5 ニンギョウアミモト・沈む

 巨大化したニンギョウアミモト。

 それに対峙するプラニスファー。


「ワタシのおもちゃたちと、網を食らいなさい!」


 重機たちがプラニスファーの動きを妨害し、そこにニンギョウアミモトの網が広がる。


「プラニスソード!」


 一閃、放たれた網を切り裂くが、二投目、三投目と続いて止まらない。


「ええっ、ショベルカーって、高価たかいよね?」


 そんなこと心配してるのお前だけだろ、と、ナミ以外の全員が心の中で突っ込んだ。


「……まあ、無関係な人たちの財産を守らなきゃいけないけど……」


 切り裂いた網をひらめかせ、ちょこまかと重機が足元で動き回るところを避け、プラニスファーは踊っているように見える。


「〈みんな!〉」


 そこにルルウラ=レイからの通信が入る。


「〈ニンギョウアミモトは、実は巨大化しても地上で活動する時と重さが変わらない!〉」

「え? なに? スカスカなの?」


 耳を疑うことを言われた。スポンジか発泡スチロールを相手にしているイメージがわいてくる。

 なのにあんなに網を振るえるのはどうなってるんだ。ほかの地球の科学の力か。


「〈そう! 彼のもともとの姿、球体関節人形は中身が空洞! 軽いから強風に弱いよ!〉」


 なぜそんな強度で巨大化しようと考えたのか理解に苦しみながら、マモルとユウスケが顔を見合わせ、


「よし、プラニス旋風ハリケーン!」


 プラニス旋風ハリケーンとは。

 プラニスファーが全身で繰り出す動きにより生まれた竜巻で相手を攻撃する、必殺技のひとつである。


「うわあ!」


 ニンギョウアミモトが叫ぶ。


「これだから! これだから! ああーっ!」


 声は遠くなり、地平線でキラリと光った。

 重機たちはコントロールを離れ、もとの静かな採石場となった。


   * *


 大帝国レムウル、リゾート対策本部。


「使えないわ」


 司令官ランダ=ガリアはニンギョウアミモトの顛末を知り、吐き捨てた。


「せっかくの巨大化も能力もまったく生かせていないわ!」


 担当大臣ソウド=ウルは、そんな彼女を見ながら、


(対プラニスファーの見栄えのためだけの巨大化を生かせと言われても……)


「はい。

 はい! リゾート対策本部、ランダ=ガリアでございます」


〈クライアント〉からの通信が入った。


「もちろんでございます! これまで、あと一歩のところで邪魔が入ったほかは、順調に……え、それは順調とはいわない?

 とんでもございませんわ! きっとまとまったサンプルをご用意し、ご希望に沿うことができると信じておりますの!」


 ソウド=ウルは、プラニスファー適合者サンプルの件は、数十人単位の準備は必要ではなく、まず任意の数名の実験データを重ねる方が効率的にもよいと考えていた。

 だが〈クライアント〉の意向としては、それでは見栄えがしないということで……


(『それでは私が出した成果に見えない』が口癖の司令官様も従うように仰せられるからして……)


 大帝国レムウルの計画は、誰の意向でどのように進められているのか。

 ソウド=ウルはそれ以上は黙して語らず、ランダ=ガリアのセールストークは尽きないのだった。

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