第21話 1991年

 この年の新作OVAは80本(シリーズ)に上った。百花繚乱花盛り。全盛期を迎えたと言っていいだろう。「藤子・F・不二雄のSF短編シアター」シリーズでは、「おれ、夕子」「カンビュセスのくじ」「幸運児」「みどりの守り神」「絶滅の島」がリリースされている。


 他に中身を観たかどうかを別として、タイトルを知っている作品だけ挙げても、「炎の転校生」「人魚の森」「創竜伝」「魍魎戦記MADARA」「ウィザードリィ」「魔獣戦士ルナ・ヴァルガー」「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」「究極超人あ~る」「3×3 EYES」「DETONATORオーガン」「超人ロック 新世界大戦」「帝都物語」などなどがある。「けっこう仮面」まであった。人気漫画原作のOVAは他にもあるし、この年は出ていないようだが成人向けOVAは別カウントで存在する。レンタルビデオ店は大忙しだったろう。


 しかしOVAの人気もこの年がピークのようだ。21世紀に向かって段々と本数を減少させて行く。DVDビデオが販売され始めるのが1996年以降であるらしいが、それ以前からOVAは衰退を始めているのだ。考えていたほど儲からなかったのかも知れない。


 この年のテレビアニメは40本台、80年代と変わらないレベル。しかし1996年になるとこれが50本台となり、1998年に90本、1999年には100本を超える。決して世の中がアニメブームに湧き立った訳ではないのだが、テレビで放送してDVDを販売するという手法に各アニメスタジオが一気に乗り換え、広まった結果なのではなかろうか。ちなみに民放各局がBSデジタル放送を開始したのが1998年である。チャンネル数が急増したことも一因だろう。


 さて1991年のテレビアニメの傾向としては、ネームバリューのある有名作品の続編が目立った。「魔法のプリンセス ミンキーモモ 夢を抱き締めて」「チエちゃん奮戦記 じゃりン子チエ」「キン肉マン キン肉星王位争奪戦」「シティーハンター'91」「ゲッターロボ號」、長いタイトルが多い。


 別段、続編が珍しい訳ではない。これ以前にも続編などたくさんあった。ただこれは虫けらの気のせいかも知れないのだが、たとえば「ヤマト2」や「Zガンダム」はファンからの強い要望があったように思う。一方、「ヤマト3」や「ガンダムZZ」を熱望していた声というのは、あまり虫けらの印象にはない。後者の作品は、いわゆる「大人の事情」が見え隠れするのだ。


 つまり「スポンサーやテレビ局を納得させられるだけのオリジナル作品の企画が出せなかったので過去作の続編を持ち出した」みたいな雰囲気が漂っているのである。この年の続編アニメにも、何となくその空気が感じられる気がしてしまう。もちろんこれは虫けらの個人的な感覚である。あるが、どうにも閉塞感を覚えてしまうのがこの時代のアニメなのだ。


 この年の名作劇場は「トラップ一家物語」。「おちゃめなふたご クレア学院物語」「わたしとわたし ふたりのロッテ」は、タイトルだけ印象に残っている。「アニメひみつの花園」は覚えていないなあ。藤子・F・不二雄アニメとしては「21エモン」。「横山光輝 三国志」もあった。


 勇者シリーズとしては「太陽の勇者ファイバード」、他に話題作と言えば「少年アシベ」「きんぎょ注意報!」「機甲警察メタルジャック」「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」「おれは直角」「おにいさまへ…」「ゲンジ通信あげだま」「炎の闘球児 ドッジ弾平」など。


 この年を代表するアニメは難しい。非常に難しい。「絶対無敵ライジンオー」か、「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」のどちらかだろう。ライジンオーは学校が変形するアイデアが素敵だと思った。こういう感心の仕方は「無敵ロボ トライダーG7」(1980年)以来かも知れない。新たにエルドランシリーズを立ち上げた功績も十分に高い。


 サイバーフォーミュラは好き嫌いだけで言えば嫌いなタイプのアニメである。しかし21世紀の現代になって、その先進性が再発見されている部分もある。無論、車がしゃべるというのは「ナイトライダー」(1982年)でお馴染みであり、驚くようなアイデアではないが、それを発展させてオリジナルのスポーツジャンルに落とし込んだのは見事と言えるだろう。このレベルまで設定を煮詰めるというのは本当に大変な作業なのだ。


 どうだろうなあ。この年を代表するとなると、うーん、難しいが、本当に僅差の僅差でサイバーフォーミュラかなあ。みなさんはどうお考えだろうか。


 1991年の劇場用アニメ映画は、ドラえもん映画として「ドラえもん のび太のドラビアンナイト」、アンパンマン映画として「それいけ!アンパンマン とべ!とべ!ちびごん」、ジブリ映画は「おもひでぽろぽろ」、ガンダム映画は「機動戦士ガンダムF91」、そして大友克洋氏原作でキャラデザが江口寿史氏、美術設定が今敏氏で北久保弘之氏が監督の「老人Z」も公開されている。「サイレントメビウス」と「アルスラーン戦記」の同時上映もあった。


 アニメ以外の映画としては「ゼイラム」「ゴジラVSキングギドラ」「ターミネーター2」「アダムス・ファミリー」「スター・トレックⅥ 未知の世界」などがあった年である。


 1991年の特撮は、不思議コメディシリーズの「不思議少女 ナイルなトトメス」、メタルヒーローシリーズは「特救指令ソルブレイン」、スーパー戦隊シリーズが「鳥人戦隊ジェットマン」であった。ジェットマンの最終回演出は、特撮界隈以外でも話題になったことを覚えている。松田優作氏は1989年に亡くなっているのだな、思ったほど時間が経っていない。とは言え、ドラマ「探偵物語」の最終回は1980年であるから、この時点で知らない子供は少なくなかったろう。インパクトは大きかったのではないか。


 このような感じで、アニメや特撮を観ながら(観る本数はガクッと下がったが)閉塞感に苛まれていたのが1991年の虫けらだったように思う。しかしそんな時代であっても、変化は生まれる。現代にまで繋がる1本の道筋が登場するのが翌年なのだが、虫けらがそれに気付くには、まだまだかなりの時間を要する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る