第1話 数時間ぶり
「綺麗な人だったなぁ…」
清瀬…さら…。
清瀬…さ…。
「
「うわっ!」
大きな声で呼ばれて我に返る。
目の前には、ポニーテールの女の子がいた。
「何ボーッとしてんのよ!」
彼女は、
同じ学部学科の同期である。
怖い顔で俺の事を見ている榮口。
「うるさいなぁ…」
愚痴を溢しつつ、ポンポンと隣に座れと、ベンチを軽く叩いた。
「んで、何?」
「通り掛かったら、淳音がいたから、声をかけただけだし」
そういう理由ね、はいはい。
「なんか、呆れてない?」
「いや、全然」
そんな怒ることなのか?
分からない。
「あとさ、鼻の下伸びてない?」
「えっ?」
体がピクリと反応してしまった。
鼻の下、伸びていたか?えっ?えっ?
動揺してしまったことに後悔する。
「ふーん」
ジト目で俺を見る榮口。
そんな目で見ないでくれ。
「まぁ、良いけど」
バレたくはない。
清瀬さんのことは内緒にしないと。
「次の講義、一緒だし行こ?」
「いや、パスで」
「はぁ!?」
ベンチから立ち上がる。
「今日は帰る。じゃあな」
すまない。
まだ傷は深すぎる。
しかも、振ったあの子がいるから、無理だよ。
俺は早足で榮口の前を去った。
※
真っ直ぐ家に帰った後、寝た。
目が覚めたのは、午後5時。夕方か。
お腹は鳴った。どんな時も腹は減るもんだな。
冷蔵庫を見ると、すっからかん。
実家から送られてきていた食べ物はない。
買い物にいかないと。
財布とスマホと鍵をポケットに突っ込んで、家を出るとー…。
「「あっ」」
隣の隣の部屋に、いた。
「清瀬さん」
「
こんなこと、あるのかよ。
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