ドライフルーツメーカー

@ramia294

 ドライフルーツメーカー

 最初の失恋は、小学生でした。

 中学生の時も、高校大学のときも、社会人になっても、僕の失恋は、順調に増えていきました。

 失恋の経験は、ありますか?

 経験した人は、ご存じでしょう。

 失恋すると、心の中の失恋の樹。

 失恋のたびに、実をつけます。


 最初につけた実は、涙色。

 数を増やすたびに、濃く色づいていきます。

 つい最近も職場の女性に、失恋しました。

 僕の中の最も新しい果実。

 失恋の樹がつけたその実は、赤い色。

 まるで、心が血を流しているような赤い色でした。

 僕の心の失恋の樹。

 たわわに実った失恋の実。

 果実の重さで、大変そうです。

 枝が折れては困ります。

 失恋の果実。

 僕は、収穫することにしました。


 これは、中学からの帰り道。これは、高校の時の文化祭。

 失恋の実を収穫します。

 ひとつ、ひとつ、色も違えば形も違います。

 経験豊富な失恋に毎回泣くのは、果実の形が違うから?

 それとも、果実の色が違うから?

 失恋の樹の悲しい果実たち。 

 摘むたびにあの頃の思い出が、僕を泣かせます。

 涙が枯れてはいけません。

 急いで、収穫いたします。

 とてもたくさん収穫出来ました。

 全然、自慢になりません。


 果実の量が多すぎます。

 心が、少し窮屈です。

 そこで、僕は考えました。


 『失恋の果実、ドライフルーツにしよう』


 僕の失恋。

 ドライフルーツメーカーに、ひとつ、ひとつ、並べていきました。

 ドライフルーツに変わった僕の失恋。

 おかげで、僕の心の奥底に、思い出として、仕舞われました。

 これで、一人の夜も安心です。

 生暖かい夜の風に、ふいに混じる香り。

 思い出すあの頃の痛み。

 そんな悲しい夜ともサヨナラです。

 僕の涙も長い出番待ち。

 最近は、いつも居眠り。


 居眠りしている僕の猫。

 最近猫が、家族になりました。

 気ままな可愛い僕の天使。

 昼間は呼んでも来ないのに、夜は僕の上で眠ります。

 気ままで可愛い僕の天使。

 器用に心のドアを開け、夢の中まで侵入します。

 心の奥底のドライフルーツ。

 爪で引っ掛け取り出します。

 しばらくぶりの涙の出番。

 涙は張り切り、枕を濡らします。

 

 忘れていたのに、困ったものだと、腫れている眼をこすります。

 猫の取り出したドライフルーツ。

 僕の失恋の果実。

 せっかくなので、ひと齧り。

 あの頃の痛みが蘇り、僕の涙は、またまた、出番。

 泣いているだけでは、嫌なので。

 僕は書いてみました。

 失恋物語。

 こんな失恋どうでしょう、あんな失恋どうでしょう。

 失恋の種は、つきません。

 なにしろ、経験豊富です。

 今夜は、どんな失恋を。

 僕の天使は、取り出すのでしょう。

 気ままな僕の天使。

 取り出すドライフルーツも、わがまま気ままに取り出します。

 僕の失恋物語。

 全ては、僕の猫しだい。

 気ままな天使の爪しだい。


            終わり(=^・^=)


 


 

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