報告と告白 Vol1ー2



「そうね。いまは大切な時期ときだもの。あまり揶揄って意識し過ぎちゃって駄目になったら元も子もないわ。お義母さんには私から伝えておくわね。反対なんてされないと思うけど念の為よ」


「そう云えば婆ぁばはどちらに? お台所で晩の支度ならお手伝いしなきゃ」


「今日は彫刻の方のお仕事してるわよ。だからよっぽどの事がない限り声は掛けられないの」


「なるほど。集中力が必要なお仕事ですものね。お邪魔だけはしないようにしなきゃです」


「お義母さんって気に入ったお仕事か、代々の師匠の方々が受け継いで来たお仕事しか遣らないから、私にも現在いまどんなお仕事してるのか解らない事の方が多いのよ」


「徹底してるんですね。芸術家は感性で創造する作品が大多数だと想いますし」


「そうそう。お義母さん自身は職人って云ってるけど、私からしたら芸術家そのものよ」


「職人ってご自身で云うのも戒めって事ですかね? 常に向上心を持って探求を続けるなんて云うは易しですけど、実際には難しい事ですから尊敬します」


「玄関の小上がりにある観音様の事は弥生ちゃんも聞くいたかしら? あれだけ素晴らしい像でもお義母さんには気に入らない所が在るらしいのよ。私から視たら非の打ち所がないんだけど」


「お聞きしましたよ。戒めの為に眼に付くようにしてるとか」


「本当にお義母さんは自分にだけには厳しいのよ。妥協を良しとしないって云うのかな」


「人間とは一生掛けて学んで往くものだって仰ってました」


「ストイックなのよね。でも厳しくないと到達できない領域が在るのも感覚では解かるわ」


「そうですね。お話しを聞いてあたしも見倣わなきゃって素直に思いました」


「璃央君もお義母さんと似た部分は在るわね。だから馬も合うのでしょうけど。ふふふ」


「俺は自分に甘いよ。でも楽な方に往きそうになった時に立ち止まるだけ」


「それが出来るのもストイックって事でしょ? あたしなら楽な方に流されちゃうと思うもの」





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