第8話深まる謎
岡部が解放されてから三日後、岡部の家に大貫から電話がかかってきた。
「例の事件について新しい情報が入ったんだ。また会って話したいが、何時がいい?」
「じゃあ、明日の十時にまきばで。」
「了解した」
そして三月十二日、オレはまきばへ向かった。するとすでに大貫さんが来ていた。
「よお、前はオレが遅れてしまったからな。」
オレは大貫さんのとなりのカウンター席に座った、そして今日の注文はオレンジジュースだ。
「さて、話というのはなんですか?」
「お前を誘拐した鷹山という男だが、身元を調べてとんでもないことがわかった。」
「とんでもないことって・・・?」
「鷹山は神宮校長の親戚であることがわかったんだ。」
「えっ!?親戚だったんですか・・・?」
「ああ、しかも二枚の殺人予告状を書いたのは自分だと名乗ったんだ。書いた理由は神宮校長に命令されたからだと言った。」
「じゃあ、神宮校長の
オレは卒業式と入学式を中止にするきっかけを作った神宮校長が
「そういうことになるな、問題はどうして神宮校長は殺人予告状という自作自演をしたのかということだ。」
「うーん、やっぱり理由が思いつかないな。」
「・・・もしかして、自らの悪行をカムフラージュするためじゃないか?」
「どういうことですか?」
「おそらく、神宮校長は自分が
なるほど・・・、そういう考え方もあるのか。
「その悪行って・・・、つまり・・・」
自分の将来ために、田中に渡す一千万円を集めているということだ。
「ああ、そうだ。前に話した時に岡部が言っていたこと、当たっているかもしれない。」
オレはあぜんとした・・・、まさかオレの予想が当たってしまうなんて思っていもいなかった。
「ただ、自分は神宮校長に命令されただけで、神宮校長のことは何も知らないと鷹山は言っていた。これから警察は神宮校長への捜査に入るだろう。」
「そうしたらどうなるの?」
「神宮校長は
「そうか・・・!」
オレの心にうれしさと達成感がわき上がった。
これで、ちゃんと卒業式も入学式も行われる・・・!
「大貫さん、本当にありがとうございました。あなたのおかげで、事件が解決しました!」
「よせよ、オレは当然のことをしただけだよ・・・」
そう言う大貫の顔は照れていた。
そしてオレと大貫は、オレンジジュースとカフェラテで乾杯をした。
それから数時間後の、三月十二日午後六時。神宮校長の家では、神宮校長が頭を抱えてうろたえていた。
「なんてことだ・・・、鷹山が私のことをしゃべるなんて・・・」
鷹山には誘拐した岡部の見張りを任せていたのだが、今日の午前八時のニュースで鷹山が岡部誘拐の疑いで逮捕されたことを知った。
さらに鷹山には理科室の放火もやらせた、理科担当の細野にも協力してもらい、「アルコールランプの儀式」というオカルトごっこに見せかけた火災を起こした。
それもこれも、全てはある目的を人に知られないためにしたことなのに・・・。
「鷹山は警察に絶対私のことをしゃべるに決まっている・・・。そうなったら、私はおしまいだ・・・」
神宮校長はすっかりうろたえている、すると電話がなった。神宮校長は受話器を取った。
「もしもし?」
『神宮、私だ。』
低く
田中だ・・・、教育長の田中だ。
『どうやら手こずってしまったようだな、お前には期待していたが、私がお前と関わっているのがバレるとまずいことになった。』
「はい、本当に申し訳ございません!私としたことがとんでもない失態をしてしまいました!」
『お前は金を持ってくることは上手いが、悪事を隠すことは苦手なようだ。自分を
「はい、ごもっともな意見でございます。」
『出来損ないのお前だが、特別に私が手を貸してやろう。今から一時間後に使いの者がくる、そいつの言うことに従え、いいな?』
「はい、承知いたしました。」
そして通話は切れた。
神宮校長はホッとした、田中が手を貸してくれたら一安心だ。
そして一時間後、インターホンが鳴った。田中の言うとおり、使いの人がやってきたんだ。
神宮校長はドアを開けると、顔立ちのいい若い男が現れた。
「初めまして、田中の使いでやってきた矢沢です。」
「初めまして、神宮です。さあ、お上がりください。」
「いえ、そんなゆうちょうなことは云わないでください。今からあなたには身をかくしてもらいますので。」
「え!?身をかくすのか?」
「はい、私がいいかくれ場所を知っています。今すぐに荷物をまとめて来てください。」
「ああ、わかった」
神宮は手早く必要な物をスーツケースにしまうと、矢沢の運転する車に乗り込んだ。
そして車はどこかへと走り出した。
三月十四日、オレは朝食を食べながら朝のニュースをいつも通り見ていた。
「それにしても、岡部くん。本当に生きてて良かったね。」
「本当にそうよ、でも学校の中で誘拐されるなんて、ちょっとあり得ないわね・・・」
那谷と山中が言った。
「うん、オレもあの時は本当におどろいたよ。」
「岡部くん、これに懲りたらもう探偵ごっこは止めなさい。」
真理に厳しく言われた、でもオレはこれからも
そしてオレは登校し、教室へと入っていった。
「あれ・・・?何か騒がしいな・・・」
教室を見回すと、ヒソヒソと何人かが集まって噂話をしている。
オレはその中に菊乃を見つけて声をかけた。
「おーい、菊乃」
「あっ、岡部くん。丁度あなたに話しておきたかったことがあるんだ。」
「話しておきたかったことって何?」
「実はね・・・、さっき職員室で聞いた子がいるんだけど、神宮校長がいなくなったのよ。」
「えっ!?神宮校長が!!」
オレはおどろいた。
「今、職員室は大慌てになって神宮校長と連絡を取ろうとしているみたい。」
「神宮校長はどうしていなくなったんだ?」
「私もそこまではわからないわよ、でも嫌な予感がする・・・。」
教室にチャイムが鳴った、オレとみんなが着席して水島先生が入ってくる。
朝のあいさつで水島先生はみんなに言った。
「えーっ、神宮校長が急病でしばらく学校に来れなくなりました。しかしみなさんは、健康に気をつけて授業を受けましょう。」
教室にいた全員が騒ぎだし、オレは挙手をした。
「あの、神宮校長は本当に急病になったのでしょうか?何か連絡とかありませんでしたか?」
「岡部くん!余計なことは聞かなくて結構です!」
水島先生はオレをしかった、仕方ないのでオレは席に座った。
「神宮校長が学校に来なくなった・・・、これはもしかして・・・」
そして放課後、オレは用務員室へ向かった。
「大貫さんいる?」
「ああ、いるぞ。どうしたんだ?」
オレは大貫に神宮校長が行方不明になったことを話した。
「そのことなら知っている、今朝いつもなら来る時間になっても神宮校長は来なかった。
美野島が家に連絡をしても出なかったから、警察に連絡して行方を追っているところなんだ。」
「そうか・・・、なあ校長はどうして行方不明になったんだろう?」
「自分で逃亡したとしたら・・・、やはりオレを誘拐したことを、鷹山が吐いたからかな?」
「考えられるとしたらそれだ。鷹山は神宮校長の親戚で、その縁で居候していた。神宮校長は鷹山を金集めのために利用していたことも考えられる。」
「そうなれば、神宮校長は自分で身を隠すために逃亡したことになるね。」
「となると、どこに逃亡したのかということだね・・・。」
オレと大貫さんは考えたが、神宮校長がどこに行くのか見当がつかない。
そこで大貫さんが、美野島にそれとなく聞いてみることにした。
大貫さんは職員室に入り、美野島に声をかけた。
「美野島さん、ちょっといいですか?」
「何でしょう、大貫さん?」
美野島は大貫さんと目を合わせなかった。
「神宮校長が行きそうな場所、わかりますか?行方不明になっている神宮校長が心配なのです。」
「さあ・・・?私にもわかりません、昨日会ったときは元気だったのに・・・」
「昨日、どこで会ったのですか?」
「神宮校長のお宅ですよ、遊びにこいと呼ばれたので伺ったのです。」
「そうですか、ありがとうございました。」
大貫さんはそう言ってオレのところに戻ってきた。
「美野島も行方を知らないようだ、こうなったらまた牛山へ行こう。」
オレはうなずいた。
三月十八日、オレと大貫は牛山にある神宮校長の家へと向かった。
行方不明になってから六日、神宮校長の姿は未だに見つかっていない。
オレと大貫が神宮校長の家の前に来ると、黄色い規制テープが貼られていた。
「今、警察が捜索しているのですね・・・」
「ああ、警察はお前の誘拐事件に、神宮校長が関係しているかもしれないと思っているからな。」
「おや、あんたらは・・・?」
するとお隣さんの朝熊さんが声をかけてきた。
「朝熊さん、こんにちわ。」
「こんにちわ、あんたら神宮さんに会いに来たのかい?」
「はい、行方不明になったとテレビで知って心配になりました。」
「そうか・・・、あの人どこかヤバいところと繋がっていたのかな・・・?何かしでかして、消されたのかもしれない・・・」
「そういえば、神宮さんとよく会っていたそうですね。私は神宮さんが逃亡したと考えているのです、行きそうなところはどこかご存知ですか?知り合いの家とか?」
「知り合いというわけじゃないけど・・・、もしかしたら犬山へ行ったかもしれない。」
「犬山・・・、どうして神宮さんが・・?」
「私しか知らない話だけどね・・・、神宮さんには奥さんがいるんだよ。」
「えっ!?独身だと聞いていたんですが」
大貫はおどろいた。
「花代さんといって、
「なるほど、ありがとうございました。」
オレと大貫は朝熊さんと別れて聞き込みを始めたが、結局朝熊さんの証言以外に目星の情報は得られなかった。
牛山駅の改札前でオレと大貫は休憩して、これからどうするかについて話した。
「結局、犬山に奥さんがいることしかわからなかったな。」
「ああ、そうだな。この後、犬山へ行くか?」
「・・・行くよ。」
「そうこなくちゃな」
そしてオレと大貫は電車に乗って犬山へと向かった。
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