心はいつでも、猪突猛進

ゆりえる

空はいつだって、繋がっているのに......

 恋愛に奥手だった私、園内みおは、いつも、友人達との恋バナに付いて行けず取り残されていた。

 それが2年前、中2の時に、やっと私にも気になる存在が出来て、友人達にドキドキしながら、その事を打ち明けた。

 イケメンしか眼中に無い友人達には、私の意中の相手、土田そら君の良さが伝わらなかったらしい。


「えっ?」


「マジで?」


「澪の趣味、よく分かんない!」


 友人達の感想は思ったより辛辣だった。

 でも、私も逆の立場だったら、案外、友人達と同じような言葉を口にしていたのかも。

 同学年だけど、同じクラスになった事が無かったし、それまでは気にした事も無かったような男子だから。


 多分、あの時、あんな事が起こらなかったら、私は、ずっと土田君の存在を知らなずにいて、友人達と同じ高校へ進学して、今も恋愛オクテのまま、友人達の恋バナに耳が痛い状況だったかも知れない。


 あの日......

 下校時に私が忘れ物に気付いて、友達にゆっくり歩いて帰ってもらい、私1人、猛ダッシュで通学路を使わず、草木の生い茂る獣道を突き進んで行った。

 ふと気付いた時には、寒気がするほどの頭部の違和感。

 虫が大っ嫌いなのに、気付かずに頭からクモの巣に突っ込んでしまっていた。

 しかも、顔面の方にアシナガグモがブラブラとぶら下がっていた。

 その状態に耐えられなくて、絶叫しながら頭を振って、アシナガグモを振り払おうとした時、前方不注意で前から来た人と正面衝突。


 その相手こそ、私が目下、片想い中の土田そら君。

 

 ぶつかった私に対して、イヤな顔1つ見せなかっただけでなく、頭に引っかかっていたクモの巣まで、紳士的に取り払ってくれた。

 爽やかな笑顔まで見せてくれながら。


 土田君のその一挙一動に、心をガッシリと掴まれた私。

 あの瞬間から、土田君は私にとっては、ヒーロー!


 他の友人達のお眼鏡に合ってなかろうと、そんなの全く問題視しない!

 だって、土田君は、私だけのヒーローとなるべく出逢わされてしまった人だから!


 土田君に近付く為なら、私は、自分の許せる範囲内で何でもした。

 

 土田君の進学する高校は、私にとっては合格圏外だったけど、友人達との付き合いを断り続けて、猛勉強し出した。

 友人達全員と違う高校に進学して、高校では孤独だけど、登下校中の土田君の姿を見かけると接近して、情報収集をした。

 Twitterのアカウント名を知って、早速、フォローしてSNS上での接近から始めた。

 土田君が雲に興味が有るから、私も、気付くと空ばかり見上げるようになっていた。

 

 私が地道に接近作戦を実行していたのに、弟の那知は、バイト先で女装で土田君に接近していて、いつの間にか、土田君の心は、那知に向けられたり、別の女子と付き合い出したり、前途多難な感じだったけど......


 今では、SNSだけじゃなく、現実生活でも、少しずつ接近出来ているのを実感している!

 このまま邪魔が入らなかったら、きっと、土田君の方も、私だけのヒーローの自覚が芽生える日も遠く無いはず!


 趣味の空模様だけではなく、心もいつか土田君と繋がる日を夢見て、私は、今日も前進あるのみ!


         【 完 】


 ...... 拙作『空が繋がっていてくれるから』の主人公、澪の視点で、土田をヒーローに見立て、彼への想いを綴ってみました ......

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