報告と告白 Vol2ー1


 師匠もだけど璃央さんにも圧倒されちゃうわね。

 責任感とプライドを持ってお仕事に取り組む姿勢には尊敬の念を覚えるわ。

 当然、彩華さんにもそう云う所が在ると思うのよね。

 いつも笑顔でフランクな雰囲気を醸し出すから、ストイックさは表立って視せないけど。

 家事全般を彩華さんが引き受けてるから師匠も安心して全力でお仕事に集中できるのだと思うし。


 紫音ちゃんと綾音ちゃんを可愛がるけど、母親として決して甘やかす訳じゃないのもその証拠よね。

 子供を持つ母親と云う認識も覚悟も在って、とても自然に振る舞ってるわ。

 あたしは全てに於いて見倣わなきゃいけない事ばかりなの。

 そうよ。思い立ったが吉日って云うじゃない。

 あたしも少しはストイックになれるように努力しちゃおうじゃないのっ。

 勿論、お手本は師匠と彩華さんよ。

 こんなに素敵な女性なのだから当然ね!



「璃央君は今日はどうするの? 急ぎのお仕事でも在る?」


「急ぎなのは無いかな? でも何で?」


「今日もお夕飯をこっちでしない? ってお誘いでも在るのよ。少しは察してね」


「それはごめん。折角だし邪魔じゃ無いならお願いしようかな」


「了解しました。でも昨晩と違って普通のお夕飯よ」


「それは残念だねぇ。ってのは冗談だけど。毎晩あれ程のご馳走だったら俺の食生活は惨め過ぎるでしょ」


「そうよねぇ。冷凍食品と家からのお裾分けだもんね。だから璃央君が来るとお野菜いっぱいなのよ」


「前に俺はウサギかってくらい野菜のオンパレードだった事も在ったね」


「まぁ。あれはちょっとやり過ぎだったわ。お義父さんと透真さんにも不評だったし」


「どんなお料理が並んだんですか? 興味あります」


「あの時はねぇ、里芋と人参と筍の煮物でしょ。コロッケに付け合わせはオニオンスライスとピーマンとキャベツの千切りを混ぜ合わせてブロッコリーとトマトを添えたわ。それに焼き茄子だったかしら?」


「それは……確かに男性には不評かも知れないですね」


「そうよねぇ。メインに豚の生姜焼きとか、お魚のムニエルだったらセーフでしょうけど」


「婆ぁばは何も云わなかったんですか? お祖父様と喧嘩してたからとか?」


「違うのよぉ。あの日はお義母さんも今日みたいにお仕事してて私一人で晩の支度したのよ。あの時は流石のお義母さんも顔をしかめたわね。あの献立は大失敗よ」



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