ヒーローなんてものは夢物語だ

ゆーにゃん

ヒーローなんていないと気づいた

 子供の頃、自分だけのヒーローがいると信じていた。テレビの前で放送していたヒーローものを観て、いつか自分を助けてくれる優しくて格好良くて、強くてどんな時でも立ち上がり敵を倒してくれる最高の私だけのヒーローがいると。


 ――そう、信じて疑わなかった。


 しかし成長して、それは夢物語だと気づいた。


 この世の中は理不尽で不条理だ。大人になって、働いて自分の手で稼げるようになって。でも、上司からの無茶ぶりやらで残業の毎日。疲弊していく体と心。


 なぜ自分だけが上司からの無茶ぶりを受け、毎日のように残業をさせられ、付き合っていた彼女にも仕事ばかりで構ってもらえないからもう無理と別れを切り出され、家族とも上手くいかず口喧嘩ばかり。


 そんな日々にもう疲れてしまった……。

 終電で家に帰りやっとの休日にテレビを点けるとヒーロー番組が放送されていた。

 変身して悪を倒して、みんなを守るヒーロー。子供の頃に観たヒーローが今、テレビに映し出されるがもうあの頃のようにキラキラと自分の目に映るわけもなく、格好良いとも敵を倒してくれるとも思わなくなっていた。


 だって、ヒーローなんてものはフィクションの中だけで現実になんていやしない。

 もしいるのなら、なぜ俺はこんなにも疲れて何もかも上手くいかない状況でも誰も助けてくれないんだ? 

 どうして、俺ばかりに無茶ぶりを受け毎日のように残業をさせられ、俺自身がしたくて仕事ばかりしているわけでもないのに彼女は俺の話を聞いてくれないんだ? 

 どうして、疲れてしんどくて何も考えたくない時に限って結婚はするの、ちゃんと仕事はやれているの、あれはどうだ、これはどうだと訊いてくるんだ?


 頭の中疑問しか浮かばない。

 そんなことを考えたところで解決も答えも出ないというのに。

 

 ああ……。

 明日も仕事が待っているのか。

 本当に、私だけのヒーローがいるのなら助けてくれないだろうか……。

 なんてヒーロー番組を観ながらそんなことを思う休日の朝だった。

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