第38話 過去の真実

 フレイム王国の王コジー・フレイム、女王エリー・フレイム、大臣ライ・クルー。この三人が犯した罪。それは、アクア王国の前大臣マーク・スタンを毒殺し、戦争を招いたこと。

 資料には写真も貼られていた。当時のマークは三十歳。栗色の髪は短く、縮れて癖毛になっている。紫の瞳はしっかりとカメラを見据えていた。厳格そうな表情からは、優しさも読み取れる。

 戦争が始まったのは十五年前。フレイム王国はアクア王国よりも文明、技術の発展において、大きく劣っていた。アクア王国ばかりが発展すれば、いつかフレイム王国を支配下に置くのではないか。三人は焦りを感じていた。

 アクア王国の文明や技術の発展を食い止めるにはどうするべきか、対策を立てるために話し合った。そこで思いついたのが、発展に大きく貢献している人物を殺すこと。それも自殺に見せかけて、自分達が犯人だと気づかれないように。

 これほど脅威に感じていた発展は、当時の大臣マーク・スタンによるものだった。マークは研究熱心で、常に新しい文明や技術を生み出していた。三人の標的は、当然このマーク・スタンである。三人は即効性のある毒を考案した。それが、アクア王国で売られている三種類の薬を混ぜるというもの。三人はそれとなくマークに毒を盛り、殺すことに成功した。

 しかし、毒を盛ってマークを殺したことが、アクア王国の三人に見抜かれてしまう。アクア王国の王ダビィ・アクア、女王ミネルヴァ・アクア、マークの前大臣イレーナ・スノー。マークの死の理由や毒の作り方などを調べると、フレイム王国まで問い詰めに行った。フレイム王国側がそれを認めるはずもない。結果、最悪の事態となった。戦争で、武力によって、決着をつけようとしたのだ。戦争が始まった本当の理由を知る者はごく少数。国民には本当の理由を伝えていないからだ。

 戦争は、文明・技術面が発展したアクア王国の勝利に終わった。皮肉なことに、マーク大臣を失ったアクア王国は、戦前の勢いで文明や技術が発展することはなかった。

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