第4話 意外
「フッたの!?」
「うん」
私は
あの気まずかった理由を話した。
驚かれた。
「だから、変だったのか、なるほど」
榮口さんは1人納得し何度も頷く。
「でも何でフッたのよ?」
やはり聞かれた。
なんと言えば良いのやら。
「話したくないなら、話さなくて良いけど」
引き下がった。ちょっと驚く。
ぐいぐい系だと思っていたから。
「チャンス…あるなら、良かった…」
榮口さんはボソッと言った。
「ん?」
聞き逃さなかったから、聞いてみた。
「あっ、なんでも!」
慌てる榮口さん。
私は思った。
この人とは、やっぱり、無理だな。
※
「ふぅ…」
危うく地獄の状況になるとこだった。
講義は仕方がないとしても、本当に危なかった。
フラれたあの日のルートにいた。
なら、いるかな?
あの時とは違って、しっかりと歩いていると。
「あっ」
いた、あの人が。
「あっ…
ベンチに座っていた
今日も今日とて、綺麗だな。
「隣、良いですか?」
「どうぞ」
この前よりは、少し距離を詰めて座った。
「休み時間的な?」
「まあ、はい」
「私もだよ」
ふふっと笑う清瀬さん。
「何を読んでいるんですか?」
紙のブックカバーで、何を読んでいるのか分からなかったから、聞いてみた。
「引かない?」
「?」
引かない?、とはどういう意味だ?
キョトンとしていると、清瀬さんはゆっくりと、ブックカバーを外して見せた。
表紙が露になる。
美少女のイラストが表紙だった。
窓辺の所に立ち、振り向いている制服を着た女の子のイラスト。
「ライトノベル…ですか?」
清瀬さんはコクンと頷いてから、急いで本にカバーをかけ戻した。
「中学の時から、好きで…」
恥ずかしながら、本を両手で持ち上げ、鼻の辺りまで顔を隠した清瀬さん。
「大学生になっても、やっぱり、卒業出来なくて、だったら、社会人になっても、結婚して親になっても、とことん愛すって決めて…はい…」
意外な一面に、俺はクスッと笑った。
「あっ!笑うの何で!?」
清瀬さんのその反応にさらに、クスクス笑う俺。
だって、さ。
「顔、真っ赤だから、つい」
「えぇ…!?」
可愛らしいなって思った。
「その本、どんな内容なのか、教えて下さいよ?」
「ふぇ?」
「清瀬さん、ライトノベルのこと、教えて下さい」
興味が湧いてきた。
「う、うん!あのね!」
語る清瀬さんは、子供のように無邪気だった。
話し方も幼くなっていたけれど、分かりやすくて、聞き入った。
あとでオススメを貸してくれるそうだ。
借りたら早く読んで感想と共に返そう。
1時間はあっという間だった。
「じゃあ、またね!ありがとう!」
「はい、また」
新しい一面を知れて、良かった。
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