私だけのヒーロー

影神

愛情



「行ってきます。」



「行ってらっしゃい。」




お母さんに見送られる背中。



『行ってらっしゃい』



の声が痛い。




流行り病で、学校はやったりやんなかったり。



診断書が無ければ、学校には行けない。




感染がバレれば。



いい顔すらされない。




大型ショッピングセンターの自由席で。



オンラインの授業を受ける。




正直。



学校の授業ですら分からないのに。



ネットでやった所で、余計分からない。




ただ。



嫌な事ばかりじゃあ無い。




何せ。



学校に行かなくても済むのだから。




皆は、イベントが潰れたり。



修学旅行に行けなくなったからと。




不満を漏らす人も少なくは無い。




けど。



私には有難い。




無しになれば、



お金が掛からなくて済むのだから、、




今時。携帯すら持ってない。



学校から支給されたこのパソコンだけが。



唯一。



私を現代人へと結び付ける物なのだ。




『お金が無い。』




でも、幸せじゃない訳じゃない。



不自由も無い訳じゃない。




けれど。



私は、私なりに。




今日を生きられているのだから。



こうしてお弁当まで作って貰える。



他は要らない。




今日もお母さんの手作り弁当を食べれる。



「美味しい、、」




女手ひとつで。



ここまで育ててくれた。




お母さんは、私のヒーローだ。




今じゃそれが普通で。



全てが当たり前で。




いろんな事に対して。



今じゃそんなモノなのかも知れないけど。




忘れてしまった、大切なモノを。




ちゃんと教えてくれる。



いい機会だったんじゃないかとも。



ふと。思ったりする。。




「ただいま。」



お母さん「お帰りなさい。




ちょっと。



良い??」



「なあに?」



真剣な顔。



何かあったのかな??




お母さん「今は、、学校?



パソコンで受けられるんでしょ??」



「うん。



ちゃんと受けてるよ?」



お母さん「そんな事は心配してないのよ、、




家にインターネットが無いから。



Wi-Fi?がある場所に行って。



勉強してるんでしょ??




ごめんね、、」



誰かから聞いたのだろうか。



お母さんは哀しそうな顔をした。




「いやいやあ。



まあ、家で出来ないのは、確かだけど。




皆。



図書館行ったり。



カフェ行ったりして。




授業するのが、普通何だよ?



ほらっ、



場所を選ばないってヤツ?




現代の仕様なんだよ。」



お母さん「そうなんだね、、



でも。。」




私は、お母さんのぎゅうが好きだ。



日本では、あまり無いのかも知れないけど。



お母さんは、私を優しく抱き締めてくれる。




お母さん「ここは、私達の家なんだから。



自分の好きな様にして良いのよ?




気を付かわなくても、、ね。」



「うん、、」




外に出たくないのが。



学校が嫌いなのが。



家に居たかったのが、、




お母さんには、バレていたのかも知れない。




ネット環境が無いと、授業を受けられない。



家に無いから。



家だとダラダラしてしまうから。



お母さんと喧嘩したくないから。。




沢山の理由は、あった。




でも。



お母さんは、それに気付いてくれる。




私が限界を迎える前に。




お母さんは、親だけど。



私のヒーローだ。




私だけの、、大切な。。




世間が落ち着く事は、



もう。無いのかも知れない。




時代が変わり。



仕様が変わる。




それでも。



昔から変わらない。




大切なモノが。



私達の心の中にはある。




















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私だけのヒーロー 影神 @kagegami

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