第11話激突!矢天組VSタイガー
オレが家に帰ると、真理が慌てた様子でやってきた。
「ねえ、学戸の学校が廃校になるって話しを聞いたんだけど、本当なの?」
「ああ、水島先生から聞いたよ。」
「こんな急に決まるなんて・・・、来月から大丈夫かしら・・・?」
「母さん、学校がなくなるのイヤだよ。」
「岡部くん・・・、気持ちはわかるけど仕方ないことなのよ。最後の卒業式、がんばってきてね。」
卒業式・・・、そういえば後もう少しで卒業式が行われる。
突然つきつけられた現実で、とても卒業を祝う気分にはなれない・・・。
こんな気持ちで卒業式をむかえていいのか・・・?
そんなの絶対にいやだ・・・。
そもそも廃校の理由には、神宮校長と田中が関係している。あいつらは学校が失くなりそうだという時に、どこにひそんでいるのだ?
そう思うとイライラしてきた。
そして数時間後、東阪さんが家に帰って来た。
「東阪さん、何か田中と神宮校長についてわかった?」
「ああ、あいつらヤバいものを持っているようだ。」
「ヤバいものって何?」
「ヤクザだよ、田中の人間関係を調べてみてわかったんだ。田中の秘書で矢沢という男がいるけど、そいつは五十人の組員を従える『
「ヤクザだって・・・」
そんなおそろい集団が味方になっているなんて・・・、そしてオレは気づいた。
「もしかして菊乃たちが見た、派手な格好の怖い男たちって・・・。」
もう田中と神宮校長は、何かしようと動き出しているのか。
「もしそいつらが、オレたちの学校に来たら大変だ。何をされるかわからないぞ」
「そうだな。そしてその矢天組の組員が、春日井市立西小学校周辺でよく目撃されていることがわかった。田中は矢天組を使って、西小学校を廃校にしようとしているんだ。」
確かにヤクザに目をつけられたら、近寄りたくなくなる。そうやって廃校へと追い込む魂胆にちがいない。
「ねぇ、どうしたら矢天組を追い払うことができるかな?」
「相手はヤクザだからな、人員を集めればできるけど、ヤクザと戦うことはみんな嫌がるからなあ・・・」
「あっ、大島さんに頼れないかな?大島さんなら、たくさん人員を集められるよ。」
「なるほど、早速電話してみるよ。」
東阪さんは早速大島さんのところへ電話をかけた。
そして少し話すと、東阪さんから「大島さんが変わってほしいって」ということで、オレは電話に出た。
「もしもし、大島さん?」
「岡部くん、東阪さんからだいたいの話は聞いたよ。学校の周辺でヤクザらしき男が数名目撃されているそうだね、それなら私の仲間たちで学校の周りをパトロールしてみることにするよ。ついでにその男にも事情を聞いてみる。」
「ありがとう、大島さん。」
「例にはおよばないさ、きみは大貫さんと一緒にがんばってくれ。それじゃあ」
通話が切れた、とりあえずこれでひと安心だ。
オレはほっとすると、急にお腹がすいたので一階へおかしを取りに向かった。
三月二十二日、オレが登校していると二人の男がオレのところにやってきた。派手ながらのシャツに、髪を染めた頭、オレはとっさにヤクザだと身構えた。
「よお、朝から学校ご苦労だな。」
「な・・、一体なんですか?」
「ちょっと顔貸してくれよ、後で金をやるからよ。」
「いやです、学校があるので。」
「言うこときけよ、子どものくせに」
「そうだぞ、大人の言うこときくのがいい子なんだぜ?」
オレを追い詰める二人の男、このままだと何をされるかわからない。
オレが逃げようとすると、一人の髪の長い女性が現れた。
「あなたたち、小学生を相手に何をしているのですか?」
「あ?なんだこいつ?」
「さあ、早く学校へ行きなさい。ここは任せて。」
「カッコつけてんじゃねえぞ!」
男が女性になぐりかかってきた、女性はさっとよけると、男の腹にケリをいれた。
もだえる男を見て、もう一人はうろたえている。
「す・・・すごい!」
「何しているの、早く行きなさい。」
女性に言われて、オレはすぐに学校へ走り出した。
教室についたオレは、教科書を机にいれながら、さっきの女性について考えた。
「もしかして、大島さんの仲間かな・・?」
だとしたら、後で大島さんにお礼を言っておこう。
そう思っていた時、廊下がやけに騒がしくなった。のぞいてみると、みんなが校舎の窓から何かをのぞいている。
おれも気になってみんなのところへ行って、窓から下をのぞきこむと・・・
「大貫さん!?」
なんと校舎裏で大貫さんが五人の男たちに取り囲まれていた。しかもその内の三人は金属バットや木刀を持っている。
「お前らは何者だ?ここはお前らが入っていいとこじゃないだろ!?」
「ふん、ここはもうすぐ潰れるそうだな。どんなとこか、見にきたがひどいとこだな。」
「なんだと!?」
「こんなとこ、さっさと潰れてしまえばいいのにさ。あんたも定年過ぎた老いぼれだし、そろそろ辞めたほうがいいんじゃないのか?」
「なんだと!おれはここの用務員だぞ、おれが辞めたらだれが学校を整備するんだ?」
「わかってねぇなぁ・・・、この学校はもうすぐなくなるんだよ!!」
そして五人の男は一斉に大貫さんを襲った、大貫さんも抵抗しているが、五人が相手ではさすがに押さえ込まれてしまう。
ぼくは見てもたってもいられなくなり、校舎裏へと向かった。
「大貫さーん!」
オレは大声で大貫さんを呼んだ、しかし大貫さんは男たちに袋叩きにされて、返事ができない。
「大貫さーん!」
「おい、さっきからあのガキが叫んでいるぞ。一体何だ?」
「あっ、やばい・・・」
オレが気づいた時には、すでに二人の男がオレの目の前に来ていた。
「てめえ、なんで叫んだ?」
「岡部に・・・、手を出すな・・・」
大貫さんがボロボロの体で立ち上がった。
「ああ、お前こいつのこと、気に入っているのか?変わり者もいるんだな・・・」
男はそう言うと木刀をふりあげた。
「でも今は静かにしろ!」
やられる・・・、と思った時だった。男が「痛い!」と叫びながら木刀を落として倒れた。
「よし、ナイスヒット!」
「だれだ、お前は!?」
すると校門の前からパチンコをかまえている男性と、先ほどぼくを助けてくれたあの女性の人がいた。
「矢天組の連中ね、今すぐに立ち去らないと、痛い目を見るわよ。」
「なにぬかしているんだ、この女。やっちまえ!」
五人全員で二人へ襲いかかった、すると二人は攻撃をかろやかに避けると、なぐったりけったりして、あっという間に二人を倒した。
「て・・・てめえら何者だ!?」
「私たちは名古屋老若連合の者です、この件についてはすでに警察へ通報してあります。もう逃げられませんよ。」
「おのれ・・・、うぉー!」
やけくそになった男が女性になぐりかかってきた、しかし女性はなんと男の顔面に強烈なビンタをした。
「話を聞いていましたか?」
鋭い目付きで言う女性の姿に、オレも男も震え上がった。
そして男は観念したのか、その場に崩れ落ちた。
「大貫さん、大丈夫!?」
「ああ、だいぶやられてしまったけど、大丈夫だ。」
大貫さんは気張って言ったが、体がガクガクで立つのが一苦労だった。
「あなたが、大貫さんですか。とても立派でしたよ。」
「でもかなり酷いケガです、念のため救急車を呼んでおきました。」
そして大貫さんは、男性と女性の肩に支えられながら校舎の外へと向かい、救急車に乗せられていった。
学校に男たちが襲撃してから三時間後、ここは神宮校長がかくまわれているホワイトポットの部屋。
その部屋では神宮校長と矢沢が一緒に住んでいた。
「子どもたちを脅しながら、学校にプレッシャーをかける作戦。上手くいきますかね。」
「ああ、何の問題もないよ。こうしておけば、親はいづれあの学校に子どもを通わせづらくなり、反社会的なやつらに目をつけられた以上、学校は続けていられないさ。」
「そうですね、子どもたちには悪いけど、これも私の老後のためですから。」
「先生らしくない言葉ですね、神宮校長。」
「ふっ、子どもにやさしくしていられませんからね。」
神宮も矢沢もニヤリとしながら言った。
すると電話が鳴った、神宮校長は受話器を取って何かを話したあと、なんと青い顔で矢沢のところへやってきて、電話での内容を報告した。
「矢沢様、大変です!西小学校を襲撃していた五人が、全員警察に逮捕されました!」
「なんだと!?そんなばかな、先生たちには警察に通報しないように美野島が根回ししたはずだ!一体、だれが通報したんだ?」
「それが突然現れたスーツ姿の男女にやられてしまったようで、しかも子どもたちを脅していた連中からも、スーツ姿の人たちを見たとの目撃情報がありました。」
「スーツ姿の男女・・・、まさか!?」
「矢沢様、なにか心当たりがあるのですか?」
「そいつらは、名古屋老若連合だ。」
「一体、何者ですか?」
「秘密結社だが、警察も一目置くほどの力を持っている。ヤクザでも油断すると、やられてしまう相手だ。」
「そんな・・・、一体どうしたらいいんだ?」
神宮が慌てていると、また電話が鳴った。今度は矢沢が受話器を取った。
「はい、矢沢です。」
「おい、一体どうなっているのだ?お前の仲間が警察につかまっておるではないか!」
「申し訳ございません、田中様・・。じつは思わぬ厄介者が現れたもので・・」
矢沢は田中にこれまでのいきさつを話した。
「名古屋老若連合・・・、余計なことをしおって・・・。」
田中の歯ぎしりする音が受話器から聞こえた。
「田中様、いかがいたしましょう?」
「とにかく余計な行動はせず、そこで待機してろ」
田中は乱暴に電話を切った、あせっている様子が矢沢にもわかった。
「田中様はなんて・・・?」
「とにかく、余計なことはしないで待機しろということだ。」
神宮と矢沢はおとなしくすることにしたが、さっきまでの浮かれた気分はすっかり消えてしまった・・・。
その日の午後四時三十分、オレが帰宅すると大貫さんと大島さんとオレを助けてくれた女性がいた。
「大貫さん、ケガは大丈夫なの?」
「ああ、病院で検査してもらったが、どこも問題なかったよ。それとあの時助けてくれた彼女、友近さんというんだ。」
「友近さん、ありがとうございました。」
「いいのよ、お役に立ててよかったわ。」
「それと大島さんから聞いた話だが、美野島が警察に任意同行された。」
「教頭が!?どうして?」
「実はヤクザが襲撃してきたのに、学校が通報しなかったことを不審に思った警察が、先生たちに事情を聞いたところ、美野島が通報しないよう先生たちに根回ししていたことがわかったんだ。」
「そうか・・・、これであいつらが逮捕されたらいいね。」
「いや、まだあいつらは捕まらない。もっと決定的な証拠がなければ・・・」
大貫さんの真剣な表情に、オレはまだこの戦いは終わらないと思った。
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