月詠義塾


 えっ? どう云う事? もしかして……

 お蕎麦を打つの?

 あたしもやってみたいわ。

 だって老舗のお蕎麦屋さんのウインドウ越しでしか視た事がないもの。


 真っ白なサラシを敷いた上に石臼が置かれてお蕎麦の実を挽く所からだわ。

 これって風味豊かでお蕎麦が一番美味しくなる『三たて』じゃない。

『挽きたて打ちたて茹でたて』の三拍子揃った老舗お蕎麦屋さんみたいに薫り豊かな最高な布陣。

 石臼はあたしが以前視たお蕎麦屋さん程は大きく無いけど、それでもずっしりと重量感の在る立派な物だわ。

 当然のように彩華さんが石臼を準備してるのってお蕎麦はいつも自家製で打ってるって事で良いのよね?



「弥生。そんなに口を開けたままだと馬鹿みたいに視えるから慎みな」


「あっ――はい……驚きました。あたしは乾麺のお蕎麦を茹でるとばかり思っていたので」


「乾麺の蕎麦は家では滅多に茹でないな。この辺りは農家ばっかりだろ。それで各家が自家用にって違う野菜や作物を作ってるんだよ。それを融通し合うのが普通で収穫時期にお裾分けして貰ったり、ここらの家はみんな自家製蕎麦を打ってるよ」


「人と人との繋がりを深く感じるお話しですね。素敵です」


「田舎ってのはそんなもんなんだよ。昔からの風習みたいな事で協力して暮らすってのが当たり前になってるだけなのさ」


「素晴らしいですね。あたしの住んでるマンションなんて顔を会わせればご挨拶はしますけど、お隣さんでもご近所付き合いって云う感じでは無いから人との繋がりって感覚は希薄なんですよね」


「都会はそうだって云うねぇ。あたしゃぁそっちの方が想像し難いがね」


「お義母さんの世代だとちょっとそう云う感覚は薄いと思うわね。私は学生の頃のお友達でマンション住まいの子も居たから少しは解るかな」


「時代は変わって遷ろうものだからその時々の合理性ってのは解るけどねぇ。それは善し悪しで判断する事では無いし、結局のところ地域性って事なんだろうよ」


「そうね。纏めちゃうとそうなるけど、私はここでのご近所付き合いって好きよ」


「それも多様性って事ですよね。両方共に一長一短は在ってどちらが優れてると云う事では無いですし」


「そうだねぇ。両方を知ってる事が重要だねぇ。他人在っての人付き合いだから距離感が大事なんだよ」


「ありがとうございます。勉強になります」


「何でも大袈裟なんだよ。お前さんは。ところで蕎麦を打った事は在るかい?」


「お恥ずかしながらお蕎麦は打った事ないです。良かったらご指導下さいますか? やってみたいです」


「そうかい。それじゃぁ彩華は山芋を卸してくれるかい? あたしは弥生と粉に挽くからさ」


「は~い。了解よ。結構、力仕事だから頑張ってね。弥生ちゃん」


「はい。是非ご指導下さい」



 お蕎麦を打つ分担は師匠の鶴の一声で簡単に決まって、あたしはお蕎麦の実を挽く事になったわ。

 もう気分的には板前服を着て柳葉包丁を砥石で丁寧に研いでるみたいな?

 いまはお蕎麦を粉にするから包丁なんて全く使う必要は無いのだけど、板前服にはセットってイメージじゃないかしら?


 石臼を廻すのは初めての経験で見様見真似だけど、真ん中の穴にお蕎麦の実を少しずつ落としながらゆっくりと廻す。

 想像してたより全然重いのね。

 もっと軽く廻せるのだと想っていたけど、さっき彩華さんが力仕事って云った意味が直ぐに理解出来ちゃった。

 そう云えば以前視た事の在る老舗のお蕎麦屋さんでは勝手に石臼が廻ってたわ。

 あれって電動のモーターで廻してるのだろうけど、重労働だからって事なのね。

 もっとも一日に何十人前ものお蕎麦を打つのだから、機械で自動化した方が楽だし結果的に人件費も浮く事になるわよね。


 少し挽いただけで額には薄っすらと汗が滲むのが判るわ。

 あたしは汗をハンドタオルで拭いながら一心不乱に石臼と向かい合う。


『あたしを甘く見ないで貰えるかしら? 石臼なんかに負けないんだからねっ!』


 アナタ ワ ナニ ト タタカッテル ノヨ?

  ヘンナ コ ヨネ。


 道具の石臼に負けたらあたしって女が廃るじゃない。意地よっ意地!


 マァ イジナンテ ドーデモ イイケド セイゼイ ガンバリナサイナ。


 頑張っちゃうわよぉ。

 それで美味しいお蕎麦を打って璃央さんを唸らせてあげるんだからっ!


 石臼でお蕎麦の実を挽いたらふるいにかけて、二割分の小麦粉と一緒に練り鉢に移した。

 お水は少しずつ差し入れ、指先を立て力を掛けないようにしながら蕎麦粉に水分を含ませて行く。

 この時に摺り卸した後に当り鉢で滑らかにした山芋も混ぜ合わせるみたい。

 蕎麦粉に満遍なく水分を含ませたら今度は練る工程に移ったわ。


 ここからは力を込めてダマにならないように掌の付け根に体重を乗せ、両手で確りと捏ねるようにして練って行くのが師匠から教わったコツなのだそうだ。

 陶芸の粘土を練るのと同様にって比喩で教えて戴いたけど、肝心の粘土をあたしは練った事が無いからそこはそう……もう何となくのイメージでやってみるしか無いわ。

 側で師匠に視ていて貰えるから、失敗しそうなら駄目出しをしてくれる筈だしね。


 いままで気軽に食べてたけど、お蕎麦を打つって大変だったのね。

 粉ものだからうどんやラーメンの麺みたく力を込める事でグルテンを出してあげて、コシのある麺に仕上げるってイメージだと思うのだけど合ってるかしら。

 あたしは時間が経つのも忘れて一生懸命にお蕎麦の生地と対峙し、やっとそれらしくなると師匠に確認して貰い、練り上げる工程は終了し次の工程となる延す作業に進める事となったの。


 ここで登場するのが延し板と呼ばれる大きな俎板。

 厚みは三センチ程で畳の半分くらい在る、ビックリする大きさの木の俎板ね。

 均一にお蕎麦を延すのに必要な大きさなのだろうけど、初めて視るからその大きさに驚く他ないわ。

 延し板に打ち粉をすると生地を載せ、最初は掌の付け根で端っこに亀裂が出来ないようにじんわりと体重を掛けるように丸く延ばす。

 ある程度の面積まで拡げると掌から麺棒にチェンジして、時々打ち粉しながら本格的に延すのだけどこれがまた一筋縄ではいかないのよ。

 全体が均一の厚みになるように慎重に慎重を重ねるって感じでゆ~っくり。

 元々丸い生地玉だから長方形に延されてくれなくて丸いままだから、それが心配になって師匠に聞いてみたの。

 曰く、この段階では丸く延していても良くて、端っこに亀裂が入らないようにする方が重要なのだと教えてくれたわ。


 そして『まだ少し厚いかなぁ』って思うくらいで麺棒に延した生地を巻き付け、延し板の上を転がすと徐々に均一になるみたい。

 アドバイスを受けて早速やってみると、麺棒と生地がパタパタと音を立ててコロコロ転がるのが可愛らしくてニマニマしちゃったわよ。

 あたしの視界の端に居る師匠が呆れたような顔して視てるのだけど……


 その後は巻き付けた生地を一旦拡げ、延したい方向に角度を変えては同じ事を繰り返し最終的に四角く延し上がればこの工程もお終いとなる。

 麺棒に巻き付けてコロコロするのって面白いから癖になりそうだわ。

 あたしの前世はもしかしたら猫ちゃんなのかも知れないなんて云ったら、それはそれで痛いコよね……



「あらぁ。弥生ちゃんってお蕎麦打つの初めてなんでしょ? 上手ねぇ。私が初めてお義母さんに教わりながら打った時は端が切れちゃって、見栄えもお味の悪かったわよ。最初からここまで出来るのって才能なのかしらね」


「そんな事は……あたし解らない事だらけで、以前に老舗のお蕎麦屋さんのウインドウ越しで視たイメージを無我夢中でやってみたんですよ」


「時間は少し掛かったが悪く無いよ。初めてでこれだけ出来るなら数を重ねればその内に早くなるさね」


「これで延しはお終いで、次はいよいよお蕎麦らしく切る工程ですよね?」


「そうよぉ。延した生地を折り畳んで包丁を上から真っ直ぐに当てて、押切りすれば終わり」


「あの板を当てながら切るやつですね。均一の太さに仕上げるのが難しそうで少し緊張します」


「バラバラだと茹で上がりもバラバラになるから、出来るだけ均一にしないと味も悪くなるよ。ゆっくりでも良いからやってみるかい?」


「はいっ! やらせて下さい」



 あたしは名称を知らなかったのだけど、お蕎麦を切る時に使う板の事を駒板って云うらしいわ。

 簡単に云うと包丁のガイド役ね。

 ガイドの駒板に添って包丁の刃を当て、真っ直ぐに切れば綺麗に仕上がると思うけど問題はお蕎麦の太さよね。

 駒板の動かし方で太さが変わっちゃうからこれも慎重にならざる得ないわ。

 初めての体験でも『美味しくなぁれ』って念じながらお料理するのってワクワクして愉しいの。


 それにしても驚いちゃうわよね。お料理に使う調理道具は何でも揃ってるなんて。

 お蕎麦の生地を練るのに使った練り鉢とか、いま使ってる駒板や中華包丁をもっと大きくしたみたいな巨大な刃の包丁とかね。

 これってもう包丁じゃなくて武器みたく思えて来るから不思議で、さっきの延し板を盾代わりにしたらもう戦国時代に迷い込んだのかって感じじゃない?


 やっぱりこう云う道具や昨日の釜土みたいな器具は一般家庭では無いものよね。

 あたしは初めて使う道具ばかりで、それだけに凄く良い経験をさせて貰えてると思うから感謝だわ。

 変な事を云うようだけど、石臼が在ったのだけは違和感が無かったのよ。

 やっぱりお家の佇まいのイメージから在って当然みたいな?

 これはあたしの偏見なのかも知れないけどっ。


 サクっトンっ………………サクっトンっ………………サクっトンっ……サクっトンっ……サクっトンっ……サクットンっサクットンッサクットンッサクットンッサクットンッ


 段々とリズミカルになって来て愉しくなって来たわねぇ。

 この調子で包丁の音をリズム好く……

 切る幅には注意を払わないと、ここまでの工程が台無しになっちゃうからね。



「徐々に良い音になって来たねぇ。でも調子に乗るんじゃないよ。何でも慣れた頃にやらかすもんなんだから」


「そうそう。私も初めは慎重に切るのだけど段々太さがバラバラになっちゃうのよ」


「はい。そこは気を付けて切ってます。どこかピアノのレッスンと似てますので」


「弥生ちゃんはピアノ弾くの? でもレッスンと似てるって想像がつかないわねぇ」


「レッスンで初めて弾く曲や苦手な旋律は、テンポを落として反復練習するんですよ。そうやって確実に弾けるようにして、段々テンポを速くしても弾けるように練習する方法が在るんです」


「あぁ。なるほどね。包丁の使い方と良く似てるわね」


「技術や考え方ってのは各々に特化してても違う側面も必ず在るんだよ。だから弥生みたいに自分の得意分野に置き換えてイメージすると、上達するのも早いもんなのさ。覚えて置くと良いさな」


「お義母さんもそうやってイメージするのね。だから何をやっても器用に出来ちゃう。私も勉強になったわ。ありがとう、弥生ちゃん」


「そんなそんなです。いつもあたしがやってる事を云っただけなんですから。お礼なんて」


「凄いわねぇ。やっぱり弥生ちゃんもお義母さんと同じで感覚の人なのよ。そう云うのって私みたいな凡人だと教えて貰えなきゃ気が付かない事なの」


「ん? 彩華や。そんなものなのかい? あたしゃ普通にしてるだけなんだがねぇ。お前だって飲み込みは悪くないだろ。改めて考えなくても同じような事はもうやってるんだよ。あたしや弥生とはやり方が違うってだけで、それも多様性って事で納得しとけば良いさね」


「そうなのかしらねぇ。それなら嬉しいのだけれど」


「あたしからしたら彩華さんに教わりたい事だらけですよ。ご指導お願いしますね。ふふ」



 あたしと彩華さんは師匠のお弟子さんみたいね。

 そう云う事は彩華さんが兄弟子ならぬ姉弟子よね。

 ここは宛ら『月詠塾』だわ。

 そうねぇ……月詠義塾って命名しちゃいましょっ!

 もちろん塾頭は月詠 じゅくお師匠様よ。

 そして栄えある月詠義塾の第一期生は彩華さんで第二期生はあたし。

 彩華さんみたいな素敵な方と姉妹弟子なんて最高よね。

 これを機に彩華さんをいっぱい見倣って女を磨かせて貰わなきゃ。


 祝福のファンファーレが鳴り響き

『神駆絽 弥生は月詠義塾 第二期生となった!』

 な・ん・て・ね。

 

 あっ――ちょっとズレちゃった……

 さっき云われたばかりじゃないの。

 慣れた頃に失敗するから気を付けなさいって。

 いまはお蕎麦を切る事に集中よ。集・中っ!



「戴したもんだよ。あと何回か打ってみれば教える事なんてなくなるってもんだ。弥生は習うより慣れよってのを地で行くタイプなんだねぇ。彩華や。お前も越されないように精進するんだよ」


「そうね。頑張らないといけないわね。私は才能より努力の人だもの」


「弥生は特に勘が良いからねぇ。彩華も悪くないが互いに切磋琢磨するのも悪くないさね」


「はい。彩華さんをいっぱい見倣っちゃいます」


「私だって負けないわよぉ。簡単に越されちゃったらショックじゃない。ねぇ弥生ちゃん。ふふふ」


「あたしには彩華さんは高い壁ですよ。更に高い壁の婆ぁばも控えてますし。ご指導宜しくお願いします。ふふ」


「あたしを褒めたって何も出て来やしないよ。あんまり揶揄うんじゃないよ」


「あら。残念。お義母さんからご褒美を期待したのにぃ。なんて」


「そんな易い褒美を強請ってどうすんだい。全く」



 この軽妙な遣り取りを交わす軽口って、師匠と彩華さんが仲良しなのは一目瞭然だけど、やっぱりお嫁さんと姑の会話って感じは薄くてお友達同士みたいよね。

 ここに来てお知り合いになってから何回も感じるけど羨ましくなっちゃうわ。

 あたしも混ざりたいって……いつかきっと……って。



 初めての経験だから必要以上に慎重になってしまい、時間も掛かり過ぎかもだけど、お蕎麦も切り終わってホッと一息吐けるわ。

 一番肝心で重要な太さもバラバラになって無いと思うわよ。

 それじゃぁ早速師匠に見聞して戴きましょ。



「出来ました。少し慎重になっちゃいましたけど、お蕎麦切りって愉しいですね」


「ずっと視てたけど良く出来てるじゃないか。あとは打ち粉をこうやって――叩いて落としたら――この生船に入れとくれ」


「やっぱり打ち粉って考えてたより多いんですね。もっと軽く落とす程度かなって思ってました」


「このくらい打ち粉しないと、延してる時に棒にも板にもくっ着くんだよ。それに蕎麦切りした切り口から乾燥するから叩いて満遍なく塗すには丁度良いのさ」


「勉強になります。昔から変わらない事って理に適ってるんですね」


「無駄なように感じても昔からの事は何かしら理屈が在るもんだよ。全て古いやり方が正しいとは云わないが、知って置いて損はない筈さね」


「そうですね。基本が解らないと新しい方法や工夫も浮かばないですものね」


「そうそう。どんどん便利になって行くけど、昔からの作り方って見直されてるもの。ご飯を炊く時の炊飯ジャーだって、釜土炊き風ってセールスポイントになるでしょ? 昨日みたいに釜土炊きのご飯を食べると実感しちゃうわよねぇ」


「それって解かります。いまの技術でいにしえの製法を再現する事ですよね。手間を出来るだけ省いて良いトコ取りするのって、ズルい考え方かも知れないけどちょっとお得感が在ると思います」


「完全には再現出来ないけどそうよね。家の炊飯ジャーは釜土炊き風が売りのを使ってるど、釜土で炊いたご飯とは雲泥の差が在るもの」


「一般家庭では食べ比べなんて出来ないですから贅沢ですよぉ」


「それもそうね。ふふふ。この家には古いものだけど贅沢な設備が整ってるからそれに慣れちゃったのね」



 大きい延し板を囲むようにして、お蕎麦の打ち粉を叩く工程を三人でお話ししながら作業してるから、まるで井戸端会議みたいで愉しいわね。

 切ったお蕎麦を全て生船に載せ終わると、最後の仕上げでいよいよお蕎麦を茹でて盛付けするお料理のお時間よ。

 お蕎麦を打つのがお料理のメインの工程になっちゃったけど、滅多に出来ない体験をさせて貰えて嬉しかったわ。

 あたしがお蕎麦を一心不乱に打ってる間に、彩華さんはお出汁や食材を刻んだりって下拵えをしてくれてたみたいなの。

 もうお蕎麦を茹で上げて盛付けるだけになってるんだから、お蕎麦打ちに時間が掛かったのは一目瞭然ね。

 お台所にはお出汁の良い薫りが漂って、営業前のお蕎麦屋さんが仕込みをしてる時間に前を通るのと同様に『お蕎麦を食べたい』って思っちゃう感覚とシンクロしてお腹が鳴ってしまいそうよ。

 そんな事を考えてると、思わず眼を疑うような物が視界に飛び込んだの。



「うわぁ。こんなに大きな広口のお鍋が在るなんて凄いですね。たっぷりのお湯で茹でるとお蕎麦も美味しくなりますけど、いまはびっくりする方が勝ってます」


「普通のお家じゃここまで大きいお鍋って使う事は少ないと思うけど、この家は家族が多いじゃない? だからお蕎麦もそうだけど麺類を茹でる時はこの大きなお鍋でするのよ」


「人数分を一度に茹でないといけないから、このくらいの鍋じゃないと追っ付かないんだよ」


「そうですよね。お蕎麦屋さんと同じくらい一度に茹でるとなると、このくらい大きなお鍋じゃないとですね」


「それにご飯って、皆で一緒に食べた方が美味しいじゃない」


「家族で一緒に食べると美味しいですね。ところで彩華さん、このお茄子は揚げるのですか?」


「そうしようと思ってるわ。この時期のお茄子は美味しいし、少し揚げ物も在った方がお腹の持ちも違うから。揚げ玉でも良かったのだけど、盛付けも綺麗になるし素揚げにしようと思って」


「想像するだけでもお腹が鳴っちゃいそうですよ」



 あたしが夢中でお蕎麦を打ってる時にも彩華さんは、皆が美味しくお食事出来る工夫をあれこれ考えて怠らないのには頭が下がる想いよね。

 冷たいとろろのお蕎麦に薬味の香りと素揚げしたお茄子を組み合わせて、スグにお腹が空かないように両立させる気遣いも素敵っ。

 それでいて重くもならないから『丁度良い塩梅』なのだと感心しきりよっ。

 やっぱり場数と云う経験値もあたしと違うから流石と云うべきね。

 姉弟子で在る彩華さんのレベルの高さを改めて実感するわ。

 少しずつでも頑張って追い付けるようにならなくちゃっ。

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