第3話「Grim Reaper」
……シェラは非常にわかりやすく説明してくれた。アレニズムがどういうやつなのか、そして彼女が俺に告白することになった経緯まで。
――彼女の説明によるとこうだ。
まず、死神の大半は月に住んでおり、地球に飛んで来ることや地球に住むことは可能だ。
死神は、最高死神(今はアレニズム)以外は全員女性。死神にも『性別』というものはあるが、女性として生まれ、最高死神の位についた者のみが男性となる。
死神の寿命は約七百年弱。新しい死神は、三か月に一度程度、月の割れ目から自然に現れる。生まれた瞬間から体はもう最終成長を遂げていて、変化することはない。たとえ最高死神になったとしても、一応男性という扱いではあるが、肉体的には人間でいう女性に何ら変わりない。
死神は、生後一年以内の最高死神への貢献度で、『貴族』か『平民』という位が定められる。その決定権を持つのは、最高死神のみだ。
死神貴族は、アレニズム直々にとても裕福な暮らしが保証される代わりに、一生最高死神に奉仕することが義務付けられている。それに対して、平民は、貴族にはかなり劣るが、幸せに暮らし最高死神の権力を他の神に見せつけるという義務がある。
この『幸せに暮らす』の中には、『地球に直接赴き、彼氏を作り彼氏と一生共に暮らすこと』も含まれている。『彼氏と暮らす』ときは、月に人間を連れ込んだり自分が地球で暮らすといったことも可能だ。その際、人間に危害を与えると、先代の最高死神が定めた規律に反するため罰せられる。
死神には生まれつき特殊な血が流れていて、その血には位置情報やその死神の状況などをその時点での最高死神に伝達する機能がある。規律を破った場合、その死神は消滅するという機能もあるため、他の死神が最高死神に逆らうことは不可能に近い。
彼氏がいないのは現状シェラのみで、他の死神はシェラ曰く『エロい』のだそうだ。サキュバス的に魅惑してきて、世の男たちは一瞬で落とされる。はっきり言って、シェラはエロいとは言い難い容姿なのだ。あんまり情欲を掻き立てられない。その清楚可憐な容姿は、正に『普通に可愛い』だった。
だがそれじゃ世の男は満足しないようで、死神だということを知ると、恐怖が勝って逃げてしまう場合がほとんどだ。だから付き合ってくれないのだ。死神の『付き合う』とは、当然、両方が認可していない場合は成立しない。
「――へえー。結構いろいろ決まりがあるんだな。特殊な血とか、他の死神とかにも会ってみたいな~。『エロい』んだろ?」
「ええ。とっても『エロい』わ」
「うわお、可愛い子から直で言われると、ちょっと……」
「どうしたの?」
「いやいや! 何でもないですけど! それでその……付き合うのは、やっぱり俺じゃなきゃダメ?」
「ダメ」
「それは、
「やっぱり他の男は怖がってしまうの」
「いやそれでも俺以外にいるだろ……」
「みんな気持ち悪いから。あとめんどくさい。……というより、時間がないの。あなたなら大丈夫そうだから」
「ああ、なるほどね。確かに俺は君に一目惚れ惚れまくってるけど、あのー。交際して、更に同棲ってことだよね? 地球でも月でも暮らせるって言ってたけど、俺んちは狭いし。それに俺、月に行くのは、なんだかすごく怖いんだけど」
「大丈夫。あなたの家で暮らさなければいいだけだわ。他の家を探せばいいの。というか、あなたの家、あなたを連れ去るときに破壊しちゃった。時間がなかったから、ね。許して」
「可愛い! ――じゃなくて。俺の家を破壊? こんなに華奢な女の子が? アパートだよ? ……大家さんは?」
「まあ、中にいた人は全員避難させたから無事だけど」
「いや、そういう問題じゃないと思うけど……」
「じゃあさ、買って」
「へ?」
「新しい家を買って、ね❤」
「え、急に⁉ 罪だわー。罪な女だわ。普通死神ってそういうもんか? ……ははは。もう……! 貯金使い果たしてでも、買うしかないっしょ! 行こう!」
「え、今から?」
「行こう!」
口が勝手に、とはこういう事を言うんだろうか。
「わかったわ」
シェラも、やはりすんなり受け入れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます