マイヒーロー=マイヴィラン

水曜

第1話

 私は正義の味方カクヨムマン。

 表向きは普通の人間だが、有事の際にはパワードスーツに身を包み悪の怪人と戦うSSS級のヒーローだ。

「ふう。今日もギリギリ勝てたな」

 先程も悪の怪人と一線交えてきた。

 勝利の喜びに浸りながらも変身を解く。すると私は大切なものを失くしているいことに気づいた。

「まずい。ヒーローライセンスがない!?」

 どうやら先程の戦闘中に免許証を落としてしまったらしい。あれはヒーロー協会に正式なヒーローと認定された証だ。しかも紛失したら最後、二度と再発行もしてもらえない。

 必死になって心当たりを探す。

「あ! それ、私のです!!」

 見ず知らずの男性がライセンスを拾ってくれていたと知ったときは、本当に救われた思いだった。

 名もなき人々の善意。

 それこそが本当の正義の味方。

 誰だって他の誰かだけのヒーローになれる。

 敬意を込めて、私は私だけのヒーローに心から感謝を伝えた。

「ありがとうございます。あなたは、私のヒーローです」



 俺は悪の怪人シメキリガ―。

 表向きは普通の人間だが、有事の際にはパワードスーツに身を包み正義の味方と戦うSSS級のヴィランだ。

「ふう。今日もギリギリ負けたか」

 先程も正義の味方と一線交えてきた。

 敗北の悲しみに浸りながらも変身を解く。すると俺は道端に何か落ちているのを見つけた。

「これは……何かの免許証か?」

 仕方ない。匿名で交番にでも届けてやるかと、とりあえず拾う。落とし主はきっと困っていることだろう。

 悪の怪人といえど、武士の情けくらいはある。

「あ! それ、私のです!!」

 息を切らした美しい女性が必死になって走って来る。

 どこかで会ったことがあるような気がするその人物は、何やらひどく感動した面持ちで。ちょっとオーバーなくらい感謝を伝えてきた。

「ありがとうございます。あなたは、私のヒーローです」

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マイヒーロー=マイヴィラン 水曜 @MARUDOKA

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