第四章 蕩けてそして融かされて
風の唱と双子ちゃん Vol1ー1
あたしの軽口から璃央さんと微妙な雰囲気になっちゃった。
お話しをバイクに振ってくれたから少しは誤魔化せたけど……
ちょっとバツが悪い感じなのはバレバレよね?
下手に取り繕っても墓穴を掘るだけのような気もするし。
どうしようかなぁ。これから。
お散歩しながら師匠のお宅に戻ろうかな?
その前に彩華さんにアプリでメッセージ入れてお野菜とか必要ならお買い物してかなきゃだわ。
「弥生ちゃんはこれからどうする心算? 婆ぁばのトコ戻る?」
「そうしようかなぁって思ってるわ」
「少し……そうだなぁ。十分くらい待ってよ。弥生ちゃんのバイクの試運転も兼ねて送ってくから」
「もう終わったの? でも試運転って必要? 璃央さんが作業したなら完璧じゃない」
「馬鹿な事を云わないでよ。俺だって人間なんだからミスる事だって在る。それにバイクは乗り物なんだし、命だって載せて疾しるんだから、整備が完了したら試運転するのは当然なんだよ。テストもしないで整備が完了したなんて云えるのは責任を放棄したに等しいんだ」
「やっぱりプロって責任感が違うのね。凄いわ。尊敬します」
「そんな大袈裟な事じゃ無くて当たり前の事。それより待てるかな?」
「待てるけど。良いの? あたしって邪魔になってない? あたしだったらお散歩気分で戻る心算だったし」
「問題無いよ。何度も云うようだけどテストのついでに送って行くだけだから。気にしないでよ」
「うん。それならお願いします。彩華さんにお野菜とか必要なの無いか確認しながら待ってるわ」
へぇ~。璃央さんがプロフェッショナルな真剣な眼差しで語ってくれた矜持は流石って感じ。
妥協はしない姿勢って、その気持ちが解るから凄く感銘を受けるわ。
これもあたしの知らなかった璃央さんの一面なのね。
実直な人柄だけどユーモアも在って。
それでいて紫音ちゃんと綾音ちゃんには慈しみを持って接する。
きっとまだまだ色んな彩りを隠してるに違いないけど、それはこれからのお愉しみかなぁ。
この先ずっと魅てたいから。
この先ずっと寄り添って歩いて行きたいから。
やっと交わった路だから一緒にどんな岐路に起とうとも一緒に。
「お待たせ。彩華さんは何か云って来た?」
「ううん。お野菜はたくさん在るから大丈夫だって」
「そうか。それじゃ送ってくよ。後ろに乗って」
「はぁい。でも自分のバイクなのに初めて後ろに乗るわ」
「それは自分のバイクだからだよ。運転するのが当たり前になってるから」
「やっぱりそうよね。あたしの友達にバイク乗る人が居ないのも原因かな?」
「もしかしてバイクのタンデムは初めてとか?」
「そうかも……うん。タンデム自体初めてよ。乗せるのも、乗せられるのもね」
「飛ばさないけど乗ったらちゃんと掴まっててよ。」
「うん。掴まってる。だってちょっとだけ不安だもの」
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