第11話 夏に向けて

 少しずつ暑さが続くようになり、いきなり気温が下がって、また上がると体にくる。

 体調に気を付けていかないと。

 今年は帰省はしない。

 成人式には出たいが、必ず出たいとは思わない。

 ここにいて、流れるように過ごした方が楽だから。

 もしかすると、清瀬きよせさんと、夏休みに一緒に過ごせるかもしれない。

 期待している自分、気持ち悪いかな。


「ふぅ…」


 一息吐く。

 テストからの解放である。

 2年までは単位確保するという目標で、時間割が地獄状態だが、3年からは就活を見越して考えると、今頑張るのは良いのかもしれない。

 余裕を持って就活をしたいので。

 さて、帰ろうか。

 直ぐ寝よう。眠気が本当にヤバいから。

 鞄を持って、教室を出た。



 アパートに着くと、すれ違いで清瀬さんが部屋から出てきた。


「お疲れ様、テスト終わったね」

「お疲れ様です、疲れました」

「そかそか♪」


 笑顔の清瀬さん。

 今日も今日とてお美しい限りです。


「今から買い物ですか?」

「そうだよ。一緒に行く?」


 誘われた。


「はい、行きます」

「じゃあ、また一緒にご飯食べよ?」

「良いですね。この前は清瀬さんの所だったので、今日は俺の部屋で」

「良いの?なら、お邪魔します!」


 一緒にご飯を食べることとなった。



「夏休み?」

「はい、どう過ごされるかなと…」


 一緒にご飯を食べながら、目の前にいる清瀬さんに、夏休みの過ごし方を聞いてみた。


「帰省はしないけど、就活準備が中心になるかも」

「なるほど」


 3年って忙しいのかな?


美鈴みすずと遊ぶ日も多分あるかと思うけど…それ以外はないかなぁ~」

「夏のイベントに参加は?」

「お祭りかぁ~、良いよね!」


 どうなら、菅崎かんざきさん以外は就活準備に集中するということ。

 特にないなら、誘ったって良いだろう。


「他にないなら、俺とどっか行きませんか?」

「えっ?」


 どっか行きませんか?…って何を言ってんだ!?

 間違ってはいないが、言葉の遣い方が間違っている。

 清瀬さんの様子を見ると、考えていた。

 考えてくれている、嬉しいっす。

 すると、ニコッと清瀬さんは笑顔で一言。


「良いよ!」


 マジか!?


「お祭りなんか、どう?」


 イベントに合わせた。

 1から考えるデートより、イベントに合わせた方が良いし、楽しいだろう。


「分かりました、祭りに行きましょう」

「当日はエスコートをよろしくね?」


 うっ…ドキッとした。


「頑張ります」


 こうして俺と清瀬さんは、8月に行われる祭りに一緒に行くこととなった。

 作ったナポリタン、いつもよりも美味く感じた。

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