もうひとつの必然 Vol1ー2
「うん。続きね。あれは私達が結婚してから暫くした頃、透真さんのお仕事が忙しくて、
「はい。当然だと思います。そう云うケジメは大切な事だと思います。どうか気にしないで下さいね。彩華さん」
「察してくれてありがとう。その事故の時にあの人は意識が一時的に無くて、まぁ軽い脳震盪だったのだけど。この事故の被害者なのに璃央君は救急搬送されるあの人に、事故現場からずっと付き添ってくれてたの。私は一報を受けて混乱してしまってね。お義母さんに『落ち着きなさい!』って叱られたから少し冷静になれて、一緒に搬送された病院で璃央君と逢ったと云うのが始まりの顛末ね」
「そうですよね。家族が、ましてや旦那様が事故で搬送されたと知らせを受ければ、混乱して取り乱すのは仕方のない事だと思います」
「うん。でも加害者の家族だから取り乱しちゃ駄目なのよ。病室に入るとまだ意識がボンヤリしてるあの人のベッドサイドに璃央君が座ってて、取り敢えず口頭での謝罪をしたのだけど、あの人の事を気遣って『大事無くて良かった』って云うのよ。その後にまるで何事も無かった様にスゥって起ち上がって『ご家族が診えられたので私はこれで』って、それだけ云って病室から出ようと歩き出した途端に、璃央君が崩れるように倒れて意識を失ってしまったの。時間にして数十秒だけど私には凄く永く感じたわ。意識が無かった時間は後でお義母さんから聴いたから知ったのだけど。璃央君は自分の怪我を隠してまで付き添ってくれてたのよ。驚愕したわ。見ず知らずの、しかも加害者にそんな状態で付き添うなんてって」
「誰にでも出来る事じゃないですね。それで先程の恩義を感じてるって話しに繋がるのですね?」
「そうなのよ。私達は直ぐにお医者様を呼んで貰って治療をして戴くようにお願いしたのだけど、ナースさんを含めて誰も彼の怪我に気付いてなかったから、大変な騒ぎになってしまったのよ。結局、璃央君もその場で入院って事になるのだけど、彼ったら肋骨が二本も折れてて、あの人よりも全然重症だったの。璃央君の治療中にこの辺りの土地のヒトじゃ無い事を知って、私とお義母さんは当然ながら入院中の身の回りのお世話や彼のご家族に連絡を取ってお話ししたの」
「もう五、六年前になるかねぇ。これが息子のやらかした事故の顛末なんだが、璃央が退院した後この家で静養して貰う事になって、色々と話してる内に今の所に引っ越して来るって事になったんだよ。そして段々と家族同然って認識から家族って認識になったのが話しの大筋だよ」
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