第46話 友達の雰囲気

【…ねえ、話終わった?】


≪…ん?ああ≫


〈無駄話が長いわ。もう次、あんたいきなさいよ〉


{長くて悪かったな…}


[はいはい、次は僕ね]


〈何かやる気を感じない返事ね〉


[今それいらないでしょって…。えっと、僕は石﨑実いしざきみのる、高校3年生で遠泳部だった。スキルは『筋力倍加』]


【『筋力倍化』って…分かりやす…】


≪遠泳部だと?≫


[そうだよ、僕は小学校も中学校も高校も離島にあったんだ。だから、ずっと遠泳部。金門君も水泳やってるって言ってたけど、スタミナだったら負けないよ]


≪別に競ってねえよ≫


[またまた…そうだ、筋肉も結構あったんだよ。腹筋はもちろん割れてたし…ああ、転生して一番ショックだったのは、赤ん坊に生まれてそれまで鍛えてた美しい筋肉が失われたことだったな…]


他の我々からしたらよく分からない事で感傷に浸っている。…おや?現在会話をしている我々の思念領域に、何やら絵のようなものが…


〈自画自賛か…って、なんかイメージ画が!?〉


【うわっ、なにこれ!】


[あれ、これってイメージも共有できたりするの?]


【ちょっと何よこの写真は?ポージングが妙に気色悪いわ】


これは…海での写真か何かだろうか?確かにがっちりとした大胸筋と腹筋が見事に強調されている…


【ああ、うん。主人格もわざわざコメントしなくていいから】


〈今すぐ消して〉


[ひどいな、僕の写真に向かって。どうどう金門君、見てよ。中々の筋肉でしょ]


≪それ言ったら…俺だって腹筋くらい割れてたわ…≫


[うん?聞こえないな。ねえ、ところでこの僕と水泳で勝負したらどっちが勝つかな?]


≪うぜえこいつ。てか実際にやりあったこともねえのにいきるな。…流石に、遠泳部に勝てるとも思えないが…≫


【速さなら勝てるんじゃない】


[君は、遠くまで泳ぐのに速度が必要じゃないと言うのかな?]


≪くっ…≫


[ふっふっふ、負けを認めたね]


≪ちげえよ。それより、お前は何で転生したんだ≫


〈露骨な話題反らし〉


≪…(黙っとけって)…≫


[あー…それはね。泳いでたら雷に打たれた]


{はぁ?}


【アホに相応しい死に方ね】


≪いやいやどういう確率だよ。海だろ?≫


[そんなの知らないって。だって、自主練してたら急に天気が悪くなってさ、やばいな…って思って岸に戻ろうとした瞬間にドガーン!だったんだよ。流石の僕でもあれは避けれないよ]


{そんなの誰でも無理だわ。てかそれ逆に運いいんじゃねえの}


≪ほんとだよ≫


[電気抵抗で何とかならなかったかなぁ]


≪何言ってんだこいつ≫


〈コイツと話してると、会話の内容がアホらしくなるわ〉


【というかあんたも長くなりすぎよ。次はもっと簡潔にお願い】


[あれ、スキルについて聞かないの?]


{わかり易すぎて、今更聞かねえだろ。あんな脳筋スキル}


[言っとくけど、これにしたのはただ僕が筋肉が好きだったから、っていうだけだからね]


≪自分で選んだのか…≫


〈それはそれで違う意味の脳筋になりそう〉


【(もしかして、実は筋肉のことしか考えてないのかしら)…それより早く次いくわよ。自己紹介でどんだけ時間掛けるつもりなの】


[なんなら、今からスキル紹介…もとい筋肉自慢大会…に変える?]


〈≪{【やめろ(て)】}≫〉


突然、意味の分からない願望を出してきた実であった



〈ねえ、次ってあたし?〉


【ええ、お願いね】


{じゃああんたで最後か}


【…そうね】


≪ん?何だ、なんか歯切れ悪くないか?≫


【…別に、なんでも】


≪んんー…?≫


{……}


〈ねえ、今はあたしの番だと思うんだけど。そっちは最後でいいんでしょ〉


【そ、そうよ。じゃあ、早速よろしく】


[まあいいか。どうせあとで聞けるし]


〈さてと…んんっ…〉


[今のいる?]


〈うるさい脳筋〉


[石﨑実だっていったよね]


【じゃあ石﨑脳筋、一旦黙れ】


[あれ、意外と響きがいい…]


〈ああもう、なんなのこいつ…あたしは鬼越癒音おにこしゆうね。医療系の学部の大学1年生よ。スキルは『特光』〉


[鬼なのに癒やすんだ]


{医療系って何だったんだ?}


[ちょ…無視…]


〈看護学よ。ママが看護師だったから、身近で見る機会もあってね。それで格好いいなーって思って〉


≪なるほどな≫


[じゃあじゃあ、『特光』ていうのは?]


〈…あんた、普通の質問もできたのね〉


【ほんと】


≪ああ≫


[ねえ、僕だってそれくらいできるよ。当然でしょ]


【その当然が出来ないと思ってたんだけど】


[ひどぉ、君たちまともじゃないよ]


≪少なくともお前よりはましだ、KY≫


[ん?何それ]


≪知らねぇのか…ならそれでいいわ≫


[気になるんだけど。ああ、ここにスマホがあればゴーグル先生に聞けるのに…]


【ねえ、そんな石﨑がKYだなんてどうでもいいから、そろそろスキルについて説明してよ】


〈それもそうか〉


[おじさんはKYって何か知ってる?]


{(このKYは多分ネットの方の意味だろうな)知らねえよ、それより説明を聞い…っておい、なんだよ、近寄ってくんな}


[なんか知ってそう。ねー教えてよー]


{(要らんところで勘が鋭い…)こいつ粘着質かよ……おい、早く続きを…!}


〈わ、わかった。『特光』っていうのは〉


【待って。一回この脳筋を黙らせる】


[ほう、それはどうやって…ぷぎゃ。……]


≪おおう…ほんとに黙った…。助かったぞ≫


〈…何したの〉


【私も詳しく説明はできないけど…副人格としての権能みたいなもの…?】


[……]


【まあいいでしょ。大人しくなったし、続けよ】


〈そうね。といっても、あんま言うことないけど…。このスキルは…簡単に言えば光魔法よ〉


≪それってスキルなのか?……いや、練習しなくとも最初から使えるとすれば、まあ…?≫


{光属性は貴重だったりとかしたのか?}


〈…たしかそうだった気がする〉


≪なら…ううーん、でもそれでも地味だな…他に選択肢はなかったのか?≫


〈転生するとき管理者とかいうのに、病気とか怪我が怖いなって話したら、こうなった。光属性は治癒とかも含まれてるらしかったから…〉


{あーなるほどな。それなら光属性は妥当かもな}


〈あと地味だって言うけど、全然そんな事なかったわよ?〉


≪どういう事だ?普通に魔法だろ≫


〈それはそうなんだけど、実際に異世界に飛ばされたら森の中だったんだけど…でかいヘビの魔物?に出会ったの〉


{ヘビ…俺苦手なやつだ}


≪意外だな≫


{小さい頃触った時のあの感触と、ウネウネ動くのが何とも言えなく嫌でな…}


〈あたしも…。それで咄嗟に光属性の攻撃魔法をぶっ放しちゃった訳なんだけど…〉


{けど?}


〈バスケットボール位の球1つで、周りの森ごと吹っ飛ばしちゃった…〉


≪予想以上に半端ねえ…≫


{…伊達に『特』って付いてる訳じゃないってか}


〈あの時は自分のことが怖くなったわ…〉


 やはり、どのスキルも何処かしら壊れている部分がありそうであった


[――――]


…ん?何やら実が我に話し掛けてきているようだが、何だろうか。話の邪魔をすると悪いから一応、会話をプライベートにしておこう


≪そう言えば、お前が会ったのは管理者なのな≫


【…あれ、そう言えば神と管理者って意味違ったっけ?】


≪あ?そんなの俺は知らんが…≫


{じゃあ俺らが会ったのはどっちなんだ?}


〈あたしは管理者って言ってた…〉


[管理者は世界の管理をしてる人のことだよ。神がやってる時もあるし、違う人が代理でやってるときもあるんだって]


【…起きてたのか。ていうかなんで知ってるのそんなこと】


[ふっふーん。主人格が知ってたから、KYが何なのか訊くついでに教えて貰ったんだ。それで分かったよ、KYってのは危険予知のことだったんだね!それぐらいさっき教えてくれれば良かったのに]


{(そっちかー)}


≪(違うが…もうそう思わせとけばいいか…)≫


〈(ただの世間知らずの間抜けね)〉


【(離島暮らしだったせいで、ネットに触れてこなかったのかしら…?)】


 意図せず4人の思惑が一致している。因みに、さっき金門はああ言っていたが、この会話は『念話』とは異なるため、隠そうと思えばこのように言葉として浮き出てこない。


【(もういいや。これ以上脱線しちゃいけない)…よく考えたら、主人格はナギサ・メトロンが創ったんだったわね。その時にナギサみたいに記憶を移譲したのかしら】


≪ていうか実、お前なんで自分の知識じゃないのに偉そうなんだ。それとあいつ、俺らと会話出来るのか?≫


[出来るみたいだよ?しかも、会話をプライベートにするとか、そんな事も言ってた]


〈そんな事が…じゃあ今から実を除いて4人…あ、主人格入れて5人で話そうか〉


【いい考えね】


[仲間ハズレ反対!だから何で僕を外したがるのさ]


≪わかったわかった。これ以上いくと面倒だから、さっさと続けてくれ≫


[ねぇさっきの冗談だよね?]


≪ハイハイ≫


〈ねえ、2人とももういい?〉


【実は最初からほっとけばいいでしょ】


〈そうじゃなくて、もうあたしの自己紹介は終わったわよ。次、あんたでしょ〉


【………え】


〈何よ〉


【あーいや……ちょっと時間が掛かり過ぎてるから、一旦本題に戻ってもいいかなぁって…】


〈本題何だっけ〉


【ええと…皆で話せたのは初めてだよねって…】


{そんでなんか流れで全員が転生者だって判明したんだよな}


【そうそう…】


≪何言ってんだ。そこで名前がわからないと呼びづらいから、って自己紹介を提案したのお前だろ。もう皆やったんだから、早くしろ≫


【えぇー…】


≪言えないことでもあるのか?≫


[もしかして犯罪者…]


【違うわよ!何でそうなるの!】




[秘密結社の構成員…いや、幹部…?]


{何で?}


〈ふむ、なるほど〉


{お前はお前で納得するな}




≪そういう理由がないなら大丈夫だろ≫


【いやー…ただちょっと言いたくないなーって…】


[はっ…!もしかしてどっかの神が僕たちの監視に遣わせたスパイ…]


〈あの神なら有り得そう…〉


【あんたたちはいつまでそんな事言ってるのよ!確かに、私はあんたたち全員の統括をあのナギサ・メトロンから頼まれてはいるけど!】


{頼まれてるのか…}


≪それ含めての副人格なんじゃないか?おっさん≫


{ああ、そういうことか}


〈どっちにしろ似たようなもんじゃない〉


[やっぱりか…]


【何がよ!違うわ!】


〈ていうかあんたもいい加減にしてよ!あたし、名前も教えてくれない疑心暗鬼なやつと一緒にいたくないわ〉


【そこまで言う……………わかったわよ…教える】


〈最初からそうしてよ〉


≪俺らと同じように名前と、持ってたらスキルか能力、あと何で転生したかも教えてくれないか≫


【………わかった】


{そんな覚悟が要ることでもないだろう}


【私にとっては必要なことなのよ】



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