もうひとつの必然 Vol1ー1


 彩華さんがお盆にお茶の湯呑みと一口サイズの最中やお煎餅と云ったお菓子の載った菓子鉢を置いて座布団に脚を崩して座った。



「はぁい、お茶を煎れて来ました。どうぞ」


「ありがとう御座います。戴きます」


「良かったらお菓子にも手をつけてね」


「はい。まだお腹一杯なものでお気持ちだけ頂戴します」


「それもそうね。私もお菓子まで手は伸びないもの」


「ふぅ。人心地ついたねぇ」


「お義母さん、少しゆっくりして。弥生さんみたいな掘り出しモノを視つけると張り切っちゃうんだから」


「あたし? あたしはどこにでも居る普通の小市民ですけど」


「そんな事ないわ。お義母さんの視る眼は確かなのよ。璃央君と出逢った時もそうだったし」


「そう云えば璃央さんとは血縁関係が無くても家族だって仰ってましたが……その辺りをお聴きしても差し障り在りませんか?」


「構わないよね? お義母さん」


「別に隠す事じゃないし、話して後ろ暗い事も無いから堂々と話せば良いのさ」


「それじゃぁ。確かに璃央君は世間一般で云う親族では無いのね。所謂、血縁では無いって事だけど、彼には月詠家として大きな恩が在るって云えば近いかしらね。私の夫である透真さんの過失から起こしてしまったバイクの事故で、璃央君を巻き込んでしまったのが私たちと璃央君が関りを持った切っ掛けなのよ。ちょっと長くなるのだけど良い?」


「勿論ですよ。あたしからお聞きした事ですから」

 




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