作の派生作品、あとは「グラップラー刃牙」「マップス」「鬼切丸」といった有名漫画を原作とした作品など、ネームバリューに頼った物が大半を占めていた。


 しかしこの年、「天地無用! 魎皇鬼りょうおうき」の第2期が発売開始されている。第1期が1992年にオリジナル作品として登場したこれは、じわじわと話題となり人気が広まっていた。一部では「うる星やつらみたいなもの」といった陰口も聞かれたように思うものの、このジャンルには需要と渇望があったのだろう、翌1995年にはテレビシリーズが放送開始となる。従来のOVAとは逆パターンである。


 1994年のテレビアニメは、映画の動きとも連動しているのだろうか、格闘ゲーム原作の「SAMURAI SPIRITS 〜破天降魔の章〜」がテレフィーチャーで放送されている。世間がそれだけ格闘ゲームブームであったということでもあり、同時にイメージがかぶってしまうのは、アニメ界がそれだけ原作探しに苦慮していたということでもあろう。


 この年もテレビアニメは40本ほどなのだが、珍しく巨大ロボットアニメが多い。勇者シリーズの「勇者警察ジェイデッカー」、ガンダムシリーズ――でいいんだろう――「機動武闘伝Gガンダム」、大きなお友達という概念が垣間見える「覇王大系リューナイト」に「魔法騎士マジックナイトレイアース」、日本アニメーション制作の巨大ロボット物「ヤマトタケル」、俺の歌を聴け「マクロス7」、旧作からの改変が何とも言えない「レッドバロン」が放送されている。


 SF物としては「BLUE SEED」「銀河戦国群雄伝ライ」「D・N・A2 〜何処かで失くしたあいつのアイツ〜」があった。この「巨大ロボット」「SF」といった流れが翌1995年に1つの実を結ぶのは、単なる偶然ではないのかも知れない。


 名作劇場は「七つの海のティコ」。NHKのBS2では「ハックルベリー・フィン物語」「白雪姫の伝説」が放送されている。


 漫画原作では「とっても!ラッキーマン」「魔方陣グルグル」「赤ずきんチャチャ」「愛と勇気のピッグガール とんでぶーりん」「ママレード・ボーイ」などもあった。


 この年を代表するアニメは何だろう。物凄いベタで当たり前の結論しか出て来ないのだが、やはり「魔法騎士レイアース」か。個人的にメチャクチャ面白かった訳ではない。しかし製作者側の愛なのか、何かに対する意地なのかは知らんが、「一番物凄いアニメーションを見せてくれた」のはこの作品であると思う次第。


 1994年に見られた格闘ゲーム原作のアニメは、1995年にも登場する。だがそれが翌年のメインストリームになる訳でもない。「谷間」を経て「跳躍」する1995年には、とうとう「アレ」が生まれ出でる。アニメ界がこれまで順を追って1つずつ落としてきたダルマ落としを、いきなり金属バットでホームランにしてしまうかのような例の作品が。

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