第20話 1990年
90年代初年にして平成2年のこの年、OVAでは「藤子・F・不二雄のSF短編シアター」シリーズが発売された。収録作品は「ひとりぼっちの宇宙戦争」「ニューイヤー星調査行」「ポストの中の明日」「ウルトラ・スーパー・デラックスマン」「ミノタウロスの皿」。それ以外にこの年のOVAで挙げるべき名前は「ロードス島戦記」くらいか。固定客向けには「冒険!イクサー3」とかあったが。
1990年の劇場アニメでは、ドラえもん映画として「ドラえもん のび太とアニマル惑星」、アンパンマン映画として「それいけ!アンパンマン ばいきんまんの逆襲」があった。それ以外にももちろんあるのだが、個人的に観てみたいなと思える作品名としては、菊地秀行氏原作の「風の名はアムネジア」だけである。うーん。
いや本当に、この年のアニメは個人的好みで言わせてもらえば、全体的にうーん、である。もちろんテレビアニメも例外ではない。巨大ロボットアニメは勇者シリーズ第1弾「勇者エクスカイザー」、ワタルシリーズの「魔神英雄伝ワタル2」、「NG騎士ラムネ&40」も始まった。
名作劇場は「私のあしながおじさん」。いまや国民的アニメとなった「ちびまる子ちゃん」が始まったのもこの年。NHKでは「ふしぎの海のナディア」や「ロビンフッドの大冒険」が放送されている。
成人の視聴者にターゲットを絞ったと思われる作品としては「三丁目の夕日」「滝田ゆう落語劇場」「八百八町表裏
あと、手塚アニメとして「三つ目がとおる」が放送されているのだが、手塚治虫氏は前年に逝去されているので、この作品にはタッチしていないはず。手塚アニメを観てみたいと思っている若い方がここを読んでいるのなら、まずこれから観始めるといいと思う。悪い意味での「手塚アニメ臭さ」が薄いので。「青いブリンク」とか、リメイク版の「ジャングル大帝」に氏がタッチしているかどうかは知らないが、敬遠しておいた方が良いかも知れない。
フォローする訳ではないが、この虫けらごときが手塚治虫氏の実績にケチを付けるつもりなど毛頭ない。氏が「漫画の神様」であるのを疑ったことなど、生まれてこの方一度もないのだ。その創作力と発想力は、没後30年以上経った現在でもなお燦然と輝く巨星である。ただアニメーションに関しては脳内をアップデートできないまま亡くなられてしまったように思う。手塚氏が亡くなった際、宮崎駿氏が「漫画は凄いが、アニメーションは認められない」的な内容の追悼文を出して、当時のアニメ雑誌では賛否両論が巻き起こったが、いまなら宮崎氏の言いたかったことも理解できる気がする。
さてここまで読んで、首をかしげている人もいるかも知れない。「ナディアがあってエクスカイザーがあって、ワタルもラムネもちびまる子ちゃんもあって、何が不満なのか」と。うん、確かにそれら作品は人気があった。否定するつもりはまったくない。アニメとして面白かったのだろう。でもな。
この1990年を思い出して、いま虫けらの印象に残っている作品名はと言えば、「キャッ党忍伝てやんでえ」「からくり剣豪伝ムサシロード」「江戸っ子ボーイ がってん太助」である。どれも知らない、という声が聞こえてきそうであるが、別にマイナーでマニアックな作品を選んだ訳ではなく、本当にこれしか印象にないのだ。それも、「メチャクチャ面白かった」という印象ではない。「こんなもんかなあ」という印象である。面白くなかった訳ではないが、かと言って毎週楽しみにしていた訳でもなかった。
しかし実際に32年後の現在、虫けらの心に微かな記憶として刻まれているのは、ナディアでもエクスカイザーでもない。もちろん年齢的な問題もあるのだろうし、放送時間と生活パターンが合わなかったのかも知れない。ただこの90年代を通して、虫けらは「面白いアニメって何だ」と悩み続けたような気がする。もしかしたらアニメ業界も悩んでいたのだろうか。
1990年の特撮は、不思議コメディシリーズの「美少女仮面ポワトリン」、メタルヒーローシリーズの「特警ウインスペクター」、スーパー戦隊シリーズの「地球戦隊ファイブマン」である。全部東映。たまに東宝が挟まったりするのだが、基本的にもう随分と長い間、東映しか特撮番組を作っていない。この状態はあと数年続く。ただしテレビではないが、この年劇場でオーストラリアのウルトラマン「ウルトラマン
他の映画としては「天と地と」「オペラ座の怪人」「ダイ・ハード2」「ゴッドファーザー PARTⅢ」「ゴースト/ニューヨークの幻」「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3」「シザーハンズ」「グレムリン2 新・種・誕・生」などがあった年だった。
こんな調子で始まった1990年代。虫けらはしばらくの間、面白さを求めて迷走することになる。
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