5 〈お母さん〉じゃなくて〈ハハ〉!
「みんな」
スター☆トンゴロン先輩が差し入れを持ってきて、ちょっと騒がしくなった。
「やったー」
「お、カオル。誰が届けてくれたのかわかるか?」
マモル先生、ご挨拶もできないで、と気にしていた。
「邪魔になるから、すぐに帰られたそうです。サオリン先輩のお母さまと、マコッチのお母さまが」
「そうか」
先生も一瞬それで納得したけれど。
僕は気が付いた。
「でもあれ、お母さんのクルマだなあ」
邸宅前の道路に停めてあるミント色の軽自動車。
「まだ間に合うか?」
「僕も行く」
律儀な先生だなあ。
僕は、トンちゃん(ウサギ)のゲート、夜はちゃんと閉めてほしいのでその注意を伝えたかったんだよ。トンちゃん、パンとかつまみ食いするからね。
「いや、お前はここにいていいよ」
「なんでですか。先生、迷って外に出られないかもしれないじゃないですか」
「そこまで方向音痴じゃ……あれ?」
それにしても広い廊下だ。
「どっちだっけ?」
「こっちです」
「どちらへ?」
そこに、スター☆トンゴロン先輩のお母さま。
「父兄の方へ、ご挨拶をと思いまして」
「ええと、お母さ……ハハのクルマが外に見えたんで、ちょっと伝えたいことがあって」
こういう時は、〈お母さん〉じゃなく、〈ハハ〉って言うもんなんでしょ?
「まあ」
するとお母さま、なぜか驚いて。
「そうでしたか、クルマが」
「玄関、どちらでしたっけ」
「玄関へは、行かなくてよろしいんですのよ」
「え」
その時、お母さまは何か合図をした。
「えーっ?」
屋敷のあちこちから黒い装束の怪しい奴がわいてきて、僕とマモル先生を取り押さえようとするじゃないか!
「伏せろ、武山!」
次の瞬間。マモル先生、そいつらを何人か叩き伏せた。
「妙なことに勘づいてもらっては困るのよ」
お母さまの様子がへんだ。
「わあっ!」
またひとり、僕につかみかかってきて、それはなんとかかわした。
「逃げろ、武山!」
「逃がさない」
そういって右腕を振ると、指先から光の線が飛び出して、それがくるくると僕と先生の体に巻き付いて締め付けてくる。
「何? これ!」
「ふふ」
見ればお母さまは輪郭がゆれて、次の瞬間には別な顔の別な姿に変わっている。
「この屋敷とこの姿は、大帝国レムウルの大いなる計画にうってつけ」
紫色の鎧のようなものを身に着けている。それは鱗のように丸い鏡で全面覆われていて、腰には剣。
「一人が教師だというのは本当だったのね、プラニセイバー」
「お前がミラー夫人か」
マモル先生? プラニセイバー? ミラー夫人?
「先生」
「詳しい話はあとだ、武山。俺がついていながらごめんな」
「プラニセイバーって」
「とにかく、絶対ここを抜け出す」
ここ?
落ち着いて周りを見たら、ここ、どうも普通の場所じゃない。
僕たち、どうなるんだろう?
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