後ろ髪
師匠や彩華さんの申し出で最寄り駅まで送って戴ける事になり恐縮なのだけど、とても暖かいお気遣いでも在るからあたしは有難く甘える事にしたわ。
こんなにも良くして貰ったら本当に帰りたく無くなっちゃうじゃない。
もうグイグイ後ろ髪を引かれる想いだけど帰らなきゃいけないの。
向こうに戻ったら、またいつもの時間に起きて簡単な朝ご飯を摂り満員電車に乗って会社でお仕事するって単調な毎日よねぇ……
お仕事はそれなりに愉しくて遣り甲斐も在るけど、何だか色褪せて感じてしまう。
普段の日常に戻ったら忙しなさに埋没して、こんな事を想う余裕も無くなってしまうのはちょっと嫌だわ。
でも、もし……もしもよ?
あたしがここで暮らす事にしたら出来るお仕事って何か在る?
経験は無いけど師匠に弟子入りして技術を学ぶ?
うーん……現実味は限りなく透明に近くて笑い話みたいだわ。
だって一人前の技術が身に着くまで師匠におんぶに抱っこで、ご迷惑になってしまうのは必須だもの。
夢でも在るお料理屋さんを開店するにも、現状ではあたしの貯金だけじゃ到底無理なお話だわ。
それじゃお祖父様のお仕事を……
う~ん。これも力仕事が多いと思うから無理そうだわ。
無難にこの辺りの会社に転職するとか?
それじゃぁ会社とお仕事の内容が変わるだけだし。
良いアイディアが閃くような予感もしないし、帰ってから改めてゆっくり考えてみようかしらね。
「弥生ちゃん、どうしたの? どこか心ここに非ずって感じよ」
「済みません。またちょっと考え事してたみたいです。失礼ですよね。ごめんなさい」
「そんな事は良いのよ。それで何を考えていたの? みんな居るのだから文殊の知恵って事も在るじゃない? 云ってみちゃったらどうかな?」
「そうですね。凄く漠然として恥ずかしいのですけど……帰りたく無いなぁって考えちゃってですね。それでどうしようかな? って」
「そうなの? それじゃぁ、明日にする? 今晩もう一泊して明日に帰る事にしても良いんじゃない」
「それは魅力的なお誘いなんですがそう云う事では無くて。もっと根本的と云うか……」
「弥生。お前の云いたい事は何となく解かったよ。でもなぁ、それを決めるのはお前さん自身なんだよ。自分で確り考えて出した結論ならあたしらは協力を惜しまないさ。これだけは覚えて置くんだよ」
「はい。あたし自身の事ですので確り考えてみますねっ」
「そうね。ゆっくり考えて、結論は急ぎ過ぎないで良いのよ」
「婆ぁば、彩華さん。本当に有難う御座います」
「何を畏まってるんだい。後悔しないように考えれば良いだけだよ」
やっぱりそうよね。
師匠もゆっくり考えなきゃ駄目って云うし、あたしもそう思うわ。
いまは頭を切り替えてあと僅かな時間だけど、この居心地の良い場所を満喫する事にしましょ。
お気楽ですけどねぇ。
そう云えば一昨日初めて伺った時にお庭の写真を撮ろうって思ってたのよね。
昨日は色々在ってすっかり忘れてたけど。
「おねぇちゃん。おとなの おはなし おわったの?」
「そうね。紫音ちゃん、お話しは終わったわよ」
「おにわで あそぶの。いっしょだよ。ママぁ。いいでしょ?」
「弥生お姉ちゃんが良いって云うなら良いわよ」
「おねぇちゃん。いい?」
「勿論っ! 良いわよ」
「リオにぃも いっしょに いくのよ」
「分かったよ。綾音、俺も一緒に行くからそんなに手を引っ張るなよ」
「それでは少し素敵なお庭を散策させて貰いますね」
「あぁ。好きに行っておいでな」
「紫音に綾音。悪戯したらおやつは抜きよ。解かった?」
「「うんっ!」」
あたし達は早速お庭に出て散策させて貰う事になったわ。
と云っても散策するのはあたしだけだと思うけどっ。
紫音ちゃんは玄関を出るなり駈け出して、それにを綾音ちゃんも吊られちゃったから『仕方ないな』って感じに璃央さんも追い駆けて行ってしまったの。
もう最初から別行動になっちゃったわよ。
今日は紫音ちゃんとも遊びたかったのにぃ。
でもお庭だから直ぐにでも合流出来るわよねっ。きっと。
「おねぇちゃぁ~ん。こっちこっち。はやくはやくぅ」
「ちょっと待ってねぇ。直ぐに行くからぁ」
「しおねぇ すぐあそこ いくのよ」
「あそこは紫音ちゃんのお気に入りなのね。何が在るんだろう」
「つるさん いるの。しおねぇ だいしゅき なの」
「ツルさん? あぁ。あれね。視えたわ。鶴に剪定した植木の事ね」
「しぇんてえ? わかんないわ。なぁに?」
「あら。また難しく云っちゃったわね。剪定っていうのはね、あんなふうに植木を切って鶴さんの形とかにする事を云うのよ。本当の意味では枝や葉っぱを切って整える事なんだけど、まだ難しいわよね?」
「あれ じぃじが しゅるの。パチパチって しゅるのよ」
「へぇ。凄いわねぇ。お祖父様がお手入れさせてるのね」
「そうなの。じぃじ すごいのよっ。なんでも できちゃうの」
凄いわぁ、お祖父様がこの素敵なお庭のお手入れされてるのね。
お仕事がお休みの日にされてるのだと思うけど大変じゃ無いのかしら?
きっとご趣味を兼ねてないと続かないわよね。
それにしても凄い技術だと思うわ。
あたしには鶴の姿にするのに、どうやって枝を剪定するのかイメージすら浮かばないのよね。
真っ白なカンバスに絵を描きたいけど、いくら眺めても構図が浮かんで来ないような感じって云うのかな?
それも立体的にイメージして形にする?
やっぱり駄目だわ。あたしにはその感覚すら想像も出来ないわ。
「おねぇちゃん。みてみてぇ。じぃじパチパチすると とりさん なるの」
「こらっ。紫音。そこに入って踏み荒らすと婆ぁばに怒られるぞ。こっち来なさい」
「はぁい」
「まだ散策って程して無いけど素敵なお庭よね。憧れちゃうわ」
「見慣れてしまったけど、改めて眺めると凄い庭だよね。偶に慎爺ぃや婆ぁばのお弟子さん達も手伝ってるけど、殆んど慎爺ぃ一人で手入れしてるから頭が下がるよ」
「これだけ広いお庭で植木も沢山あってそれだけでも驚くのに、きちんとお手入れまでされて凄いわ。これからの季節は直ぐに枝や葉っぱが伸びちゃうだろうから、もっと大変になりそうね」
「そうだなぁ。今頃から秋までは週末になると一日中手入れしてる姿を視るかな」
「やっぱり時間も掛かるのね。お祖父様はお庭弄りがご趣味なのかしら?」
「う~ん。嫌いでは無いだろうけど、どっちかって云うとデモンストレーションかな? 慎爺ぃは宮大工が本業だけど庭の仕事も請け負ってるから、自分の家の庭を手入れしてないと仕事に影響して来るんだと思うよ」
「あぁ。なるほどねぇ。これだけ素敵なお庭を観たら依頼したくなる気持ちも良く解かるわ」
「慎爺ぃの仕事柄も在るけど、穏やかな人だから顔も広いし信頼もされて仕事の依頼は多いんだ」
「建築業に携わると様々な業者さんとのお付き合いも在るわね。材料の問屋さんやメーカーさんもそうだけど、人が住むにはライフラインは必須だもの」
「そうだね。永年の付き合いも在って融通したりされたりって関係も在るって云うし」
「それはどんなお仕事には多かれ少なかれ在る事だけど、永いお付き合いするには大切な事よね」
「ねぇね。あっちに おはな ありゅの。いこっ」
「そうね。あたしも折角だから色々観てみたいわ。案内してくれるかな?」
「「うんっ!」」
それからゆっくりお庭を眺めながら、スマホでカシャカシャって写真も撮ったりして散策したわ。
紫音ちゃんも綾音ちゃんもあたしに色々観せたいみたいで急かすようにするけど、ここは心を鬼にしてマイペースで視せて貰ってるわ。
こんなに素敵なお庭は、向こうに戻ってしまったら大富豪のお屋敷くらいだろうし、ましてや自由に散策なんて出来ないもの。
そんなの勿体ないじゃない。
璃央さんは何も云わないけど、あたしの眼の端っこに苦笑いしてるのがチラチラ過ぎるから乗り気じゃないのは解かっちゃうわよぉ。
もう何よっ。もっと愉しそうに付き合ってくれたって良いじゃない。
これだから男の人って……しょうがないわよねぇ。
だから。『少しくらいあたしの我儘にも付き合えぇ』って口にも顔にも出さないで云ってやるの。
「お義母さん。今日はどうしましょうか?」
「どうするって何をだい?」
「弥生ちゃんの事よ。最寄りの駅だとローカル線じゃない。電車の本数も少ないし乗り換えも大変でしょ。だからターミナルの駅までお見送りに行かない?」
「なんだい彩華。あたしゃぁ、最初からその心算だったんだが。だから子供達の玩具の話しもしたんだけどねぇ。こんなに察しの悪い彩華も珍しいよ」
「あらぁ。ごめんなさい。私ったら色々と考えながらお話ししてたみたいで上の空だったのかも」
「何を考えてたのか知らないが構いはしないよ」
「いえね。弥生ちゃんに口を滑らせないように注意深く言葉を選んでたのだけど、意識がそっちに集中し過ぎたみたいで。これじゃ駄目ね」
「そんなに難しく考える事もないさ。あの人があそこまで云ったんだから、ある程度までは解禁されたって事だよ。だから気楽にいつも通りにしてれば良いさね」
「そうね。不自然にならないように少し緊張を解かないとね」
「そう云う事だよ」
ケースバイケースだけど言葉の裏を汲み取るって難しいわね。
お義母さんに云って貰えなかったら、お義父さんの真意を汲み
何でも表裏は在るものだけど、私と透真さんはお義父さんとお義母さんみたいな関係になれるのかしら?
出来ないって決めつけるより、出来るんだって思って努力する方が良いに決まってるわね。
だから見倣って私達もそうなれるように頑張っちゃいましょうかねっ。
お庭の散策を満喫したあたしは足取りも軽くご機嫌麗しゅうって感じよ。
自分自身に使う言葉じゃないけどね。
良いじゃない。あたしの内でしか使ってないのだもの。
アタシ ガ キイテルノ ワスレテナイ?
アナタはあたしの一部なんだから除外してるに決まってるじゃない。
そんなの気にしてたら何も出来なくなっちゃうでしょ?
あたし的にそんなの願い下げだもの。
タイミング良く突っ込んでくれるし、あたしを揶揄いたいだけなんでしょ。
ソーネ。アナタ ヲ カラカッテ アソンデル ダケヨ。
やっぱり正解ね。素直なのも可愛らしいわよ。ふふふ。
「弥生ちゃんご機嫌ねぇ。何か良い事でも在ったの? 璃央君と……なんて」
「良い事ありましたよぉ。璃央さんとでは無いですけどねっ」
「あらあら。もう弥生ちゃんには敵わないわね。ちょっと揶揄った心算なのに逆に返
されちゃった。学習能力が高いのね。私ももう少し捻って抉らないと駄目ね」
「彩華さん抉るって……お手柔らかにお願いしますね。ふふふ。」
「なに女二人で漫才みたいな事を云ってんだい。朝から姦しいんだよ。全く」
「姦しついでにお義母さんもどぉ? 混ざってみない」
「お前さん達には着いて行けないさね。庭で何か面白いものでも視つけたのかい?」
「素敵なお庭を散策させて貰って満喫できたので嬉しいんです。それとスマホでいっぱいカシャカシャしましたし」
「写真に残すようなものは何にも無い筈なんだがねぇ。まぁ物珍しいだけなんだろうけどな」
「そんな事は無いですよ。いまこの瞬間にしか視れない、視逃せない彩りを写真で残すんです。改めて写真を観ながら想いを馳せて過ごすのって素敵じゃないですか」
「それって好いわね。私もそれに倣ってみようかしら。日常の中に在って何となく見過ごしてしまいがちな事に気を留めて時間を切り取るって感じね」
「凄く素敵な云い方ですね。彩華さんが輝いて視えます」
「何だい何だい、二人して。そりゃあ風情は在るけど、改めて云うような事じゃ無いだろうに」
師匠は半分呆れ顔に、相変わらずのぶっきら棒な物言いでバッサリ斬られちゃったわね。
でもこんなふうにバッサリされると逆に清々しくなるから不思議だわ。
彩華さんもニコニコして愉しそうだし。
璃央さんはどうかしら?
そうねぇ。我関せずって感じで紫音ちゃんと綾音ちゃんと遊んでるけど、口元と眼は笑ってるように視えるのはあたしの気のせいかな?
なんとも云えない微妙な感じだから保留って事にしましょ。
でも気にして貰えないのはちょっと悔しいじゃない?
ほんの少しだけ悪態吐いてあげましょっ。
『お~い璃央ぉ。あたしは今日帰っちゃうんだぞぉ。拗ねちゃっても知らないぞぉ』
あれ? こっちを向いたわ。
初めてお泊りした日の晩御飯の時にも同じような事が……
この既視感は確かにそうだったわね。
あたしがこうやって心の中だけで不満を云うと、振り向いてくれて不思議そうに視るのよね。
テレパシー? それともシンパシー?
シンパシーなら嬉しいけど。
ねぇ。あたしってサイキック的な何かって在るの?
ソンナノ アルワケナイ ジャナイ。アキレテ モノ モ イエナイワヨ。
そーですよねー。
それじゃシンパシーの方で確定よっ!
そう云う事にしときましょ。
アーハイハイ。コンナ アホナコ ガ アタシ ノ イチブダナンテネ……
これがあたしなんだから諦めて。解ってるでしょ?
揶揄われてばかりじゃ悔しいから、これからはあたしもクーデレさんを揶揄ってあげるのよ。
あれ? これってもしかしなくてもノリツッコミじゃ無いかしら?
でもこうやって距離感を試行錯誤しながら、新しく――は無いけど新たなお友達って感じでお願いね。
だからトライ&エラーで行きましょ。
時々喧嘩なんかもしながらねっ。
《ハァ。エラー&エラー ニ ナラナイト イイケド》
「そうだっ。弥生ちゃん。今日は新幹線を使って帰るのかな?」
「さっき少し調べてみたのですけど、特急でも帰れるみたいなので新幹線は使わないで帰りたいですね」
「新幹線は嫌いなの?」
「う~ん……新幹線を使うとあっという間に着いちゃうって云うか、お仕事で出張の時なんかで使う事も在るので、折角の旅行気分が台無しになっちゃうと云うかですね」
「そう云うことね。お仕事とは切り離した感覚で居たいって事でしょ?」
「そうなんです。新幹線だと移動の手段みたく感じて風情が無くなっちゃう気がするんです。だからお仕事ではあまり使わない特急電車で特別な想い出にしたいって」
「それはあたしも賛成だねぇ。新幹線って奴は速いのは良いけど快適過ぎるって云うか、どうにも好きになれないんだよ。旅は少しくらい不便な事が在って良いものなのさ。そんな些細な事が彩りを添えてくれるってもんだよ」
「お義母さんは流石ね。ひと言ひと言に重厚さが在るわ。歳を重ねないと醸し出せない味よね」
「そうやって年寄り扱いするんじゃないよ。彩華」
「違うわよぉ。私、これでも褒めたのよ。賛辞なの」
「物は云いようだねぇ。あんまり親を揶揄うもんじゃないよ」
「照れちゃって。もう。可愛らしいんだから。反則よ」
あたしから視ても師匠が照れてるのは判ったわ。
だって照れ隠しが全く隠れてないんだもの。
それを彩華さんは逆手に取って揶揄っちゃうなんて本当に仲良しさんなのよね。
彩華さんにしてみれば絶好の燃料投下タイミングだったって事だわ。
こんな関係って憧れちゃうかも。
あたしも揶揄ったり揶揄われたりしたいなぁ。
師匠と彩華さんにはずっと揶揄われてばかりだから反撃もしてみたいし。
今度来る時には必ずリベンジするわよっ。ふ・ふ・ふ。
帰りの電車の段取りなんかの打ち合わせを終えて、あたしは手荷物を纏める為にお借りしてるお部屋へ戻ったわ。
とは云ってもバックパックひとつ分だから直ぐに終わっちゃうのだけど。
荷物にすると嵩張るヘルメットは持って帰っても使わないし、また持って来る事になるから彩華さんからのご提案に甘えて預かって貰う事にしたわ。
考えてみるとヘルメットを持って電車に乗るのってどこか滑稽かも知れないわね。
出来るだけ手早く荷物を纏めるとお部屋を後にする。
だってそうしないと気が変わってしまいそうだもの……
そしてお部屋から出る前に一度振り返る。
『お世話になりました』とお辞儀と共に呟いて――
ちょっとしんみりした気分になっちゃったから、皆さんがいる居間に戻る前に切り替えて行かなきゃね。
お見送りして貰ってお別れする時の最後のご挨拶は、寂しいなんて顔を視せたくないもの。
だからにっこり笑って。
『また来ますっ!』って。
そう云いたいじゃない。
それがいまのあたしに出来る精一杯のお返しだもの。
「さて。少し早いけど昼食の支度しようかねぇ。それほどお腹も減ってないだろうから軽いものにしようと思うんだが、それで良いかい?」
「そうね。私も賛成よ。折角ターミナル駅まで出るんだからフードコートで何か摘まみたいじゃない。紫音と綾音にもソフトクリーム食べさせてあげたいし」
「彩華や。本音が出てるよ。本来なら自分の事はついでに云うもんだ。それを逆にしたら台無しになるってもんさね」
「あらっいけない。ついつい本音って出ちゃうのね。気を付けないと。ふふ」
「でもいまの彩華さんは婆ぁばに突っ込まれるのを前提で云ってましたよね? それって確信犯ですよぉ」
「そんな事は無いわよぉ」
「彩華さんは偶にこうやって遊ぶ癖が在るんだ。今回は解り易いから良いけど、微妙なのを突き付けておいて、こっちが返しに困ってると拗ねるから悪癖みたいなもんだけどね」
「璃~央~君。それ以上云うと暫く差し入れのお弁当は塩にぎりだけになるけど、それでも良いのかしらねぇ?」
「俺は何も云って無いよ……なっそうだろ? 弥生ちゃん」
「ちょっとおかず無しのお弁当で反省すれば良いと思うわよ」
「弥生ちゃんの許可も下りたし、覚悟なさいね」
「勘弁してくれよぉ」
お昼ご飯は軽いものって何が良いかしらね。
ご飯だから軽過ぎてしまって晩御飯までにお腹が空いたら意味ないわ。
ここは師匠と彩華さんと相談しながら決めるのが良いかな。
「お義母さん。軽いって何が良いかしら? お蕎麦とかお素麺が無難よね」
「そうだねぇ。蕎麦なら自然薯が在ったろ。とろろ蕎麦にでもするかい?」
「良いわね。お腹の持ちも悪くないし。あっちでスイーツを食べたいから丁度良いわ」
「もし冷たいとろろのお蕎麦なら、濃いお出汁の麺つゆに大葉やミョウガ、それに刻み海苔を散らして香味蕎麦にしたらどうですかね?」
「そのアイディアは良いわ。そうしない? ねぇ、お義母さん」
「蕎麦にするかいって云ったのはあたしだから文句は無いよ。紫音と綾音にはお椀に全部盛って食べ易くしてやれば大丈夫だろうよ」
「山葵はおろさないで刻みにしたら香味お蕎麦に相性も好いんじゃない?」
「そう云う事なら自然薯も少し刻んで混ぜてやれば食感も面白くなるねぇ」
「付け合わせにレンコンの甘酢漬けなんかも在ったら、食感も似てますし相性も好いと思います」
「甘酢漬け在るわよ。そう云うのって何かのついでに作り置きしてるのよ」
「流石です。まるでお料理屋さんみたいで圧巻ですね。あたしは一人暮らしだから色々と作り置きしても食べ切れないんですよ」
「一人暮らしだとそう云うものなのかもね。私は一人暮らしの経験はないけど何となく想像出来るわ」
「お弁当用に作り置きするくらいですね。だからレパートリーも狭くなっちゃいます」
「弁当に出来るおかずは定番化してくるもんだからねぇ。あの人や透真の弁当だって味噌汁なんかは市販のお湯を注ぐだけので賄ってるしな」
「あたしもインスタントのお味噌汁やスープは買い置きして、会社のデスクの引き出しに入ってますよ」
「お弁当にお味噌汁って色々と難しいから便利な市販のに頼っちゃうわよね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます