11.どんなスキルでも獲得できる?
翌日。
ルークは再び火竜山へとやってきた。
ただし今回の目標は、クエスト報酬ではなかった。
「さぁ、どこからでもかかってこい!」
ルークはリザードマンを見つけると、無防備に両手を広げて胸を張った。
スキル<危機獲得>。
危機的状態で攻撃を受けると、そのスキルを獲得するという効果。
スキルを獲得できるスキルというのは、明らかに破格の効果だ。
実際、ルークはこのスキルによって最上位の技<ドラゴンブレス>を身に着けている。
問題は、この<危機獲得>の効果が、どれくらい「危機的」状況ならば発動するかだ。
それを調べるために、ルークはモンスターに「攻撃され」に来たのである。
「グルゥゥ!!」
リザードマンは、ルークに躊躇なくとびかかってくる。
その鋭い爪を備えた右手が、炎をまといながらルークに襲い掛かってくる。
だがルークは防御するどころか、自分からその攻撃に当たりにいった。
「うッ!」
結界(ライフ)が削られ、わずかな痛みがある。
そこにリザードマンはさらにファイヤーボールを叩き込んでくる。
これもルークにクリーンヒット。
「くッ!」
ガラスが割れたような音がして、結界が削り取られた。
攻撃を受けて、着実にルークの経験値は蓄積していく。
だが、<危機獲得>はまだ発動しない。
(まだ結界は半分以上残っている……やっぱりこれじゃ発動しないか)
ルークはさらに攻撃を受け続ける。
当然、結界が薄くなればなるほど、感じる痛みも大きくなっていく。
「――――ッ!!!!!!!」
その痛みをひたすらよろこ……耐える。
その後、結界(ライフ)はどんどん削られていき、残り1/10を切った。
――だが、それでも<危機獲得>は発動しない。
「……ダメか」
そこでルークはこれ以上は危険だと判断し、反撃に転じる。
「――ハッ!!」
渾身の一振りを放つと、たった一撃でリザードマンは斬り伏せられた。
「グァアッ!」
結界が薄くなればなるほど効果が高まる<闘争本能>によるステータスアップのおかげで、Cランクレベルのモンスターであれば一撃で倒せるようになっていた。
「やっぱり、普通に戦ってるだけじゃスキルは手に入らないか」
スキル<闘争本能>のスキルはまさしく破格性能だ。
しかし、結界(ライフ)が減った状態で攻撃を受けたからといって、必ずスキルが手に入るというわけではないようだった。
「やっぱり、本当にピンチに陥らないと発動しないんだな……」
ルークはスキルの発動条件をそう理解した。
そして、それに気が付き、すこし落胆すると同時に――
「ギリギリの戦いをしないといけないのか、痛いだろうな」
強敵と戦う自分を想像する。
そして痛みに耐えながら、戦う姿を想像して、興奮するのであった。
ドM勇者は今日も幸せであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます