第13話大逆襲

田中に捕らえられたオレと大貫と東阪さんは、公民館の倉庫に閉じ込められてしまった。

「そこに入っていろ、そして二度と出てくるなよ。」

田中はそう言うと、ドアを閉めてカギをかけてしまった。

オレたちは両手を縛られている、しかもオレたちのスマホは田中に取り上げられてしまった。

「さて、ここからどうします・・・?」

「おそらく、この後田中は逃げていることでしょう。そして今は、午後三時。公民館はあと二時間で閉館なので、それまでになんとか助けを呼ばないと・・・」

「そもそも、この状態ではまともに動くことができない。一体、どうしたら・・・?」

オレは必死に考えたが、アイデアが浮かばない・・・。

これは完全にもうダメだ、どうあがいてもここから出られない。

こんなことは、初めてだ・・・。オレは本当の危機におちいってしまったのだ。

「くそっ、どうかこのロープさえ外せれば・・・」

「外してあげるよ。」

オレが東阪さんの方を見ると、東阪さんはすでにロープを外すことができていた。

「東阪さん!?どうして外せたの?」

「なあに、ちょっとした器用なことだよ。」

東阪さんはオレと大貫さんのロープも外してくれた。

「ありがとう、東阪さん!」

「だが、問題はまだある。ここからどう脱出するかだ・・・」

倉庫には窓がなく、たった一つの出入口であるドアには鍵がかけられている。

倉庫の中は、何が入っているのかわからないダンボールがたくさん置かれている。

「とりあえず、外から開けてもらうしかない。とりあえず、大きな音をだしてみよう。」

オレは倉庫の中にあったダンボールを鳴らし、大貫さんと東阪さんはドアをたたいて助けを呼んだ。

しかし助けはこない・・・。

「くそっ・・・、ここで万事休すか。」

今度こそもうダメだと思った時だ、ドアからガチャという音がした。

オレと大貫さんと東阪さんがドアの方を見ると、なんと主催者の人がドアを開けてくれたのだ。

「みなさん、大丈夫ですか?」

「ああ、助かった・・・。」

オレと大貫さんと東阪さんは倉庫から出ると、主催者にお礼を言った。

「でも、どうしてオレたちのことが・・?」

「大島様をご存知ですか?」

「もしかして、あんたは名古屋老若連合の人か?」

「はい。実は大島様はあの後、岡部くんの行動を監視していたのです。そして岡部くんたちが捕まったと大島様から伝えられ、助けたのです。」

「大島さんがオレたちを・・・」

「はい、それと田中のことに関係ある重大な手がかりを手に入れました。これが明らかになれば、君の学校を救うことができます。」

「本当ですか!?それでその手がかりはどこに・・・?」

「大島様が預かっています、まずはそこへ案内しましょう。申し遅れました、私は見上みかみといいます。」

こうしてオレと大貫さんと東阪さんは、見上さんの車に乗って大島さんの屋敷へと向かった。

屋敷につくと、すぐに大島さんがでむかえてくれた。

「見上さん、お疲れさま。さあ、こちらへどうぞ。」

大島さんはいつもと変わらず、オレたちを客間へ通してくれた。

ソファーに座ると

「大島さん、どうしてオレたちを助けてくれたのですか?」

「前にも言った通り、私のところでも密かに田中のことを調べていたんだ。あの人は見た目は硬派こうはだけど、裏ではかなりの悪徳あくとくだからね。君の学校だけでなく、近くの学校を次々と廃校にしているようだ。」

「それはやはり、私立校にして金を稼ぐためですか?」

「それもあるけど、もう一つは廃校を増やして密かにその土地を売って金を稼ごうとしているんだ。最近は少子高齢化しょうしこうれいかで子どもの数が減っていて、学校を統一する動きがあるからね。田中はそれにつけこんで、その土地を買収して不動産に売って大金を稼いでいる。そして田中はいずれ、私立学校と土地で莫大な金を得るだろう。」

もう田中は、金儲けのことしか頭にないようだ。

オレたちは田中に対して呆れていた。

「もうこれは、早く教育長を辞めさせないといけないな。」

「あの野郎・・・、絶対に捕まえてやる!」

「それで、田中に関する証拠はあるのですか?」

「ああ、これだよ。」

大島さんは書類の入った大きな封筒ふうとうを出した。

「この書類には、過去に田中が潰した学校の資料と、不動産取引に関係のあることが書かれているんだ。」

「ちょっと拝見させてくれ」

大貫さんは封筒を開けると、中の書類を一枚ずつ目を凝らして読んだ。

「確かにこれなら証拠としては充分だ、よくこれを田中のところから持ち出したな。」

「まあこの書類はコピーで、元の書類は処分してある。それでこれから岡部くんは、田中を捕まえにいくんだよね?」

「うん、もちろんだよ!」

「だったら、この私も協力させてくれないか?」

大島さんが言った。

「いいよ、オレの作戦に力を貸してくれ。」

「岡部、何か考えていることがあるのか?」

「うん、オレたちの学校を救いだす方法が浮かんだよ。」

そしていよいよ、オレと大貫さんたちによる最後の作戦が実行される。

これで何もかも終わらせて、みんなで入学式を迎えるんだ!








三月二十八日、田中はホワイトポットの部屋でまったりイスに座り、コーヒーを飲んで一服していた。もちろん神宮と矢沢もここにいる

「あの三人は、お前に始末を任せる。いいな、矢沢?」

「はい、お任せください。」

先ほど、部下に公民館に行って三人の様子を見てくるように命じた。そして三人の生存を確認した後、矢沢の事務所まで連れていき、矢沢に始末してもらうてはずになっている。

そしてスマホが鳴った、部下からの連絡が来た。

「私だ、何があった?」

「あの・・・、実は」

スマホから聞こえる声はうろたえている、何かあったにちがいない。田中の表情がすぐに変わった。

「何があったのか、落ちついて話せ。」

「今、公民館の倉庫に来ているのですが、あの三人がいなくなったのです!」

「なに、いなくなっただと!」

そんなことはありえない、あの倉庫には窓がなく一つの出入口をふさげば、完全に密室だ。例えしばってあるロープを解いたとしても、脱出は不可能のはずだ。

「倉庫のカギはだれが持っていた・・?」

「倉庫のカギを持っていたのは、主催者です。」

確か見上という男だったか・・・、まさかあいつが裏切ったというのか?

「今すぐ見上と連絡をとれ、いいな?」

田中は部下にそう告げて電話を切った。

「どうしました、田中様!」

「あいつらが逃げやがった・・・」

「そんな・・・、もし逃げ出したら、私の罪が・・・将来が・・・」

神宮は頭をかかえてパニックになった。

「田中様、失礼します!」

部下が部屋に入ってきた。

「一体、どうした?」

「田中様にお電話が来ております、相手は岡部です。」

「岡部だと!?」

田中は急いで電話のところへ行って、受話器を耳に当てた。

「もしもし、きみは岡部くんか?」

「そうだよ、あの日はよくも閉じ込めてくれたね。」

「どうやって出たんだ?あの倉庫の中は密室だったはずだ!」

「まあ、オレだけの力だけでは脱出できなかったけどね。用件はあなたと話がしたいということだ。」

「話だと?なんの話がしたいのだ?」

「ぼくたちの学校についてです、どうか廃校にするのはやめてください。」

「今さら何を言うか、もう廃校は決まったことだ。くつがえることはない!」

「話し合う気はないということですね?」

「当たり前だ!」

田中は怒り任せに通話を切った、しかしすぐに電話が鳴った。

「くどいぞ!」

「ひっ、あの・・・」

岡部だと思ってどなってしまったが、電話の声は部下からだった。

「ああ、これは失礼した。それで、見上はどうだった?」

「はい。それが完全に音信不通になりました。」

やはり見上は裏切り者だったか・・・。

「田中様、一体どうすれば!?」

「落ち着け神宮、今は下手に動くな、ひとまず私の家へ行こう。」

神宮は落ち着いたものの、まだ震えている。

こいつはビビりすぎる、警察に尋問されたら何を言うかわからない。

田中は神宮を自宅に連れていって、そしてほとぼりがさめたら消すことを決めたのだった。









三月三十日午後六時、オレは大貫さんと東阪さんと那谷さんと山中さんと神田と菊乃たち七人と一緒に、大島たちが来るのを待っていた。

昨日、大島さんから田中の家を見つけたとの連絡を受けて、大島さんと作戦を計画し、みんなに協力をお願いしたんだ。

オレのクラスメイトは、オレの計画にすぐにのったよ。

「なあ、学校を無くそうとする悪党を退治するって本当か?」

「うん、あいつらがいなくなれば廃校もなくなるよ。」

「それにしても、神宮校長もグルだったなんて・・・」

「とにかく、そんな悪党は早くやっつけないと!」

菊乃は早くやっつけたくてうじうじしている。

「もうすぐ、大島たちが来るぞ。用意はいいか?」

大貫がみんなに言った。

「うん、だいじょうぶだよ!」

そして三台のワゴン車がオレたちの前に停まった。

そのうちの一台から大島さんが降りてきた。

「今日は集まってくれてありがとう、それじゃあ悪者退治へ行こう。覚悟はいいかな?」

みんなは「だいじょうぶです!」と異口同音に言った。そしてそれぞれ三台のワゴン車に乗り込むと、田中の家へと走りだした。

田中の家の近くにワゴン車を停めて、歩きで田中の家へと歩いていく。

田中の家の目の前に来ると、大島はみんなに向かって言った。

「それじゃあみんな、ここからは岡部くんの作戦通りに行くよ。まずは岡部くんたちで田中を家からださせるのだ。」

「よし、それじゃあ行くぞみんな!」

オレはみんなに合図を出した、そしてオレたちは田中の家の前で大声で叫び出した。

「おーい、田中!出てこい!」

「お前は臆病者なのか!出てきてかかってこいよ!」

「学校を無くすな!この外道め!」

みんなは家の中の田中に向かって叫んだ、またふえを吹いたり、足ぶみをして大きな音を出した。

すると家の中から男が出てきた、男はダミ声でオレたちにどなった。

「おい、うるさいぞ!何をしている?」

みんなは現れた男におどろいた、そこへ大貫さんと大島さんの仲間の赤谷あかやが現れて、男を倒した。

「おい、どうした!?」

続いて神宮校長が現れた、そしてぼくたちは一斉に飛びかかった!

「一体なんだこれは!?」

オレたちは神宮校長を倒すとそのまま取り押さえて、その間に那谷さんと栞さんが馬乗りになった。

「重い・・・、なんだお前たちは?」

「オレたちは、西小学校を救う少年団だ!廃校にしようとする校長は、絶対にゆるさない!」

そしてオレたちは神宮校長をくすぐったり、背中をタワシで掻いたり、くつとくつしたを脱がせて洗濯ばさみで足をはさんだりした。

「いたい、いたい!やめてくれ、私が悪かった!」

「おい、どういう状況だこれは!?」

そしてついに田中が現れた。

「おい、ガキども!こんなことして、いいと思っているのか!?」

「なんだと!お前だって、学校を勝手に無くそうとしてるじゃないか!?」

「そうだ!お前たちのせいで、多くの子どもたちが困ることになったんだ!」

そして大貫さんは、こんしんの力で田中の腹をなぐった。田中はろうかに倒れて気絶し、オレたちは歓声を上げた!

「いいぞ、タイガー!」

「かっこいいぜ、大貫さん!」

そして大島さんが言った。

「みんな、作戦成功だ!後は警察に任せて、撤収だ。」

そしてオレたちは、意気揚々と急ぎ足で田中の家を後にした。















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