6 星町三小天文クラブふたたび集合!:怪人・ミラー夫人あらわる!(後編)
1 仲間たち
スター☆トンゴロン先輩ことカオルはその時、ひょっとしたら戻って来ない二人は屋敷の中で迷ってしまったのでは。そんな心配をしていたのだ。
「先生まで戻ってこないなんて」
首をかしげた。
「そろそろ俺たちも部屋に戻ってもいい時間だけど」
お菓子と飲み物を配ったあとなので、一旦星空も宿題もそっちのけだ。
「先生とマコッチまだかな。
みんな、お菓子食べて待ってて」
カオルはそうして出ていったのだが、なにせ自分の家だ。迷子は任せろ。そんな余裕を背中に見せていた。
「あれ? みなさん」
「こんばんは」
玄関に、商店街の人がいる。
カレー店〈ゴンゴン〉の店主、佐倉井さん。喫茶店〈タチバナ〉の青柳さん。
「お久しぶりです」
先日中止になってしまった観測会で天文クラブは〈ゴンゴン〉のカレーを提供されてお世話になっていたのだということを、カオルは忘れていない。
「様子、見に来たんだけどさ、今日はこないだみたいなこともなくてよかったな」
「はい。おかげさまで」
「マモルどうしてたかな」
阿賀川先生の幼馴染である佐倉井さんは、いつもマモル、と名前で呼ぶ。
「それが、家のどこかで迷子になったかもしれなくて」
「仕方ないなあ。俺たちも探していい?」
「探すほどでもないとは思うんですけど」
「あら、こんばんは」
そこに、カオルのお母様がやってきた。
「どうも、急にお邪魔しまして」
「いいえ。お二人とも、天文クラブはお世話になっておりますもの。どうぞ」
「ん?」
カオルがなぜか、妙な顔をした。
「どうしたの?」
「いえ」
首を振って、
「お母さま。先生と武山くんが家のどこかで迷っているようなんですけれど」
「まあ。でも、迷うといったって、迷路じゃあるまいしすぐに見つかりますよ。
お母さんが探しますから、あなたはお二人とみなさんのところへお戻りなさい。先生だって戻っていらっしゃるかもしれませんよ」
「そうですか」
それでは、と、カオルは佐倉井さんと青柳さんに、
「では、観測会にご案内します」
そのまま階段を上がっていった。
「どうかしたのかな?」
小声で青柳さんがカオルに訊いた。
「さっきから怪訝そうな顔をしているね」
「いや、ちょっとお母さまが」
階段の踊り場にある鏡の前を通りがかった。
「お母さま、うちにいらっしゃった方には一応どんなご用か訊くのになあ、って」
「ふうむ」
「まあ、お母さまは〈比類なきソプラノ〉、何があってもこの世に二人はいません」
「えっ」
その後ろにいた佐倉井が、小さく声を上げた。
「どうしました?」
「ん? あああああ、広い家だなあと思ってな。うちなんか、店自体狭いだろ、ははは」
「そんな。僕〈ゴンゴン〉大好きですよ」
「嬉しいこと言ってくれるねえ」
そのまま三人は天文クラブの子供たちのところへ向かって行ったのだが、佐倉井は少しだけ振り向いて、
「……」
鏡に向かってピースサインをし、また階段を駆け上がったのだった。
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