第4話 意外

「フッたの!?」

「うん」


 私は榮口さかぐちさんと学食にいた。

 あの気まずかった理由を話した。

 驚かれた。


「だから、変だったのか、なるほど」


 榮口さんは1人納得し何度も頷く。


「でも何でフッたのよ?」


 やはり聞かれた。

 なんと言えば良いのやら。


「話したくないなら、話さなくて良いけど」


 引き下がった。ちょっと驚く。

 ぐいぐい系だと思っていたから。


「チャンス…あるなら、良かった…」


 榮口さんはボソッと言った。


「ん?」


 聞き逃さなかったから、聞いてみた。


「あっ、なんでも!」


 慌てる榮口さん。


 私は思った。


 この人とは、やっぱり、無理だな。



「ふぅ…」


 危うく地獄の状況になるとこだった。

 講義は仕方がないとしても、本当に危なかった。

 フラれたあの日のルートにいた。

 なら、いるかな?

 あの時とは違って、しっかりと歩いていると。


「あっ」


 いた、あの人が。


「あっ…棚部たなべ君じゃない」


 ベンチに座っていた清瀬きよせさん。

 今日も今日とて、綺麗だな。


「隣、良いですか?」

「どうぞ」


 この前よりは、少し距離を詰めて座った。


「休み時間的な?」

「まあ、はい」

「私もだよ」


 ふふっと笑う清瀬さん。


「何を読んでいるんですか?」


 紙のブックカバーで、何を読んでいるのか分からなかったから、聞いてみた。


「引かない?」

「?」


 引かない?、とはどういう意味だ?

 キョトンとしていると、清瀬さんはゆっくりと、ブックカバーを外して見せた。

 表紙が露になる。

 美少女のイラストが表紙だった。

 窓辺の所に立ち、振り向いている制服を着た女の子のイラスト。


「ライトノベル…ですか?」


 清瀬さんはコクンと頷いてから、急いで本にカバーをかけ戻した。


「中学の時から、好きで…」


 恥ずかしながら、本を両手で持ち上げ、鼻の辺りまで顔を隠した清瀬さん。


「大学生になっても、やっぱり、卒業出来なくて、だったら、社会人になっても、結婚して親になっても、とことん愛すって決めて…はい…」


 意外な一面に、俺はクスッと笑った。


「あっ!笑うの何で!?」


 清瀬さんのその反応にさらに、クスクス笑う俺。

 だって、さ。


「顔、真っ赤だから、つい」

「えぇ…!?」


 可愛らしいなって思った。


「その本、どんな内容なのか、教えて下さいよ?」

「ふぇ?」

「清瀬さん、ライトノベルのこと、教えて下さい」


 興味が湧いてきた。


「う、うん!あのね!」


 語る清瀬さんは、子供のように無邪気だった。

 話し方も幼くなっていたけれど、分かりやすくて、聞き入った。

 あとでオススメを貸してくれるそうだ。

 借りたら早く読んで感想と共に返そう。

 1時間はあっという間だった。


「じゃあ、またね!ありがとう!」

「はい、また」


 新しい一面を知れて、良かった。

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