瘡蓋に滲むもの Vol1ー2



 あたしって子供みたい……

 叱られて。しょげて。慰められて。

 いまの璃央さんってどこか父親みたいな感じだけど。

 でもそれは嫌よ。

 だって……それじゃぁ……

 隣に並んで寄り添えない。

 一緒に歩いて行けないもの。


 それは、あたしが子供過ぎるから……

 幼さな過ぎるあたしだから……

 璃央さんは自分を盾にして包んでくれてる。

 それが解らない程あたしは幼くない筈よ。




 何かが違う。

 彼女やよいは違う何かを内包もってる。

 これまで知り合った女性と云うのは二種類に大別出来た。


 一つは婆ぁばや彩華さんのように人間ひととして接してくれる好ましい人達。

 もう一つはメスとして近づいて来て、俺の小っぽけな居場所すら奪おうとする女達クズや、レース活動のスポンサーと称して近づいて来る女達成金


 あいつらときたら、身体は大人に成りかけでも精神的にはまだガキの頃の俺を玩具にしようと上辺だけ言葉を飾り、意に沿わないと貶める為に形振り構わず騒ぎ立てやがる。

 そいつらの残滓がいつの間にか澱のように溜まりやがてトラウマになり、縛り付ける足枷となってどこにも進めない状況に陥いる要因を創った。


 彼女達やつらに共通するのはアクセサリーや玩具のように物扱いで連れ回そうとして、靡かなく飽きれば自分の都合でまるでダストシュートに放り込むように去って行く。

 そんなドロドロの我欲に塗れた存在は、いくら眼を背けても追って来る悪夢以外の何でもない。


 このどちらにも当て嵌まらないのが弥生彼女だ。

 戸惑いも在るけど彼女と話すとずっと前から探してたような気がする。

 彼方の地平線に浮かぶ雲みたいに穏やかで、望郷にも似た不思議な感情が湧き上がり懐かしく想う。

 でも距離感を図り損ねて降って湧いた様インスタントな怒気をぶつけてしまった。

 それは、普段なら慣れ過ぎて「またか」と聞き流し感情に波風すら立たない言葉に過剰に反応した結果だ。

 昨日初めて逢ったばかりと云うのに何かが違うと感じて期待してる俺の彼女への甘えなのか?

 きっと言葉なんかじゃ幾ら重ねても満足いく答えなんて見つからないのだろう。


 俺の頭の中で誰かが云う。

「その疵の瘡蓋は彼女なら癒せる」と。

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