3 動画アカウント凍結

「やだあ、凍結されてる!」


 スター☆トンゴロン先輩の家のそばにある電柱の陰で、アオイとナミ、ルルウラ=レイがスマートフォンを覗き込んでいた。


「何考えてるのかしら、ザムザム=ギル」


 ナミがあきれて言った。

 元大帝国レムウルのザムザム=ギルは『ザムザムちゃんねる』というアカウントを開設し、『大帝国レムウルの怪人図鑑』という動画をいくつも上げていた。銭湯の番台でスマホを見ているときに見つけた。

 チャンネル登録をしているのは特撮ファンや子供が中心で、再生回数は五十万回を超えるようだ。


「地球での収入源にと思ったんだろうねえ」


 この動画に上げられている怪人の情報が事実であると判断したルルウラ=レイは冷静に言った。


「何しろ、失業中なんだから」


〈ゴンゴン〉での大食いチャレンジは、そんな彼に都合がよかったのだろう。仕方ない。


「いくら怪人だからって、個人情報の漏洩にもほどがあるわね」


 アオイもあきれて言った。


「きっと大帝国レムウルに通報されたのよ。守秘義務違反だし、やめさせられた職場に嫌がらせするの、あんまり良くはないわね」

「それより、さっき佐倉井さんから連絡があったよね?」

「ええ。『ザムザムちゃんねる』にあったミラー夫人の異空間対策方法、ほんとなのかしらね。一応伝えておいたわ」

「あら」


 どこからともなく戦闘員が現れ、三人を取り囲んだ。


「ミラー夫人。きちんと戦闘員を申請したと見えるわね」


 ナミが言うと、


「でも無駄にならないかしら」


 アオイが肩をすくめる。


「行くわよ!」


 プラニスチェンジ。強化服が装着された。

 プラニセイバー、イエローとブルーが、襲い掛かる戦闘員を蹴散らして行く。


「ちょっと! せっかく申請した戦闘員を!」


 鱗のように丸い鏡で全面覆われている紫の鎧。変装を解いたミラー夫人がその姿を現した。


「来るとは思っていたわ、プラニセイバー。

 でも、ひとりはあたくしの虜。五人揃うことはないわ。

 なぜならここで二人減るんですからね!」


 剣を振るい、鞭のようにしなる光がナミとアオイを襲う。


「アオイ!」


 ナミがアオイの前に出て、ブレスレットから円盤状の投擲武器、プラニスシュートを撃つ。

 間一髪で光の鞭をはじき、二人は次の攻撃に備えて構える。


「さあ、次は?」


 アオイは挑発的な言葉を投げかける。


「二人対ひとりで申し訳ないけれど、いいんじゃない? 負けても二人が相手だった、って言い訳できるわよね?」

「なにを?」


 挑発に乗ったミラー夫人は、いつもの姿を変えて親しい仲を破壊する冷静さを失っていた。

 ここには元々三人いたことを見落としていた。


「さて、」


 プラニセイバーのイエローとブルーがミラー夫人と対峙しているあいだに身を隠していたルルウラ=レイは、天文クラブがいるバルコニーに向かっていた。



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