5.クラス<耐える者>の真価



 トロールとの決死の戦闘の中で身に着けた2つのスキル。


 <闘争本能>


 <身体学習>


 2つとも聞いたことがないスキルだった。

 ルークはステータスでその効果を確認する。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


スキル : <闘争本能>

結界が削られるほど、ステータスが上昇する。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 その説明を読んで、ルークはしっくりきた。


「どおりでいきなり強くなったと思った」


 トロールに攻撃を受けて、いきなり力がみなぎってきたのは、この<闘争本能>の力だったのだ。


 続いて、ルークはもう一つのスキルを確認する。

 そしてその能力の方が驚きが大きかった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


スキル : <身体学習>

ダメージを受けると、経験値を獲得する。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「ダメージで経験値!?」


 ルークはその規格外の性能に驚く。


 通常、経験値はモンスターや人間と戦い、倒すことでしか得られない。

 だが、このスキルがあれば、ダメージを受けるだけで経験値が獲得できるというのだ。

 これは直感的には、規格外のスキルに思えた。


 だが、問題はどれくらいの効率で経験値を得られるのかだ。


 トロールと、戦っている最中にこのスキルに目覚め、その後まだダメージを食らっていないので、経験値はまったく上がっていない。


「まぁ、すぐにわかるか……」


 森を出る道中でのまだモンスターとは遭遇するはずだ。その際にどれくらい経験値を稼げるかがわかる。


 ルークは外套のポケットからポーションを取り出してぐっと飲む。それにより、失われた結界(ライフ)が少しずつ回復していく。

 これなら、多少ダメージを受けても大丈夫だ。


「よし、行こう」


 ルークは森から抜けだすために、再び歩き始めた。


 †


 少し歩いていくと、今度はオーク3匹と遭遇した。


 敵が多勢とみるや、ルークはすぐに剣を引き抜き、先手必勝で斬りかかる。


「ハァァッ!!」


 気合いとともに、一閃。

 オークは一撃で息絶える。


 オークは決して弱いモンスターではない。

 そんな相手を一撃で倒せるほど、<闘争本能>のステータス上昇が優秀なのだ。


 続けざまに、ルークは隣のオークにも斬りかかる。こちらも瞬殺。


 と、ルークのその背後を、三匹目のオークが襲う。


 実のところ、ルークにはその攻撃を避ける余力があった。

 だが、あえて<身体学習>の性能を見極めるため、そのまま攻撃を食らう。


 オークの斧がルークを襲う。

 だが急所ははずしている上、そもそもステータスが上昇しているので、致命傷にはならない。


 そのままルークは反撃して、オークを斬り伏せた。


「ふぅ……」


 オークとの戦闘を終え、ルークは早速ステータスを確認した。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ステータス : ルーク・スプリングスティーン


レベル1(1/10,000)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「おお! ステータスが上がってる!!」


 ルークは声を声を上げた。


 それも、軽い攻撃を一撃受けただけで1経験値が入った。

 これはまったくもって悪くない上昇幅だ。


 一般的に、自分が比較的安全に倒せる程度の敵を倒しても、得られる経験値は5程度であることが多いから、それを考えると一撃攻撃を食らっただけで1経験値が得られるのはかなりお得だと言える。


 それによってルークは確信する。


 正体不明のクラス<耐える者>。


 その真価は、一言でいえば、「ダメージを受けるほど強くなる」ということなのだ――――





◇◇◇ルーク・スプリングスティーンの所持スキル


<苦難>

このスキルを持つ者は討伐によって経験値を得ることができない。


<闘争本能>

結界が削られるほど、ステータスが上昇する。


<身体学習>

ダメージを受けると、経験値を獲得する。

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