6.お姉さん、成果に驚く。


 それからルークは、モンスターと戦いながら森を抜けだした。

 <闘争本能>によって上がったステータスのおかげで、ルークは森の中で敵なし状態であった。

 ただ倒すだけではなく、適度に攻撃を受けつつ、経験値を稼ぐ余裕まであった。


「……兄上には感謝しないと」


 森を出たところで、ルークは思わずそうつぶやいた。


 ルードが森の奥に置き去りにしてくれなければ、2つのユニークスキルに目覚めることはなかったかもしれない。やはり自分を想っての行動だったのだとルークは得心していた。


「よし、ギルドに帰ろう……」

 

 腰の革袋は、モンスターから回収した魔石でいっぱいになっていた。

 これだけの量があれば、しばらく生きていくのには困らないだろう。


 †


 ギルドの受付に採集した魔石を並べると、受付のお姉さんは驚いて声を上げた。


「こ、こんなにですか!?」


 彼女は受付嬢になって5年にもなるが、神託を受けたばかりの冒険者が、これほどの魔石を持ち帰ったことなど今まで一度もなかった。

 これほどの量を一人で持ち帰るのは、中堅どころの冒険者でも難しい。


「これを本当に一人で?」


「はい、一応」


 行きにルードが倒したモンスターから採集した魔石は、この中には入っていない。なので、成果は全てルークのものだった。


「この大きさは……トロールやオークも倒してますよね?」


「ええ、そうですね」


「駆け出しの冒険者が倒せるような相手じゃないのに……それも一人で……?」


 お姉さんは半信半疑という感じだった。

 だが、お姉さんの目から見て、ルークが嘘をついているようには見えなかった。

 だから、確信を持つために、お姉さんは思わずこんなことを聞く。


「あの、もう一度ステータスを確認してもよいですか?」


「ええ、もちろんです」


 ルークが承諾すると、お姉さんは他人のステータスを確認できる魔道具を取り出した。

 この道具があれば、レベルや経験値だけでなく、魔力、身体能力等の基本的なステータスもわかる。


「ええっと……って、ええ!! なんですかこのステータス!! レベル3くらいの力は余裕でありますよ!!」


 レベル1からレベル7まであるが、レベル3といえば、一般的には中堅冒険者とみなされる強さだ。冒険者として食いっぱぐれることはまずないくらいである。


 今日神託を受けたばかりであるルークが、それほどのステータスを持っているのは、通常ならありえないことだった。


「あ、でもそのステータスはスキルの力で上昇しているので……」


 ルークは一応その補足をする。

 だが、それでも異例なことに変わりはなかった。


「それはそれでとんでもないですよ……。スキルでレベル2つ分もステータスが上昇するなんて聞いたことないです」


「まぁ、そうかも……ですね」


 確かにルークの知識で言っても、<闘争本能>のスキル補正力は異常なレベルであった。



「これだけの強さがあれば、Cランクのライセンスは余裕で通りますよ。もちろんルークさんはまだレベル1なので審査は必要ですが……多分許可は下りると思います」


 お姉さんの言葉は、ルークにとってありがたいものだった。


 駆け出しのEランクライセンスでは、受注できる仕事も限られているが、Cランクライセンスがあれば、不便することはほとんどなくなる。


「Cランクライセンスがあると助かります。ぜひ申請させてください」


「もちろんです。こんなすごい人がいるなんて、一刻も早くギルドマスターにも伝えないと……」


(なにやら話が大きくなってるが……。まぁ期待してもらえるのはいいこと……なのかな?)


 と、少し考えて、ルークは上位のライセンスは、自分にとって必要なものだと気が付く。


(……トロールと戦っただけであの気持ちよさ……じゃない、良い修行だったのに、ドラゴンやミノタウロスと戦ったらさぞ……)


 と、より強敵から、強力な攻撃を受ける自分を想像したルークは身震いするのだった。

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