第二章 深い絆への羨望が憧れになる瞬間
師匠のお宅にお邪魔します
「それじゃぁ璃央。あたしらは帰るよ」
「オッケー。今晩は暗くならない内に行けると思う」
「璃央君、それじゃね。お仕事頑張って。また晩に」
「璃央さん修理の方、お手数ですが宜しくお願いします」
「バッチリ仕上げますのでお任せ下さい。また晩にお会い出来ますけどゆっくりして下さいね」
「はい。有難う御座います。お言葉に甘えさせて貰いますね。では失礼します」
彩華さんの運転で、ゆるゆると云った感じで静かに車が動き出す。
紫音ちゃんと彩音ちゃんを起さないように。
ゆっくり。そうぉっと。
師匠は助手席で何やら考えてる感じで唇だけ僅かに動かしてるわ。
本当に良く眠ってるわねぇ。可愛いっ。
あたしはサードシートから覗き込むようにセカンドシートの双子ちゃんを眺めているの。
そっとスマホでカシャッって。
やったわ。お宝ゲットよ。癒されるわぁ。
スマホのホーム画像にしちゃおうかしら。
間違って消しちゃわないようにフラグ付けときましょ。
「お義母さん。晩のメニューどうしましょ?」
「そうだねぇ、若いのが多いからねぇ。確りしたの主体にするとしようか」
「そうですね。まだ時間も在るから家の食材を視ながらでも考えましょ」
「良かったらあたしもお手伝いさせて下さい。少しはお役に立てると思います」
「お前さん料理も出来るのかい? それなら頼もしいねぇ」
「うん。そうだわ! お料理も出来たら花嫁修業も要らないんじゃない? いっそこのまま璃央君と……ねぇ? お義母さんもそう思うでしょ」
「そりゃぁ願ったり叶ったりだねぇ。弥生、ちょっと本気で考えてみるかい?」
「もうその手には引っ掛かりませんよっ。そりゃ璃央さんは良い人だと思いますが、それとこれとは別ですよぉ」
「あらっ? もう学習しちゃったのぉ? 次はもうちょっと手の込んだ変化球で行かないとね。ふふ」
「彩華さんっ。不穏な単語がダダ漏れですって。もうぅ」
師匠と彩華さんったら油断も隙も容赦も無いのだからぁ。
でもあたしだって同じ手にはそうそうねっ。
眼だけ笑ってほんの少し口角を上げた揶揄う気満々な、あの無駄なやる気。
全くぅ……
あたしってこんなに弄られキャラだったかしら?
でも不思議と心地好いのよねぇ。
和むと云うか、馴染むと云うか、安心すると云うか。
そんな抽象的な何かな気がするわ。
あたしは思わず息を呑んでしまった。
『なんて凄いお屋敷なの!?』
立派な門柱から敷地に入ると璃央さんの云ってた通りの御殿が在ったの。
植木の手入れも行き届いて、美しい庭園と御殿と云った構図に眼を瞠ってしまう。
そりゃぁ、京都に在るような寺院の枯山水の砂紋みたく手入れされてないけど、人が住む民家って概念からは逸脱してるわ。
だいたい枯山水の庭園なんて歩く事も出来ないのだから当たり前よね。
それを差し引いても『風光明媚』って形容がどぉーんと翻って宜しいのではなくて?
本当は自然の景観を形容するのに使う言葉だけど。
でもそれ以外には無いって気がするのよ。
あたしの語彙って貧弱なのかしら?
璃央さんの云っていた通りに確かに他所では滅多にお眼に掛かれない美麗な景観だわ。
広いだけでは留まらないお庭には
例えるなら庵とでも云うのかしら?
そうだっ!
茶室という可能性も在るわね。
景観そのものを崩してないし違和感も全くないから、何か必要性があって建てられたものに違いないと思うけど、まさかの巨大なオブジェって事はない筈……
帰る前にスマホに残さなきゃ。
旅の想い出とこの素敵な出逢いの記念に。
あたしの驚きなんかにはお構いなしで、そろそろと車を進める彩華さんはお屋敷の玄関付近に停めてエンジンを停めた。
「それじゃ、先に紫音と綾音を降ろしちゃいましょ」
「あたしらはこの娘達を寝かして来るから。弥生、お前さんは荷物を玄関の小上がりまで運び入れてくれないかい?」
「分かりました。お易い御用です。任せて下さい」
紫音ちゃんと彩音ちゃんをそれぞれ一人ずつ、師匠と彩華さんがそっと抱き上げると少しムズがるように嫌々ってしてるのが何とも可愛らしくて自然と頬が緩むわ。
さっきまであんなに元気だった双子ちゃんなのに、眠ってると本当に天使みたいね。
双子ちゃんを車から降ろしたらあたしの出番よ。
と云ってもお鍋や食器類と少しだけお残ししちゃったお料理を運ぶだけのとっても簡単なお仕事。
玄関の敷居を跨ぎ。
お邪魔しまぁす。
いざっ! って云うのも大袈裟なのだけど。
これが視界に跳び込んで来たら大袈裟にもなっちゃうわよ。
広い土間から続く小上がりには観音様が鎮座していらっしゃる。
繊細な細工彫りが施された木像彫刻の立派なお姿だわ。
これは師匠の作品なのでしょうか?
全高は壱メートル程で、宝物殿や美術館に在っても違和感のない素晴らしい観音様の立像。
とても柔和な慈愛に満ちたお顔や掌や指の角度。
こんなにも間近で拝見するのは初めてだわ。
寺院に安置されてたら畏れ多くて近づく事も出来ないわ。きっと。
こう云う事にあたしは疎いので『何とか観音』みたいな名称は知らないのだけど、それでも御利益の在る凄いものだと云うのは想像に難く無いし理解できるわ。
他にもお華が活けられてたり飾り羽子板や熊手等の縁起物が飾られて、華やかで在りながらも荘厳な佇まい。
且つ清廉な空間に包み込まれるような感覚。
圧巻と云った感じで、玄関の敷居で隔てられた別世界みたいな気がするの。
神社へ参拝に行った時に、鳥居を潜る前と後で何となく空気が変わる感じと云えば解かるかしら?
いつまでも見惚れてしまいそうになる程、眼を離せなくなるわ。
それでも任されたお仕事を優先しなきゃ駄目よっ。
お鍋や食器類は運び入れる度に、チラチラと吸い寄せられるように視線が向いてしまうわねっ。
「独りで運んで貰ちゃって御免なさいね。大変だったでしょう?」
「彩華さん、全然そんな事ないですよ。単純に運ぶだけの事ですから」
「ありがとう。助かったわ。これで最後かな?」
「ええ、そうですね。これが最後になります」
「それじゃぁ、私は裏の駐車場に車を停めて来るわ。お義母さんもそろそろ来ると思うから上がって寛いでてね」
「ありがとう御座います。それにしてもご立派なお屋敷ですね」
「そうなのよぉ。私も嫁ぐ前に初めて伺った時は、眼を丸くして二の足を踏んだわ。それなのに今では住んでるのよぉ。こう云うのも馴れるのね。いっけなぁい、車を裏に停めて来なきゃ。そのお話しも後でゆっくりねっ」
これで何度目になるのかな?
あたしは最後の荷物を手に敷居を跨いだわ。
丁度その時、師匠が玄関の小上がりにお屋敷の奥から来る所だった。
あたしと視線が合うと、少し口角を上げ微笑みながら運び込んだ荷物へ近づいて行く。
「ご苦労だったねぇ。助かったよ」
「助かっただなんて、そんなそんな。運んだだけですよ」
「それでもだよ。物のついでにもうちょっと良いかい? これを奥まで運びたいんだよ」
「勿論です。お手伝いさせて貰います」
「頼むよ。そこらの物を持ってついて来ておくれな」
「その前に一つだけ聞いても良いですか?」
「そりゃ良いけど。何が聴きたいんだい?」
「あちらの観音様の事なんですが、やっぱり婆ぁばが彫られた作品……と云うと観音様に失礼ですから彫刻された像なのですか?」
「あの『十一面観音菩薩像』の事かい? そうだよ。あたしが彫った観音様さ。どうだい。あたしもちょっとしたもんだろ?」
「ちょっとなんて騒ぎじゃないですっ。柔和なお顔や繊細な細工彫りまで芸術品だと思います。あたしは素人なんで詳細な技術や名称なんかは解らないですけど神々しいです」
「褒めてくれるのは有難いが、あたしの技術なんてまだまだなんだよ。あの十一面観音菩薩像はその戒めでも在るのさ。毎日のように眺めてりゃ彫った時は気付かなかった失敗も視えて来るもんさな。もう亡くなってしまったが、あたしの師匠はもっと凄かったからねぇ。少しでも高みに近づくには満足なんて無用の長物なのさ」
「素晴らしいお考えですね。これ程までの技術に満足しないで更にもっと高みを目指すなんて」
「学ぶ事を辞めたら衰退するだけなんだよ。だから一生涯掛けて学んで行くのさ。人間なんてそう云うもんだ。また機会が在れば話してやるよ。さてっ! 片付けてしまおうじゃないか」
「はい。お手伝いします。それと、勉強になりました。ありがとう御座います」
「あいよ。それじゃぁ手に持って奥についといで」
そう云うと師匠は、どこか照れたような昔を懐かしむような柔和な笑みを湛えてゆっくりと踵を返した。
奥と云うのは恐らくキッチン? 台所? だと思うわ。
呼び方なんてどうでも良いけどね。
あたしは師匠について進むと、料理店の厨房並みの広さを持つ明るいキッチンへと足を踏み入れたわ。
そして何となくだけど違和感みたいなものを感じたの。
大きなテーブルの上に一輪挿しが置いて在り、松葉の枝が挿してあるのよ。
お華じゃないのは何でなのだろ?
そんな少しの違和感と疑問を覚えつつもテーブルの上に手に持った物を置いて、玄関とキッチンを数回往復し全部運び込んだわ。
途中から彩華さんも加わってくれたので、意外にも早くあっけなく済んでしまったのだけどね。
師匠と彩華さんは引き続きテーブルに置かれた様々な物を冷蔵庫に入れたり、食器棚に戻したりと手早く片付けてる。
でもこればっかりは勝手の知らないあたしだとお邪魔になるからお手伝い出来ないわね。
手持ち無沙汰のあたしは改めてキッチンを視廻してみる事にしたの。
大型の冷蔵庫が二台鎮座してて迫力満点ね。
大きな食器棚には食器類が整然と収納されてる。
そして何となく感じていた違和感の正体が解ったわ。
三つ口のストーブ一体型オーブンが設置して在るの。
あのストーブテーブルって業務用の厨房機器よね?
今まで一般家庭では視た事なかったわ。
でも、炊飯器や電子レンジと云ったお馴染みの家電も当然在るからちょっと安心。
調理器具ではフライパンやお鍋の類は云うに及ばずだけど、ラーメン屋さんに在るような大きな寸胴鍋にはビックリしちゃったわ。
あと上皿式の計りも在るからお菓子も作るみたいね。
あたしってお菓子作りのレパートリーが少ないから教えて貰いたいなぁ。
もっとも持ってるのはオーブンレンジだから、出来る事にも限りが在るのだけどっ。
こんな風に不躾にもキョロキョロ見廻してしまう。
『ちょっと遠慮無さ過ぎたわね』と内心で反省しつつ自重しましょ。
広いキッチンにお料理屋さん並みの設備が整ってる。
本当にどんなお料理でも不自由なく作れそうだわ。
圧巻はやっぱり大きなオーブンよねぇ。
オーブンで焼いただけのトーストでも格別に美味しくなるのだから。
あとハンバーグステーキもストーブで焦げ目を良い感じに付けたら、焼いたフライパンごとオーブンでジックリ火を通すと、これも家庭料理の域を軽く超えちゃうし。
ふっくらとしてナイフを入れると溢れる肉汁。
考えただけでお腹が空いて来そうだわ。
オーブンだけじゃなくてストーブの方もツインバーナーだから凄い火力になるのよね。
一般家庭のコンロって云われてるストーブテーブルとは比べ物にならない火力になるから、チャーハンも素敵って感じのパラパラになって仕上がるわ。
中華のお料理って基本的に高火力で調理するの多いから、美味しい中華料理には高火力が必須なのよね。
でも、ついつい高火力の方に眼が行きがちだけど、トロ火でじっくりコトコトなんて事も出来る優れ物だから実に羨ましい限りね。
あたしもこんなキッチンが欲しくなってしまうわぁ。
だって毎日のお料理が愉しくなっちゃうじゃない。
あたしも将来的には素敵な旦那様と美味しいお料理のお店を持って、切り盛りするなんて夢よねっ!
憧れちゃう!
あら、いけない。妄想に捕われてたみたい。
「何か面白いもんでも在ったかい? 弥生」
「面白いって訳じゃ無いのですが、広々とした台所と業務用ストーブテーブルに圧倒されたと云うか」
「使った事は在るのかい?」
「はい。学生の頃のアルバイトで厨房仕事してましたので」
「そうかい。そうかい。そりゃぁ良い」
「あらっ。弥生さんったら即戦力じゃないの。頼りにしてるわね!」
「出来るだけお手伝いさせて貰いますので、お手柔らかにお願いします」
「こちらこそ。一緒にお料理出来るなんて愉しみだわ。宜しくね」
「さて。晩の献立はどうしよぉかねぇ」
「折角だから少し手の込んだお料理が良いんじゃない? お義母さん」
「張り切ってるじゃないか。そうだねぇ、弥生とも知り合った祝いみたいなもんだし。一丁、気合い入れてみるかい」
「そう来なくっちゃ! あっ。そうだわ。つくねなんてどうかしら? お野菜とか色々練り込んで、七輪で焼いた串焼きと餡を掛けてお椀の両方なんてちょっとしたご馳走になって良いんじゃない?」
「椀と焼き物、それに汁物もいけるねぇ。七輪出して焼くなら茄子の煮浸しもこさえるのも良いねぇ。それだと先付は酢の物か。揚げ物はタラの芽で良いかい?」
「紫音と綾音の事を考えて、揚げ物にタラの芽だけじゃ無くて、春菊と小柱のかき揚げを添えれば大丈夫だと思います」
「一品だと寂しくなるからねぇ。良いんじゃないかい。それに塩と濃い目の出汁で違う味も好みで上がって貰えば飽きないで食せるだろ」
「それならもう一つ足して、岩塩とお抹茶塩と天つゆで戴くのなんて良いわよね? あと……お造りは今朝お義母さんが仕入れてくれた旬のサヨリを捌くとして、栄養バランス的にサラダは必要だわ。千切りきゃべつに玉ねぎとピーマンを混ぜて軽く湯通した水菜を載せて……何か彩りが欲しいわね……無難なのはトマトだけど。ねぇ、お義母さん。サラダの彩り何か無いかしら?」
「パプリカなんてどうだい? 黄色と赤で華やかになるよ。所で下拵えした銀杏は在ったかい?」
「お椀の種に使うの? 少しなら在るわよ。パプリカなら綺麗ね。そうしましょ」
「凄い。あっと云う間に献立出来ちゃった。それも豪華なご馳走ばかり。まるで懐石御膳のようだわ。もしかして毎日こんな豪華な献立なんですか?」
「馬鹿云うんじゃないよ。毎晩こんなの拵えてたらこっちの身が持たないってなもんだっ。今日の晩は特別ってやつさ。豪華じゃないが心尽くしなんだよ。それに祝い膳ってのはこう云うもんさね」
「あたしの為に。ありがとう御座います。感動です。」
「なに云ってんだか。ふぅ。弥生、お前さんも手伝って貰うよ。扱き使ってやるから覚悟しときな」
「まぁまぁ、お義母さん。そんなに照れなくても良いのに。可愛らしいんだからっ。女はいつまでもどこかが可愛くないとねっ!」
「照れてなんか無いよ。親を揶揄ってる暇あるなら、ちゃっちゃと支度始めな」
「はぁ~い。あいあいさぁ~」
「全くぅ。いつからこんな嫁になっちまったんだか。往生するよ」
師匠と彩華さんって本当に仲が良いのね。
やっぱり心の深い所での信頼が揺るぎないのだって思うわ。
巷ではよく云われてる、嫁と姑の軋轢なんて無縁な気がするわね。
この二人の関係ってきっと『理想的な関係』なのだなって直感的にあたしにも感じられるし。
どこかお友達みたいに軽口を交えながら提案や意見を交換出来るのって、やっぱり憧れちゃうもの。
掛け合いのようにポンポンお料理を決めて献立に仕立ていく様は、まさに打てば響くって形容がぴったり。
きっと献立考える際にも食べる家族の顔を思い浮かべながら思案してるのよ。
さっきのお昼のお料理みたいに、みんなで愉しめるような食事って考え方が前提に在るのだと思うの。
紫音ちゃんと彩音ちゃんはまだ小さくて山菜は苦手みたいだから、代替案も出してバランスを取ったりしてね。
タラの芽ってちょっとクセの在る食材だし、大人でも苦手な人は居るのだから仕方ないわよねぇ。
逆に『この苦みが癖になるのよね』なんて云われたらホントびっくりだわ。
何か良いわね。不思議と安らいで行くのよ。
暖かい気持ちになるの。こう云う絆ってとても良いものね。
彩華さんの何気ない提案から次々と発想が拡がってくのは、経験から導かれるお料理や食材等を関連付けてるのね。
更にバランス良く偏らないようにメインとなるお料理と、それを引き立てるお料理を添えて献立を創るのって難しい事だと思うけど。
このお二人は平然と当たり前のように出来ちゃうのって凄いわぁ。
ここで今夜の献立を整理すると。
先付 酢の物 材料は未定
お椀 つくねの餡かけ
冷やし鉢 キャベツ他の千切りに水菜のサラダ
向付け サヨリのお造り
焼き物 つくねの串焼き
箸休め 焼き茄子の煮浸し
揚げ物 タラの芽と春菊と柱のかき揚げ
あと恐らくだけど、ご飯に香の物と汁椀は当然のように献立の他に用意するのだと思うわ。
これだけのご馳走で、お料理を配膳する前の宴席に和紙を使って達筆で書かれた『お献立』が小さめのバインダーに挟んで置いて在ったら、高級懐石料理店か高級旅館の晩御飯って感じよね。
それにしても普通のお家ご飯じゃまず作る事は無い献立だわ。
加えて品数だって和食懐石のお作法に則って過不足なく揃ってるし。
数えながら考えてたりしてたのかな?
それとも当然のように感覚で解かってるのかしら?
少なくとも偶然って事は無さそうだわ。
この中であたしがお手伝い出来そうなお料理は……
酢の物、サラダ、茄子の煮浸し、天麩羅とお魚を裁いて三枚卸しにする位かな?
つくねもお手伝い出来そうだけど、真っ先にメインに据えてバリエーションまで在るくらいだからレシピが秘伝そうで……
ご教授戴ければラッキーだし、是非お手伝いしてみたいのだけど。
お手伝い出来なかったら、こっそり覗いて頭の中に保存とか?
よく在る串焼きのつくねは、長ネギとかの薬味を練り込んでる位だからね。
それをお野菜を色々練り込むって、ちょっとイメージが浮かばないのよ。
どんなお料理になるのか興味津々だしお味の方も愉しみになっちゃうわ。
ヤル気スイッチもスタンバイ状態。血が滾って来るわねぇ!
ヤメテ。 タギッテ ユビデモ キッタラ チ ガ フキダシチャウ デショ。
さっきからずっと云おうと思ってたけど、五月蠅いわよ? アタシさん。
脳内の『クールなあたし』にぴしゃりと云ってやったわ。
そうよ云ってやったのよ。遂にっ!
これで暫くは影を潜めるに決まってるわ。ざまぁ! だわ。
ナニ イッチャッテルノ? アナタ ナニカ カンチガイ シテルン ジャナイ?
云い返されました……
まるで常駐アプリみたいね。いいわよ。精々悪態吐いてなさいな。
あたしがその気になればリーサルウェポンとしてアンスコって手が在るんだから!
エー ナニソレー コワーイ
全っ然怖がって無いわね……
もーイイです。あたしの負けでイイです。
「お義母さん。晩のご飯は何合炊いたら良いかしら?」
「これだけの品数の料理となら少なめで五合も炊けば良いんじゃないかい」
「そうね。もし物足らないようなら、お昼のおにぎり少し残ってるし。焼きおにぎりにアレンジしてお茶漬けにすれば、もしもの時でも大丈夫そうだわ」
「それじゃぁ、何からお手伝いしたら良いですか?」
「ちょっとお待ちよ、弥生。その前にお茶でも煎れて一服しようじゃないか」
「それが良いわ。すぐにお茶にするわね。私が支度するから、お義母さんは弥生さんを居間の方にお願いします」
「分かったよ。お茶を煎れるのは頼んだよ。さぁ、弥生こっちだ」
「はい。彩華さんお手数ですがお願いします」
とペコリと頭を下げて師匠に従ったわ。
師匠の仰ることも尤もよねぇ。
お家に着いてからずっと動いて居たのだから、お茶で一服してから仕切り直した方が効率だって良い筈だわ。
それに一旦落ち着いてから考えると、他に良いアイディアだって浮かぶ事も在るし。
お茶を飲みながらお喋りするのって愉しそうだわ。
色んなお話しをしてみたいけど、どんなお話しを聴かせて貰えるのか期待が膨らむわね。
師匠にも彩華さんにもいっぱいお話しさせて貰って、色々お勉強させて戴こうかしら。
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