風の唱と双子ちゃん Vol1ー2
あたしはタンデムシートに跨って遠慮がちに璃央さんの腰の辺りに掴まる。
すると璃央さんがあたしの手に優しく手を添えると、両手をお腹の前まで誘導して掴まらせる。
やだっ……あたしが後ろから抱き着いてるみたいじゃない。
この
もう少しあたしの想いも察してよっ!
女の子なのよ。あたしは。
まだ知り合って間もないのよ。はしたなく想われたら嫌じゃないっ。
でも広い背中が心地いいのよね。
この微妙な乙女心は絶対に理解してくれないでしょうけどねっ!
だからちょっと悔しいぃ。
ヘルメット越しに頭突きして抗議してやろうかしらっ!
もう。どうなっても知らないんだから!
カコンッってシフトする音がした。
そのままクラッチミートしてバイクは動き出す。
疾しるって感じのスピードじゃ無くゆっくりと。
敷地の出口で一時停止して左右の確認をすると今度は一転して疾しり出した。
ほんの少しだけど。ちょっとの間なんだけど。
それだけで感じてしまう絶対的な安心感。
あたしが運転してる時より全然スムーズに疾ってる気がするわ。
雄大な海原を泳ぐイルカのように。
大空に舞い上がる渡り鳥のように。
風と戯れるようにバイクを疾しらせる璃央さん。
それはまるで風が彩づき唄を奏でて聴かせてくれるみたい。
そのハーモニーの
不思議な人だわ。
少しシチュエーションが変わると違う一面を覗かせる。
かと云って掴み処が無いのかと云えばそうじゃ無い。
理由なんて無いけど何となくあたしには解かってしまうの。
「ねぇ。風が気持ち良いわっ」
「ええ? 何だって?」
「だ・か・ら。風が気持ち良いのよっ!」
「そうか? いつもと変わらんぞ」
「あんたねぇ。ちょっと。そこは同意する流れでしょ!」
「俺は正直者なんだよ」
ゴン! ゴン! ゴン!
あたしは璃央さんのヘルメットに頭突きをして抗議する。
「やめろって。危ないからさぁ」
「いいじゃない。痛くなんか無いでしょ?」
「そう云う問題じゃないって」
「だったら素直に共感すれば良かったじゃない」
「無茶云うなよ。しまいに泣くぞ? 俺」
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